松村大地

切り絵作家。様々な美術の地平を領域横断的に。 関西を中心に、切り絵作家、展示会の企画…

松村大地

切り絵作家。様々な美術の地平を領域横断的に。 関西を中心に、切り絵作家、展示会の企画運営・デザイン、美術に関する文章の執筆、建築学生をしています。

マガジン

  • 切り絵を考える 近現代日本の切り絵の調査/研究

    ①作家としての作品や制作における考察と②国内の切り絵シーンに関する考察やジャーナルを書いています。

記事一覧

自作《それは祈ることに似て》を巡って。

この記事について。 今年の初夏,国際切り絵コンクールにてスチューデントグランプリを受賞した最新作《それは祈ることに似て》に関して。思索と自己解題と考えていること…

松村大地
1年前
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【papercut review(北野雪経個展)】影に光を与えるとする。

 papercut(あるいは切り絵)を思考するために、そしてその思考を広げ続けるために、アーカイブと若干の批評性を有するテクストを目標にレビューを書いています。本記事では…

松村大地
1年前
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【papercut reviews(谷澤紗和子個展】青の対比/転換と弱さについて 

papercut(あるいは切り絵)を思考するために、そしてその思考を広げ続けるために、アーカイブと若干の批評性を有するテクストを目標にレビューを書いています。 個展に加え…

松村大地
1年前
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2021年の重要な国内の切り絵実践

 コロナ禍が日常となった2021年でしたが,特筆すべきだと思った切り絵(あるいはPaper-Cutting)の実践について作品評を書こうと思います。 ※切り絵という語は,少し意識…

松村大地
2年前
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切り絵展レビュー「日本の切り絵7人のミューズ」展 現代の切り絵の地図を考えてみる。

はじめに。 本稿は、2021年9月に大丸ミュージアム京都で開催された「日本の切り絵7人のミューズ」展のレビューである。先に明言しておきたいのだが、これは感想文ではない…

松村大地
2年前
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ピピロッティ・リスト展と久保田成子展 その② くぼた編

展覧会レビュー/レポート、そして思考の走り書き。 一応、先日のピピロッティの記事の続きという体で書いていこうと思っています。→ピピ編はこちら 久保田成子展 Viva …

松村大地
2年前
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ピピロッティ・リスト展と久保田成子展 その① ピピ編

今年の初夏の関西で開催された2つの現代美術作家の回顧展に関して簡単なレビューをしていきたい。前者は京都国立近代美術館、後者は国立国際美術館と、どちらも国立館での…

松村大地
2年前
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クレア・ビショップ藝大公開講義の要約もどき

2021年6月5日に東京藝大国際芸術創造研究科が主催する美術史家/批評家クレア・ビショップの公開講義がオンラインで行われて聴講していました。非常に興味深い内容だったの…

松村大地
2年前
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第3回切り博のレポート

【はじめに】どうも、切り絵界若手のホープとも呼び声も高い松村です。2か月前に二十歳になりました。そろそろSAMURAI最年少枠を脱した模様です。そういえば昨年は、切り博…

松村大地
3年前
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脆さを抱えて走ること。(切り絵について)

【序】制作や表現のなかで考えていることを出し惜しみすることなく、そして「考え抜いたこと」を他人にいとも簡単に知らせてしまうことに臆せず、文章として公開していくこ…

松村大地
3年前
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第2回切り博 展覧会レビュー編

2020/8/8~8/23に大阪市内で開催される第2回切り絵博覧会について、既に別ページで展覧会レポート及び自作解説を執筆しました。 このページでは、それ以外に特筆したい…

松村大地
3年前
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≪Spiral≫自作解説

タイトル ≪Spiral≫ 2020年制作、素材:楮・雁皮混合紙(手漉き、6匁)、本藍染め阿波和紙 コンセプト文 渦潮や台風、竜巻、銀河といった自然界のなかでもかなり速度を…

松村大地
3年前
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第2回切り博 展覧会レポート編

2020/8/8~23に大阪市内で開催される、第2回切り絵博覧会(以下、切り博2020、展示情報はページの最後に記載。)について、今般の世情により、鑑賞者のみならず遠方の出展…

松村大地
3年前
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三篇の紙集展オンライン会場B

三篇の紙集 展 展示会情報  ・出展者 有澤悠河/松村大地/峯尾彰太朗 ・主催/企画/キュレーション 松村大地 ・会期 2020年3月18日~3月23日(終了) ・会場 MIRA…

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松村大地
4年前
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note開設

初めまして、松村大地と申します。切り絵作家、また2年ほど前からキュレーター(展示会の企画者)としても活動しております。 突然ですが、こういう切り絵作ってます⇓ SNS…

松村大地
4年前
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自作《それは祈ることに似て》を巡って。

自作《それは祈ることに似て》を巡って。

この記事について。

今年の初夏,国際切り絵コンクールにてスチューデントグランプリを受賞した最新作《それは祈ることに似て》に関して。思索と自己解題と考えていること。

〇自己宣伝〇

 9/2~9/13の会期で,大阪・中崎町のアトリエ三月のFLAG2022にて,小作品ではありますが,《それは祈ることに似てⅢ》を展示中です。阪急大阪梅田駅近くにお越しの際はぜひとも!!
 また11/27まで,山梨にあ

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【papercut review(北野雪経個展)】影に光を与えるとする。

【papercut review(北野雪経個展)】影に光を与えるとする。

 papercut(あるいは切り絵)を思考するために、そしてその思考を広げ続けるために、アーカイブと若干の批評性を有するテクストを目標にレビューを書いています。本記事では2022年4月に開催された造形美術家/切り絵作家/演出家である北野雪経の個展について取り上げます。

 レビューの体裁を取りつつも,半分くらいこの展示を通して思考した,切り絵-ペーパーカットと影についての試論としての記述でもあるこ

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【papercut reviews(谷澤紗和子個展】青の対比/転換と弱さについて 

【papercut reviews(谷澤紗和子個展】青の対比/転換と弱さについて 

papercut(あるいは切り絵)を思考するために、そしてその思考を広げ続けるために、アーカイブと若干の批評性を有するテクストを目標にレビューを書いています。
個展に加え,同時期に開催されたVOCA展に出展された作品にも言及しています。

reviewはいけい、ちえこさま

 谷澤紗和子個展「情調本位な甘い気分」では,詩人で彫刻家の高村光太郎の妻としても知られる高村智恵子の紙絵と,晩年に制作された

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2021年の重要な国内の切り絵実践

 コロナ禍が日常となった2021年でしたが,特筆すべきだと思った切り絵(あるいはPaper-Cutting)の実践について作品評を書こうと思います。

※切り絵という語は,少し意識的な偏りを孕むので,単に紙を切ることによる造形としての意味の言葉を使いたいときはPaper-Cuttingと表記しています。(厳密に言えば,偏り=「絵に収斂してしまう危険性」が想定されます。最もよく使われるのが「切り絵」

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切り絵展レビュー「日本の切り絵7人のミューズ」展 現代の切り絵の地図を考えてみる。

切り絵展レビュー「日本の切り絵7人のミューズ」展 現代の切り絵の地図を考えてみる。

はじめに。 本稿は、2021年9月に大丸ミュージアム京都で開催された「日本の切り絵7人のミューズ」展のレビューである。先に明言しておきたいのだが、これは感想文ではない。

 批評的側面を含みうることを読み進めていくのであればご理解願いたい。決して何かを蔑む意図はない。本展の出展作家7名に、そして開催に際して尽力された方々に、切り絵を制作する人間のひとりとして最大限の敬意を表したい。また、切り絵の世

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ピピロッティ・リスト展と久保田成子展 その② くぼた編

ピピロッティ・リスト展と久保田成子展 その② くぼた編

展覧会レビュー/レポート、そして思考の走り書き。

一応、先日のピピロッティの記事の続きという体で書いていこうと思っています。→ピピ編はこちら

久保田成子展 Viva Video!この展覧会には、大学院の「キュレーション実地演習」なるゼミ授業で訪れることになった。院生どころか休学中の学部生で正規の参加ではなく公認もぐりでだ。教授がTwitterで展示見に行ってピピ展と久保田展に関するディスカッシ

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ピピロッティ・リスト展と久保田成子展 その① ピピ編

ピピロッティ・リスト展と久保田成子展 その① ピピ編

今年の初夏の関西で開催された2つの現代美術作家の回顧展に関して簡単なレビューをしていきたい。前者は京都国立近代美術館、後者は国立国際美術館と、どちらも国立館での開催であった。この文章を書くに先んじて、大学院のゼミ授業に参加させてもらっており、そこで得れた知見もせっかくなので反映していこうというつもりだ。

両者の共通点として、女性作家であること(そして、それぞれが女性性をテーマの一つに制作を行って

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クレア・ビショップ藝大公開講義の要約もどき

2021年6月5日に東京藝大国際芸術創造研究科が主催する美術史家/批評家クレア・ビショップの公開講義がオンラインで行われて聴講していました。非常に興味深い内容だったので真面目にメモを取っていたので要約もどきをしてみたいと思います。僕は専門家でもなければ美術史学徒でもないので、間違っている箇所もあるかと思いますので、あくまでも要約「もどき」であることをご承知の上、読んでいただけたらと思います。

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第3回切り博のレポート

第3回切り博のレポート

【はじめに】どうも、切り絵界若手のホープとも呼び声も高い松村です。2か月前に二十歳になりました。そろそろSAMURAI最年少枠を脱した模様です。そういえば昨年は、切り博関連3記事の合計閲覧数が会期中だけでも1000を超えておりまして、皆様どうもありがとうございました。

さて、今年は書くか、書くまいか、非常に迷っていました。展示会期中に3度目の緊急事態宣言が決定・発令という厳しい状況下での開催とな

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脆さを抱えて走ること。(切り絵について)

【序】制作や表現のなかで考えていることを出し惜しみすることなく、そして「考え抜いたこと」を他人にいとも簡単に知らせてしまうことに臆せず、文章として公開していくことにしました。せっかくなら、僕の言葉として動画などで直接語りたいと思っていたりしました。でも、機材や編集能力などがないのでnoteにしました。今後、不定期で【○○(切り絵について)】というタイトルの記事を連載します。正直、めちゃくちゃ僕のコ

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第2回切り博 展覧会レビュー編

第2回切り博 展覧会レビュー編



2020/8/8~8/23に大阪市内で開催される第2回切り絵博覧会について、既に別ページで展覧会レポート及び自作解説を執筆しました。

このページでは、それ以外に特筆したい作品や展示構成などについて私的見解などなどを書きます。細かい内容ですので、切り博を概観したいという方はレポート編をご覧ください。

では、レビュー編スタートです。

作品編まずは作品について。他にもたくさんの素敵な作品があり

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≪Spiral≫自作解説

≪Spiral≫自作解説



タイトル ≪Spiral≫

2020年制作、素材:楮・雁皮混合紙(手漉き、6匁)、本藍染め阿波和紙

コンセプト文

渦潮や台風、竜巻、銀河といった自然界のなかでもかなり速度を持ち、動的なシルエットとしてスパイラル(螺旋)を描きました。
中心へと渦巻く形には、視覚的にもそして感覚的にも、果てしなく続いてゆくという崇高さがあり、聖性が宿っていると考えています。 

さて、本作品に使った手漉き和

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第2回切り博 展覧会レポート編

第2回切り博 展覧会レポート編



2020/8/8~23に大阪市内で開催される、第2回切り絵博覧会(以下、切り博2020、展示情報はページの最後に記載。)について、今般の世情により、鑑賞者のみならず遠方の出展者からも来場を断念する声を多々聞いていたため、大阪在住の出展者である私、松村大地がレポートとレビュー、そして自作解説の3記事を書くことにしました。レポートでは、展示会の紹介や展示内容について、SNSでは書ききれない詳述をた

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三篇の紙集展オンライン会場B

三篇の紙集展オンライン会場B



三篇の紙集 展

展示会情報 

・出展者 有澤悠河/松村大地/峯尾彰太朗

・主催/企画/キュレーション 松村大地

・会期 2020年3月18日~3月23日(終了)

・会場 MIRAIE Garelly(大阪市中央区)

展示会ステートメント及び作家コメント

【オンライン会場解説に際して】

今回、三篇の紙集展では、オンライン会場を用意いたしました。
Noteを利用し、展示会のその場所

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note開設

初めまして、松村大地と申します。切り絵作家、また2年ほど前からキュレーター(展示会の企画者)としても活動しております。

突然ですが、こういう切り絵作ってます⇓

SNSは主にTwitterを使っていて、InstagramやFacebookも細々とやっているのですが、この度、noteを開設しました。

投稿しようと思っている内容は、

①作品紹介、作品コンセプト

②展示会出展や企画など作家活動の

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