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#命

散華

人は散るから
美しいと
囁くならず者
散り逝く事は
虚しいと
嘆く娼婦
俺には意味が
分からないなと
言い切る賭博師
彼らは分かり合えず
散る華へ変わるだろう
骨すら残さずに

砂と海の女王

うつろわざる
砂と海の女王に憧れる
うつろうもの
何を犠牲にしても
人は人でしかないと
その體で知り絶望する
老いさらばえた姿を見て
砂と海の女王は
なんて美しのだろうと
称賛して地平線へ消えた
無限の命をゆらりと揺らして

灰と血のギャンブラー

ギャンブラー達は
今日も酒を煽り
その安い命を賭け
時に死へと向かう
落下する渡り鳥みたいに
モラルを失くした
狂人達の宴は更ける
平等な線を引きながら

三流クラッカー

うだつの上がらない日々に
嫌気が差した歌い屋は
真昼の月を見ながら
闇市でぎった拳銃を撃つ
胸から純白の椿が咲いて
そのまま地面へ倒れ込んだ
彼が命を賭けてまで
探した物は見つかったのか
もう誰にも分かりはしない

流れるもの

命は流れて何時か
消えてしまうと
父が話してくれた
遠くを眺めながら
夏祭りの夜に
やくざ者が父に絡んで
父は怒りを抑え
俺と叩き合おうと言い
やくざ者を殴り倒し
彼の耳元で何かを言った
何故かそんな記憶を
思い出したけど
もう父はいなかった
この世界のどの場所にも

呪い合い

呪い合おう
互いの命を賭けて
爆薬を體に巻いた
知らない者が叫ぶ
残念ながら細やかな
願いは叶わない
高所に配置された
狙撃手に眉間を
撃ち抜かれ倒れる
くすんだ夜空を見る事も無く

救えないもの

それを落とさない為
必死に手を伸ばす
だけども隙間から
容赦なく零れ落ちる
幾つもの命が
バラバラと地にまみえ
消えてしまったんだ
遅すぎる初雪の様に

フロア11

上手く空を飛べず
落ちて逝く酉は
疑問を抱かずに
命を散らすだろう
マンションの屋上から
飛び降りる人は
不安に駆られながら
死んで逝くのだろう
戻る事など叶わずに

デッド・エンド

揺籃に隠れる引き籠り
父と母はもういない
盾を失くしたその體では
もう何処へも逝けず
少しずつ壊れてしまう
確実な終わりを瞳に写し
震えながら命を散らした

ロックスター

悪魔と取引する
ロックスター
純粋な欲望は
時に美しく煌めく
全てを称賛されて
莫大な富を得る
その代償に彼は
夢を見れなくなった
脆い命が砕け散るまで

ディレイ

孤独な部屋に
鳴り響くギター
ディレイを通して
遅れる音すら
誰も気付かない
引き籠る僕らは
明日を信じられず
命を食い潰す
まるで蟻の様に

海へと向かう

故郷へ向かうヤクザ者
シャッター街を走り抜け
築港へとその足を向ける
辿り着いた海だけは
昔のままで彼を迎えた
残り僅かな時を抱えて
命の使い方を定める
それが冷徹だったとしても

マキリ

月すら輝かない夜
マキリを研ぐ狩人
それしか出来ない者は
時に病んでいるのか
答えを探さないまま
今日も獣を狩りに逝く
命がそこにある限り

虚像

藁の犬に
手を合わせ縋る
弱い人達は
その安い命を
奪われて消えた
危険な午後に