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散文

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#文章

写真詩『街頭の震え』

写真詩『街頭の震え』



もうやめよう
微かな希望ばかり見て
自分の持ち物を投げ捨てる
そんな苦しみを
愛してしまうのはどうしてなの

輝きに目がくらむ
生きるって苦手だ
震える胃が全身を嬲る
止まらない鼓動
やめてしまえたら楽なのに

写真詩集第2弾 秋版『蛇行する夕焼け』の収録予定作に作品です。
今、一生懸命作っております。
多くの人に手に取って貰えたらいいなぁ。

こちらで出来次第販売を始めますのでよかったらブッ

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散文 夏色に乞う

散文 夏色に乞う

進行方向に向かって座ったまま何キロで進んでいるかも分からないで、目的地に行こうとする。そんな私と同じようにスマホをいじるだけの乗客もみな、いつの間にか半袖に衣替えをしていた。

世界には黒と白しかないのかと思うぐらい彼らの服装は無彩色であった。色があるのは私だけなのか。多数に流される方がきっと楽だ。でも、私は色が好きだ。夏の毒々しいほどの名前の知らない赤い花とか、遊びに行くからと玄関に投げ捨てられ

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散文 夏を撒く

散文 夏を撒く

私は今、蚊に刺されている。左の肘に少しの痛みを感じたから目をやると細い足と胴、そして翅がそのサイズよりも存在感を表していた。すぐに腕を動かすと消えた。ぎりぎり噛まれていなかったのだろう。だけど、先の痛みを意識してしまって、痒くなってきた気がする。気の所為かもしれないけど、痒い気がする。こそばゆくて、痛い。

私はきっと思い込んでいるだけ。痛みを作り出しているだけでしかないんだろう。今もずっとジーっ

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散文 暑さを縫う

散文 暑さを縫う

何を思っている訳でもないのだけど、私はそっと街を眺めていた。夏の涼しさを感じながら、自転車で駆け巡る。髪が風に吹かれて、私は一人声を出して笑ってみた。

ハハハ、なんだか愉快な気持ちになってきた。

空の青さはどこまでも優しくて、命が沸き立つのが分かる。雲はきっと滑らかだ。生きてるって実感するのは何故なのだろう。夏が来るまではどこかぼやけたような気持ちがしていたということか。夏生まれの私は全身が水

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文体練習 比喩の坩堝はどこに

文体練習 比喩の坩堝はどこに

一文を長くしようのコーナーです。
比喩に比喩を重ねる文体をやってみます。

もう戻れないと知っていても、僕はただ使われることの無い公園のベンチに我が物顔で眠り込む猫のような君を見つめることしか出来なかった。

空はどこまでも青くて、息が止まりそうなほどの夏を受け止めるためだけに肺を膨らませる。

ああ、と言うだけのアイツは、俺の事を心底嫌いなのに全てを包み隠そうとしたあの女に似ていて吐き気がした。

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