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2023年7月の記事一覧

『心と意識と:幻覚剤は役に立つのか──第1章 LSD』感想

『心と意識と:幻覚剤は役に立つのか──第1章 LSD』感想

アンソニー・ボーディン『キッチン・コンフィデンシャル』を読み終え、彼のWikipediaに目を通してみたところ、Netflix番組である本作に出演しているという記述が。料理番組が観たいのに……とやや不満を抱きつつも、せっかくなので視聴した。

1秒も出て来なかった。
何?ガセ?それとも見逃した?数分間意識失ってた?あるいはベーシックプランだから?貧民に見せるボーディンはねェってこと?(次長課長大好

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レオス・カラックス『アネット』感想

レオス・カラックス『アネット』感想

恐らく、現役で活躍している映画監督の中だったら、レオス・カラックスが一番好きだ(以前、その地位を占めていたのはゴダールだった。映画史に深く、そして美しく名前を刻んだ伝説的人物といえる彼が、昨年まで生きていた事実に驚嘆するものの、この喪失感は一生拭い去れないだろう。一方で、彼の死に方が安楽死だったというのは、あまりにもジャン=リュック・ゴダール監督らしい)。彼の作品はすべて観たし、ソフトも持っている

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町田康『猫のあしあと』感想

町田康『猫のあしあと』感想

※2022年10月執筆。
※暗い話題多めです。

町田康がまだ熱海に引っ越す前の、六本木時代の話。作中、生死の境を彷徨った末、一命を取り留めたエルという仔猫が登場した一方で(昨日読んだ『猫のよびごえ』ではすっかり元気な成猫となっていた)、2匹の猫が亡くなってしまった。
猫はとても賢く、それはもう人間なんぞ足元にも及ばないくらいなのだが、病気に罹った時の対処法や病院での診察や治療のこと、食事の管理等

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町田康『猫のよびごえ』感想

町田康『猫のよびごえ』感想

※2022年10月執筆。

久しぶりに丸山ゴンザレス周り以外の人の本を読んだ。町田康なら小説も読めるかも知れない。が、無理して苦しむ必要も無いのでこの後もエッセイを読もうかと思う。
猫のエッセイは能町みね子氏以来で、かつその前に読んだのは町田康の『猫にかまけて』だった。猫は好きだが、積極的に他人の猫のことを知ろうとしていない。SNSやYouTube等に於ける殊更に贔屓している猫アカウントなども存在

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丸山ゴンザレス『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』感想

丸山ゴンザレス『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』感想

※2022年10月執筆。

メキシコの麻薬戦争に潜入取材したら麻薬カルテルからめちゃくちゃ怖い脅しをされた話は、『人怖』で読んだのだったか。そこに至るまでの流れが、写真も交えて詳らかに記されているので、既知の話だが初見のように慄然とした。生きて帰って本当に来られてよかったね……。
警察が麻薬カルテルを放置している為、地元住民が武装して自警団を結成するも、カルテルのメンバー(現役含む)が加入しており

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草下シンヤ『怒られの作法──日本一トラブルに巻き込まれる編集者の人間関係術』感想

草下シンヤ『怒られの作法──日本一トラブルに巻き込まれる編集者の人間関係術』感想

私が草下シンヤさんの存在を知ったのは、丸山ゴンザレスさん経由なので、たった数年前のことである。彼は作家や漫画原作者として活躍している一方、彩図社という出版社で編集長を務めてもいる。
ここ最近投稿している読書感想文は、彩図社から出版されたものや、『裏社会ジャーニー』(草下さんがプロデュースを務めるYouTubeチャンネル)や氏のTwitterで取り上げられた作品がほとんどで、要するに彼のアンテナを張

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丸山ゴンザレス『アジア「罰当たり」旅行 改訂版』感想

丸山ゴンザレス『アジア「罰当たり」旅行 改訂版』感想

※2022年10月執筆。

そういえば昨日の昼間にクレイジージャーニーの再放送が流れていたそうで…電車の中で丸山ゴンザレスさんのInstagramのストーリー見て知ったので、視聴出来ず癇癪起こしそうになった。
とはいえ過ぎたことは措くとして、今月から同番組が復活するとの由、長らく待っていたので本当に嬉しい。すっかりテレビは観なくなったが、久し振りにリアルタイムで観たい番組が出来て感謝。ヤラセでもな

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小児性愛に関するメモ 斉藤章佳『「小児性愛」という病──それは、愛ではない』に照らして

小児性愛に関するメモ 斉藤章佳『「小児性愛」という病──それは、愛ではない』に照らして

※2022年5月執筆。

私個人にとって、数ある性犯罪の中でも、小児性暴力対する関心は極めて大きなウェイトを占めている。虐待含め、小児・幼児を相手にした犯罪にまつわるニュースは聞いているこっちが死にたくなるし、どれも未遂で終わったとはいえ、自分も幼少期に性被害を受けそうになった事が何度かある。
先月、丸山ゴンザレス氏の裏社会ジャーニーというYouTubeチャンネルに於いて、国民民主党の平塚正幸氏が

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國友公司『ルポ路上生活』感想

國友公司『ルポ路上生活』感想

※2022年9月執筆。

約半年前、裏社会ジャーニーで國友氏が宣伝も兼ねて出演し、路上生活について語っていたのを観て以来気になっていた作品だった。ようやく読めた。こちらも西成と同様、著者が実際にホームレス生活を行った様子を記したルポ作品である。

こちらがその動画。他にも2本あったので、路上生活の実態が気になる方には、ぜひご視聴頂きたい。

以前読んだ西成のルポでは、生活保護受給者に対し否定的な意

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真樹哲也『ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団』感想

真樹哲也『ルポ外国人マフィア 勃興する新たな犯罪集団』感想

※2022年9月執筆。

前回読んだ、草下シンヤ氏と懲役太郎氏の共著で言及されていた本で、外国人マフィアのこと知りたいな〜と思ったので読んでみた。が、外国人マフィアより、著者のヤバさのほうが圧倒的に気になってしまった。
外国人グループは、警戒心が強い集団と分かっていながら、大して策を練らずに突撃取材をかましているし、やっと応じてくれた相手に対しても「いきなりそれ訊く?」という質問(確かに読者が一番

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懲役太郎・草下シンヤ『常識として知っておきたい裏社会』感想

懲役太郎・草下シンヤ『常識として知っておきたい裏社会』感想

※2022年9月執筆。

本著は、裏社会の特にカネ関連、ヤクザのシノギについてや、ここ2年程話題となっている闇バイトに関する知識を幅広く身につけられる。草下シンヤ氏と、元ヤクザの前科持ちVtuver・懲役太郎氏との会話形式で書かれているため、分かり易くて一瞬で読み終わってしまった。
懲役太郎氏は、実は裏社会ジャーニーのコラボ動画でしかちゃんと観た事が無いが、いつも腹から声を出して喋っている印象があ

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丸山ゴンザレス『世界の危険思想〜悪いやつらの頭の中〜』感想

丸山ゴンザレス『世界の危険思想〜悪いやつらの頭の中〜』感想

※2022年9月執筆。

本著は「はじめに」にある通り、何か具体的な政治思想や宗教思想の過激さといったものを取り上げるのでは無い。世界各国の「悪いやつら」──殺人犯、殺し屋、強盗、武器商人、マフィア、ギャング、麻薬の売人、薬物依存者、集団暴行する人、悪徳警察官…といった人々が何故そのような行為をするに至ったか、というのを、これまで命懸けで取材してきた著者が実体験を追想しつつ解明していこうと試みる内

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小神野真弘『SLUM 世界のスラム街探訪』感想

小神野真弘『SLUM 世界のスラム街探訪』感想

※2022年9月執筆。

この著者も、以前裏社会ジャーニーにも出演しており名前を知った。
タイトルのまま、世界中のスラム街を旅した写真集で、写真のほとんどに著者の(ややナイーブなきらいのある)短い文章が添えられている。写真はどれもすごく良かった。撮るのうまいなあ、と思ったら東京藝大卒の人だった。

ペルーのスラムで、かつて強盗で生計を立てていた青年にうっかり(過ぎる)著者が将来の夢を尋ねてしまった

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國友公司『ルポ西成-七十八日間ドヤ街生活-』感想

國友公司『ルポ西成-七十八日間ドヤ街生活-』感想

※2022年9月執筆。

國友公司さんは、裏社会ジャーニーで知ったライターの一人。西成区あいりん地区については中学生の時に知った。当時(今もだが)新宿ゲバルトというビジュアル系ユニットが好きで、彼らの曲の一つに『ドヤ街、味噌、女子。』というタイトルがあり、この"ドヤ街"って何だ?と調べたのがきっかけである。その頃は、あいりん地区の写真を撮ったら殺されるとか、女は一人で歩いてはいけないとか都市伝説め

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