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誰かの仕事をサポートするための4つのステップ




 

You can lead a horse to water but you can’t make himdrink.
馬を水の所まで連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない


 私はここ2年ほど海外の子会社の業務支援という形で出張することが多いが、毎回、彼らの現地メンバーに認められるまでにとても時間がかかるし、いまもドイツで苦労している。
 
仕事で誰かを「サポートをする」というのはよく耳にするけれど、本当の意味で本人の助けになるサポートを提供するのはとても難しい。

今日は誰かの仕事をサポートするというのはどういうことかを改めて考えてみたい。
 
前提として、以下のような点があり、noteの中で参考になる人はかなり限られてくるかもしれないがとにかくいったん書いてみる。ご興味ある方は少し長いけれどお付き合いいただけると有り難い。
 

・製造業における業務支援(生産や調達や物流、サプライチェーンマネジメント)
・海外の関係会社をサポートする。
・サポートの期間が比較的長期に渡っている(数週間~数か月)。

誰かの仕事をサポートを行う上で4つのステップが必要だと考えている。

誰かの仕事をサポートするための4ステップ
0.支援を受ける人に顔と名前を覚えてもらう。
1.支援を受ける人に「サポートが必要な状況」と納得してもらう。
2.支援を受ける人にまず「コイツは役に立つ」と感じてもらう。
3.支援を受ける人が最終的には自分だけで回るようにする。

以下1つずつ順を追って書いていきたい。
 
0.サポートを受ける人に顔と名前を覚えてもらう。
とにかく「なんだかよくわからない奴」から「○○さん」と認識してもらうところからすべてが始まる。
 
そのためには基本動作は、挨拶する、握手する、世間話をする、一緒に食事をとる、冗談を言う、など。
 
名前を覚えてもらうには、まず自分が相手の名前を覚えることが必要だが、私は日本人でも名前を覚えるのが得意でないので毎度苦戦する。
(インド人やドイツ人となると、名前の発音の仕方から分からないことがある。)
 
そんな私が心がけているのは、挨拶するときに名前を付けること。
「こんにちは」ではなく、あえて「○○さん、こんにちは」とする。
もし思い出せなかったら後でこそっと確認する。
これによってかなり定着率が上がる。
 
あと、プロジェクトメンバーの写真付きの名簿を作成する場合もある。
日本人が外国人の名前を憶えづらいように、相手も日本人の名前は覚えづらいので、これは現地メンバーにも喜ばれる。
 
会話するときに意識するのは、共通点を探すこと。
「私も○○なんだよ」と言えることを一つでも見つけられると大きい。
例えば「私も犬がめっちゃ好きだよ」とか「ワールドカップ見た?」、「月曜日は憂鬱だね...」など内容はなんでもよいので、とにかく会話の糸口を見つけるために話しかける。
 
あとは、思ったことは声や表情、手の動きを使って表に出すこと。
私たち日本人はハイコンテクストな社会*で育ってきたことを自覚しないといけない。

自分の考えていることを外に出さずに、相手が勝手に「察してくれる」ことはまず無い。黙っていると何もわかってもらえない。
 
「こんなこと言わなくてもわかってだろ」という些細なことまで、しつこく言葉にする癖をつけなければならない。
  
1.サポートを受ける人に「サポートが必要な状況」と納得してもらう。
外国に限らず、本人が手助けが必要ということを認めたがらないことが多い。
私自身にも経験があるが、「仕事が回っていない=自分の実力不足」と思われることを恐れるからだ。
 
だから、出来る限り相手のプライドを傷つけないことを念頭に置きたい。
 
説明する際にはその人の「能力」ではなく、置かれている「状況」を理由に手助けを申し出るのが良いと思う。
 
まず「一人でこれだけの量の仕事をやっているなんて信じられない。業務負荷を考えてサポートに来た。」と敬意とともに伝えるべきだ。
 
直接の業務をサポートする前に、状況把握から手をつけるのが良いだろう。業務負荷がパンパンで回っていない本人は、周りの状況を見る余裕がない場合が多いように思う。
 
そのため、プロジェクトのスケジュールや損益、仕掛かっているタスクの数といった周囲の情報を収集し、数値として本人に見えるようにすることで、助けになるし、かつサポートが必要な状況に納得を得やすくなる。
 
決して「このままだとあなたがボトルネックとなってプロジェクトが遅れてしまう」といった言い方は避けるべきだ。
 
2.サポートを受ける人にまず「コイツは役に立つ」と感じてもらう。
支援を受ける側からすれば、いきなりやってきて「はたしてコイツに何が出来るのか?」、「本当に役に立つのか」という思いがあるだろう。

だから、支援に入ることが決まったら、とにかく目に見える成果が欲しい。成果を出すことでその後のアクションが取りやすくなるからだ。
 
業務支援という形であれば、いきなり業務プロセスの改善や仕組み作りといったでっかいテーマに取り組もうとしてはいけない。
 
「何か先週からコイツいるけど、一体何しに来てるの?」と思われてしまう。いきなり質問や口出しばかりすると最悪だ。

現状把握のためにはヒアリングは必須だが、質問ばかりだと、サポート対象者の仕事が減るどころか増やしてしまうことになる。
 
だから、まず最初にやるべきことは、手を動かすこと。
サポート対象者のタスクのなかで最も重要度が低く簡単なところを引き受ける。例えば、コピーを取る、議事メモを取る、会議の出席者の調整、簡単な資料の作成など。
 
そうすることで、本人の仕事の量が目に見えて減るので、「コイツがいても損はない」と感じてもらえる。役に立つと思ってもらえてはじめて私の質問やアドバイスに聞く耳を持ってもらえる。
 
3.サポートを受ける人が最終的には自分だけで回るようにする。
サポートという仕事はあくまで「サポート」なので、ずっと続けることわけにはいかない。だから、サポートをはじめた瞬間から「いつ・どうやって手を放すか」を考えておかなければならない。
 

何らかの業務をサポートする場合、いま目の前にある仕事を引き受けて「ああー何とかなったね」で終わってはいけない。

目の前のプロジェクトをなんとか回るようにしながらも、何が問題かなのか、どうすれば良くなるかを考えて仕事をする必要がある。
 
では、どうすれば問題点や改善策を見つけられるのか。
 
それは「自分の中でいくつかの問いを持っておくこと」だと思う。いま思いついたことを並べてみる。

問題点や改善策を見つけるための問い
・そのプロセス(例えば、複数人による承認や決裁)は本当に必要なのか?省略できないのか?
・ITシステムによって自動化できないか?定型フォーマット化できないか?
・業務分担が間違っていないか(エンジニアに不要な付帯業務をやらせ過ぎてないか?)
・部門間の業務連携・所掌は適切か?(これって事前に連絡しておけば済んだ話じゃないか?)
・コミュニケーションのルートに問題がないか(重要な情報が適切な人間に伝わっていない?)
・会議体の数、メンバーは適切か(そんなに頻繁に必要?出席者多すぎないか?)
・会議資料の妥当性(判断に必要な情報ってこんなにいるの?本当に必要な情報は何?)
・これって社内でやるべきなの?アウトソースしたほうが良くない?(反対に、これってちょっと丸投げし過ぎじゃない?)
・インセンティブはなにか?(なぜ仕組みはあるのに実行されないのか?、インセンティブを理解できてないのではないか?)
・必要なスキル、人材は何か(この業務を行うのにはそもそもスキルがマッチしていない?)

仕事が出来る人の条件はいろいろとあると思うが、「仕事を俯瞰して(メタに)捉えることが出来る」は絶対に外せないと思う。そして、メタに(抽象化して)とらえるための手段が「適切な問いを持つこと」だと最近は思うようになった。
 
今目の前にある仕事をある概念で切り取って眺めてみる。そうすることで、とっかかりがつかめてくる。
 
例えば、自分の仕事を「プロセス」と捉えることで、自分の仕事がある流れの一部として見えるようになる。

上流にあるプロセスは何か、下流にあるプロセスあ何か、そして自分のプロセスの役割(=付加価値)は何か?といった問いが生まれる。
 
「プロセス」と捉えることで、インプットは何か、アウトプットは何かと考えることが出来る。そうすると、うまくプロセスが進まないのは、どこかのプロセスでインプットかアウトプットに足りないものがあるのではないか、
といった問いが生まれてくるのだ。

ただ、最後まで忘れてはいけないのは、私たちが提供するのはサポートであって、実行していくのはサポートを受ける人なのだ。
 
冒頭にも引用したように、「馬を水の所まで連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」。

この線引きはとても難しい。
この辺りは今も模索中なので、また改めて考えを整理したい。

 ということで、ここまでの考えを改めてまとめる。

 誰かの仕事をサポートするための4ステップ
0.支援を受ける人に顔と名前を覚えてもらう。
1.支援を受ける人に「サポートが必要な状況」と納得してもらう。
2.支援を受ける人にまず「コイツは役に立つ」と感じてもらう。
3.支援を受ける人が最終的には自分だけで回るようにする。

思いつくままに書いてみたが、海外での仕事の仕方や業務支援、業務プロセスの改善といったテーマが自分の頭の中で混ぜこぜで、読む人にはかなり分かりづらい内容になってしまった気がしてならない。

また定期的に考えをブラッシュアップしていきたいと思うけれど、今日はこのへんで。


*ハイコンテクストな社会
アメリカの文化人類学者であるエドワード.T.ホール(1914-2009)が唱えた分類法。ハイコンテクストな社会とは、価値観や文化、歴史や知識が共有されており、言語でのコミュニケーションの度合いが相対的に低い文化圏を指す。「言わぬが花」の日本はハイコンテクスト社会の代表格。
それに対して、欧米(特にドイツ)はローコンテクスト、つまり考えを言語で表明する度合いが高い社会とされている。

興味のある方はぜひエリン・メイヤーの『異文化理解力』をおススメします。


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