マガジンのカバー画像

散文

77
運営しているクリエイター

#スキしてみて

散文 点滅と借り物

散文 点滅と借り物



街が点滅している。

反射する川の色は、深い愛よりも歪に赤と青を折り合う。
重なり合った空をなぞるように私は見ているのだけど、きっと何も見えていないんだ。

高い場所に来た。街の中でも高い場所。夕焼けを見たいがために歩いた足は不安がある。何でこうなってしまったんだろう、なんて言葉を出せないほどに私の舌は硬く怯えている。

空が燃える。

どこかの放火をいつも毎日大きく写し出していた。

街が点

もっとみる
写真詩『金色の目の先』

写真詩『金色の目の先』



明日の夜の声がした
漂う金色は中秋の名月の匂い
肺に溜め込むよう吸い込んだ
君の眺める世界は
裏切るもののいない空の下
遠く彼方よりも
目の前の愛を守りたかった

散文 ずっと見ていたい

散文 ずっと見ていたい



愛情は足ることがなかった
ずっと君を見ていたい

一方的にならないように
迷惑にならないように
そう思ってはいるものの
寝ている時は構いたくなる
触れ合っていたい
君の鼓動を聞いていたい
トクトク鳴るのが気持ちよかった
私を愛して欲しかった

愛が伝わる膝の上の温かさ
猫のモーター音は私に響く

「猫かいなっ!!!」というツッコミであってます😊😊

猫が可愛いんです。ナギが可愛いのです。

もっとみる
詩『はみ出す青』

詩『はみ出す青』



もう終わるらしい夏休みの
空を見ることなく
部屋の中
ひとりぼっちで吸う息に
とくとくと輝いた愛のなさ
めぐる命の空き箱は
何かを思わすことも無い
さおさおさお
竹の音がどこからか聞こえるの
さおさおさお
また聞こえる
それは猫の悲鳴をかき消すために

マスクから開放され
入ってくるのは青の音
侵食していくその色は
まぶたの裏に焼き付いた

散文 踏切の君に

散文 踏切の君に



私は明るく冷えた電車の中で、
君は猛暑の余韻の中、
私を探して踏切の向こうにいる。
君の硬い熱を掴んだ手でバイバイをする。