atelier daidye(d) -アトリエダイダイ-

岡山県でアトリエショップを営んでます。

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マガジン

記事一覧

#6 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈持病〉 あなたの風邪はどこから? そう綾瀬はるかに聞かれたら、きっとヘラヘラしながら「あっ、あの、僕身体強いんで、その、風邪とかひかないんですよ」と答えるだろ…

#5 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈悪口〉 一年ほど前から年上のお姉さんとよく立ち話をするようになった。 絹豆腐みたいに白い肌と手入れの行き届いた髪。 いつ見ても素材と仕立ての良いシャツを着てい…

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真実の中に嘘を

「愛してるよゲームしましょうよ!」 「嫌だ」 「なんでですか!楽しいからやりましょうよ」 「やらないよ。一人でやればいい。最近のゲームは一人でも十分たのし」 「…

はじめから

夕日刺さる部屋。 二人揃ってシーツから滑り抜けた。 ユナは何も言わず下着、ジーンズ、Tシャツの順に着て、テーブルの上に置いていた飲みかけの缶ビールを一気に飲み干し…

止まらない男 止まる生地

「なに、話って?」 「ごめん。急に呼び出して。」 「いいよ全然。ってか、ここどこだよ。」 「ドラッグちゃんの住んでるマンションの前。ほらあそこ、3階の端。電気つ…

DAC PANTS〜本気で加工したこんなジーンズは〜

少しだけ暖かさを含んだ、だけどまだ冷たい風がカーテンを揺らし、オレンジの陽射しが並べられた机に反射している。 放課後の校庭から聞こえる野球部の声が、二人きりの教…

#4 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈やってみなきゃ〉 本を読むのが好きだ。 その中でも純文学が好きだ(これを言うとだいたいイキっていると思われるからあまり言いたくない) さらにその中でも1800年代後…

#3 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈丁度いい例えとは〉 会社の各階にある会議室では昼休憩の時間になると各階の女性陣が集まって昼飯を食べながら談笑する小さな女子会が開催される。 男たちの立ち入りは…

#2 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈ウルトラドラマチック〉 最近のドラマは矢印が何方向にも伸びている不倫や痴情のもつれといったドロドロ系、伏線を張り巡らしすぎて収拾のつかないサスペンス系といった…

#1 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈口癖〉 服を作っているからなのか、物事の判断基準が 格好良いか格好悪いかになってきている。 それは服やモノに限らず、景色や音楽、振る舞いや佇まい、文章や言葉に…

胸の高鳴りは聞こえない

胸の高鳴りには素直に従いたい。 だけどそれは大人になるにつれ難しくなる。 後のことを考えてみたり、楽な方を選んでみたり、慣れや計算が絡んでは、その高鳴りを深く鎮め…

運とリスクをとれ

お年寄りに、若い時の自分に何かを伝えられるなら何を伝えますか? と質問すると、誰に聞いても大抵似たような答えが返ってくるらしい。 僕は何故か分からないが何処に住…

怪物のコーデュロイセットアップ

「今回のターゲットは橙広告だ。内容次第では多少色もつけよう。U、頼んだぞ。」 「えぇ、分かったわ、ボス。私、失敗しないので。」 ———・・・ 大手広告代理店。 …

双鷲

鷲は生涯を一羽の相手と添い遂げる。 相手への貞節や愛の象徴として語られることもあり、一夫一婦主義を貫く珍しい生き物である。 街から随分と離れた高台に暮らす、とて…

私に彩をくれた人

美大は半年も経たずに中退した。 「絵ってさ、教えてもらうものじゃないでしょ。わたしは好きなように描く。」 格好つけた台詞を吐いたが、要は周りの才能から逃げただけ…

#6 左ききの野良犬と逆さまの虹

#6 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈持病〉

あなたの風邪はどこから?

そう綾瀬はるかに聞かれたら、きっとヘラヘラしながら「あっ、あの、僕身体強いんで、その、風邪とかひかないんですよ」と答えるだろう。

通年うっすら疲れている自覚はある。野菜は食べないし、魚なんて月に一回食べれば良い方だ。セブンイレブンとローソンが僕の台所だと胸を張って言える。
こんな不摂生な生活でも風邪をひいたり体調を崩さないのは不思議だ。

では、溜まった疲

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#5 左ききの野良犬と逆さまの虹

#5 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈悪口〉

一年ほど前から年上のお姉さんとよく立ち話をするようになった。

絹豆腐みたいに白い肌と手入れの行き届いた髪。
いつ見ても素材と仕立ての良いシャツを着ていて、とても綺麗な人だと思った。

その人は少し不気味なくらい生活感を感じない人で、僕の直感が「独身だ!」と叫んだ。

となれば先ずは挨拶からはじめようじゃないか。
猫より猫背な背をピンと伸ばして、いつもの低い声をお母さんが電話をとる時み

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SUMMER SALE

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2024.7.18 - 2024.7.31

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真実の中に嘘を

真実の中に嘘を

「愛してるよゲームしましょうよ!」

「嫌だ」

「なんでですか!楽しいからやりましょうよ」

「やらないよ。一人でやればいい。最近のゲームは一人でも十分たのし」

「一人で出来ないゲームだから誘ってるんです!愛してるよって言われて照れたら負けのゲームです。試しにあそこにいるコウキさんにやってみるんで見ててください!」

「コウキはああ見えて硬派だから照れないだろ…」

「あの…コウキさん…愛して

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はじめから

はじめから

夕日刺さる部屋。
二人揃ってシーツから滑り抜けた。

ユナは何も言わず下着、ジーンズ、Tシャツの順に着て、テーブルの上に置いていた飲みかけの缶ビールを一気に飲み干した。

「どうして昨日のビールって不味いんだろうね」

「冷えてないからだろ」

「じゃあ、冷えたビールでも飲みに行きますか。早く着替えて」

僕は急かされながら下着、ジーンズ、Tシャツの順に着替えた。

町中華のテーブルの中央には、二

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止まらない男 止まる生地

止まらない男 止まる生地

「なに、話って?」

「ごめん。急に呼び出して。」

「いいよ全然。ってか、ここどこだよ。」

「ドラッグちゃんの住んでるマンションの前。ほらあそこ、3階の端。電気ついてる部屋。」

「は?ドラッグちゃん?」

「前に言ったことあるだろ。好きな人が出来たって。その子。」

「あぁ言ってたな。で、ドラッグちゃんってなに?」

「あだ名だよ、あだ名。」

「そのくらい分かるわ。なにそのあだ名?ってこと

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DAC PANTS〜本気で加工したこんなジーンズは〜

DAC PANTS〜本気で加工したこんなジーンズは〜

少しだけ暖かさを含んだ、だけどまだ冷たい風がカーテンを揺らし、オレンジの陽射しが並べられた机に反射している。
放課後の校庭から聞こえる野球部の声が、二人きりの教室に僅かに届く。

「現実もゲームの世界みたいだったらいいのにね。」

「どうして?」

「次のクラス替えでもし私と田中くんが別々のクラスになったらさ、コンティニューして同じクラスになるまで何回でもやり直せるのに。」

「吉田さん…」

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#4 左ききの野良犬と逆さまの虹

#4 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈やってみなきゃ〉

本を読むのが好きだ。
その中でも純文学が好きだ(これを言うとだいたいイキっていると思われるからあまり言いたくない)
さらにその中でも1800年代後期から1900年代中期の作品が好きだ(これを言うと、あぁそう。と言われ会話が終わるから言いたくない)

文豪たちを取材などで身近から見ていた記者の書いた本を読むと、それぞれの私生活や教科書やテレビでは教えてくれない一面が見えてとても

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#3 左ききの野良犬と逆さまの虹

#3 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈丁度いい例えとは〉

会社の各階にある会議室では昼休憩の時間になると各階の女性陣が集まって昼飯を食べながら談笑する小さな女子会が開催される。
男たちの立ち入りは暗黙の了解的に禁止されているのだが、13時からの会議の準備があったので思いつく最大限優しいノックをしてドアを開けた(優しすぎてノックの音は聞こえていなかったのかもしれない)

自分たちだけの空間に異物が混入した瞬間は決まって場が静まるもの

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#2 左ききの野良犬と逆さまの虹

#2 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈ウルトラドラマチック〉

最近のドラマは矢印が何方向にも伸びている不倫や痴情のもつれといったドロドロ系、伏線を張り巡らしすぎて収拾のつかないサスペンス系といったヘビー級があまりにも多くて観ていて疲れる。
という話を聞いた。
作り込むのは大いに結構だが、日々仕事に追われている我々としてはもう少しライトなドラマをリラックスして観たい。
イケパラとかブザービートとか(今の若い子は知らないかも)ライトで

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#1 左ききの野良犬と逆さまの虹

#1 左ききの野良犬と逆さまの虹

〈口癖〉

服を作っているからなのか、物事の判断基準が
格好良いか格好悪いかになってきている。

それは服やモノに限らず、景色や音楽、振る舞いや佇まい、文章や言葉にも当てはまり、それらが僕の格好良いの琴線に触れたとき、「かっけぇ」と口からこぼれる。

この世界には格好良いが溢れていて、僕の口からはたくさんの「かっけぇ」がこぼれてしまう。口癖とまでは言わないが、言っているのを聞いた人は多いと思う。

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胸の高鳴りは聞こえない

胸の高鳴りは聞こえない

胸の高鳴りには素直に従いたい。
だけどそれは大人になるにつれ難しくなる。
後のことを考えてみたり、楽な方を選んでみたり、慣れや計算が絡んでは、その高鳴りを深く鎮めるのだ。

「台所でスパゲッティをゆでているときに、電話がかかってきた」
ねじまき鳥クロニクルの始まりの一文を読んだ時はページを捲る手が止まらなかった。
初めてバスケットボールを持った時は辺りが真っ暗になるまでリングにボールを放った。

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運とリスクをとれ

運とリスクをとれ

お年寄りに、若い時の自分に何かを伝えられるなら何を伝えますか?
と質問すると、誰に聞いても大抵似たような答えが返ってくるらしい。

僕は何故か分からないが何処に住んでも近所のお爺ちゃんお婆ちゃんに異様に気に入られるという特殊能力を持っている。
ビックリするくらい早朝から開催されている近所の井戸端会議で同じ質問をしてもやはり似たような答えが返ってきた。

幾つか納得させられる答えがあったが、一番いい

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怪物のコーデュロイセットアップ

怪物のコーデュロイセットアップ

「今回のターゲットは橙広告だ。内容次第では多少色もつけよう。U、頼んだぞ。」

「えぇ、分かったわ、ボス。私、失敗しないので。」

———・・・

大手広告代理店。

テレビCM、広告、近年ではウェブCMなど企業(クライアント)の広告活動を請け負う会社だ。
大手企業の広告活動を請け負う、それ即ちメディアを牛耳ると同意義である。
スポンサーが無ければテレビは作れない。
ウェブCMが無ければYouTu

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双鷲

双鷲

鷲は生涯を一羽の相手と添い遂げる。

相手への貞節や愛の象徴として語られることもあり、一夫一婦主義を貫く珍しい生き物である。

街から随分と離れた高台に暮らす、とても貧しいが仲睦まじい若い夫婦がいた。

同じ誕生日の二人は、毎年欠かすことなくプレゼントを送り合っている。

今年もその日が近づいていた。

「なぁネリー、もっと安くしてくれよ。」

「これ以上は無理よ。いくらソニアへのプレゼントだから

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私に彩をくれた人

私に彩をくれた人

美大は半年も経たずに中退した。

「絵ってさ、教えてもらうものじゃないでしょ。わたしは好きなように描く。」

格好つけた台詞を吐いたが、要は周りの才能から逃げただけだ。

物心ついた時から絵は得意だった。
学校や町のコンクールで賞を貰ったことは何度もあったし、美術協会主催のイラスト展では著名な画家に表彰されたこともある。

全て高校生までの話だ。

高校一年の冬から徐々に色使いの感覚が鈍くなった。

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