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2023年4月の記事一覧

誠の言葉

互いの足を引き合う事が
美徳とされるこの国で
誠の言葉など
何処にも有りはしない
そんな事を嘯いて
私は今日を生きて逝く
何かに疲れ果て
居場所を失くしても
私は明日を生きて逝く
暁に燃えて死すまで

散華

人は散るから
美しいと
囁くならず者
散り逝く事は
虚しいと
嘆く娼婦
俺には意味が
分からないなと
言い切る賭博師
彼らは分かり合えず
散る華へ変わるだろう
骨すら残さずに

バーバヤガー

バーバヤガーと呼ばれた
女を探すマーロウ
平凡に見える人の裏に
違う顔が隠されていても
彼は動じたりはしない
皆ペルソナを被っているから
荒事を潜り抜けて
バーバヤガーを探したマーロウ
彼女の内面は暴かない
それは彼の仕事では無いから
冷血な社会の風が
全ての人を包み込み
皆が何処に向かうのか
考えながら眠るマーロウ
バーバヤガーの夢を見ないで

抱き合えたなら

あの日の貴方と
抱き合えたなら
何か変わっただろうか
あの日の貴方を
離さなかったなら
情けない日々を
終えれただろうか
何時か貴方と
抱き合えたなら
今度は言えるだろうか
貴方だけを愛していたと
偽りなき一片の心で

対岸の涙

匿名の哀しみが
対岸で溢れ返って
大きな川になろうとも
私達は気にしない
そんな事は
如何でもいいから
匿名の孤独が
対岸で零れ続けて
沢山の方が亡くなっても
私達は興味が無い
他人を騙す事で
精一杯だから
対岸の涙に
流される日まで
私達は狂い続ける
笑えない道化師として

ディストーション

絶対的な正義に
歪められた夜が溶けて
皆が幸せな振りをする
この国に未来は無い
誰かが奏でる
不協和音が加速して
破滅してしまうだろう
振り返る事すら叶わずに

美しいナイフ

鈍い痛みと共に
私の體に吸い込まれる
美しいナイフを扱う
顔の無い者
朦朧とした意識の果てで
私は悪意に抱かれ
生まれ変わるのだろう
次の顔の無い者として

時の歯車

かみ合わない話を
幾ら繰り返しても
私達は分かり合えずに
憎しみが募るだけ
故郷の初雪みたいに
一瞬で消えてはくれずに
延々といがみ合う
そんな日々に疲れて
私は時の歯車を回した
現実から逃れたくて

しがない歌

しがない歌を歌う
売れないシンガー
貴方の代わりは
幾らでもいると
気が狂いそうな程
言われ続けても
しがない歌を歌う
売れないシンガー
歯牙にも掛からないと
知っていながら
今日もがらんどうの
ステージに立ち
しがない歌を歌う
絶望と向き合いながら

箱庭と楽園

無実の子は
箱庭で遊ぶ
外の世界は
眩し過ぎるから
無実の子は
罰を受ける
この箱庭は
楽園では無いから
無実の子は
祝福される
洗礼を受け
生まれ変わる為に

ラヴ・マシンガン

臆病なお前の心を
ラヴ・マシンガンで
撃ち抜いたなら
きっと何もかもが
変わっちまうのさ
人は弱く脆く何時も醜い
だがそこが好きなのさ
全てを脱ぎ捨てられたなら
俺を殺しにくればいい
さあ俺と呪い合おう
その憎しみをさらけ出して

天罰

戦争で利益を得る
肥えた馬に
詐欺で大金を得る
飢えた鼠に
憲法で日銭を得る
枯れた兎に
揺籃で日常を貪る
狂った猿に
等しく天罰を
骨すら残らない程の

クール・グリース

壁に口紅で
アイラブユーと
書き残し
失踪した娼婦
クール・グリースで
髪を纏める
不良少年は
Z1に夢中のまま
夜の公道を
走りだせば
全ての物を
置き去りにして
見えない星さえも
掴めると思った
彼はまだ
何も知らない
支配する事や
使役される事さえも
彼はまだ
無敵だった
本当に
無敵だったんだ

ガマズミ

血のように赤い
ガマズミの実を一房
首に下げて
真昼の街を歩く狂人
無垢な人達を
手製の槍で襲い
警官に撃たれて死んだ
いつの間にか消える
野良犬みたいにさ