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『大人の本音だだもれ。』1話 会社の忘年会ってなんのためにやるの?【Web小説】note創作大賞

【あらすじ】

 朝、仕事へ向かおうとしている大人を見れば、楽しげなようすは読み取れない。無表情の人もいてまるで人形のよう――。

 「何を楽しみにしているんだろう」と思ったことはありませんか?

 楽しみがあるのかと心配になるし、自分もこんなふうになると想像したら憂鬱ゆううつになりませんか?

 大人はあまり顔に出さないし本音トークをしてこない。だからつまらなそうに思えるのは当然のことです。でもご安心を。

 大人も楽しみを見つけるし、それぞれワクワクするコトを持っている。世界が違うように映るかもしれないけど、そんなに変わらないんです。

 そこで、とある会社に勤めてるビジネスパーソンたちの日常を紹介しましょう。



第1話 忘年会とは

 忘年会とは、「一年間お疲れさまでした。今日はみんなで飲んで食べて楽しみましょう」という意味合いのイベントだ。

 とある会社の忘年会が行われている。
 ざっと見たところ、この酒宴は「盛り上がっている人」「上司にべったりの人」「つまらなそうにしている人」に分類することができそうだ。

 それぞれ思いを抱えながら時間は過ぎていき、忘年会は終わりを迎える。宴会の締めとなる挨拶が済むと、みんな荷物を持って店を出た。

 店先では人だかりがあり、定番の「二次会行く人ー!」コールが出た。ここで「ノリノリで二次会に参加する」「気乗りはしないが付き合いで参加する」「参加せずに帰る」と選択肢が分かれていく。

 この会社はほとんどの人が二次会参加で帰宅組は少数派。どうやら社員同士の仲はいいようだ――。第三者視点だとこんなふうに判断してるのではないだろうか。

 会社の忘年会を「一年の苦労を忘れるために行う宴会」と思っただけの人はまだまだ甘い。

 日本の社会は「KY」、つまり「空気を読めK・Y」だ。会社のスタンスでは「一年間働いてくれて、ありがとう。今日は無礼講で楽しんでね」って言ってるけど、「コミュニケーションを取りやすい場をつくってやるから、円滑に仕事ができるようにしろよ」というワードが潜んでいる。

 昔なんて上司にお酌するのは当たり前で、酒宴の席でグラスがからになっていると「酌して来い!」と言われたり、ぼ~~っと席に座っていると「何やっているんだ、席移動して話してこい」と叱られたりしたそうだ。
 今だと「パワハラです!」「セクハラだ!」となるから、だいぶ減ったようだけどね。

 でもねえ、慣習というものは暗黙の了解で残っているもの。それに空気を読む能力にたけているビジネスパーソンは会社側の意図を察知し、習性のようにちゃんと応えている。

 では忘年会のようすを社会人の目線で見ていこうか。


 

 さきほどの忘年会で盛り上がっていたグループ。
 酒に酔った連中が、ただ騒いでいるように見えるけど、実はコミュニケーションの取り方を考えて行動している。

 学生のノリで「ねえねえ、面白い映画知らない?」と脈絡もなく話題を振ったら、「なにこの人、いきなり距離を詰めてきた」と警戒されてトーク終了の方向になるのが普通だ。そうならないために段階を踏んで会話をつなげるように仕向けないといけない。

 話題のきっかけづくりは難しいように思えるけど、旬になっていることを切り口に使うとよく、相手は社会人としてきちんと対応してくれることが多い。

 例えば「この前、映画『〇〇〇』を見てきました。△△さんは見ました?」と話題をつくる。相手から「見た」と返ってきたら「あれよかったですよね」と返したり、「見てない」と言われたら「そうですか。△△さんはどんなジャンルの映画が好きなんですか?」と質問に変えて、話をつなげていけばいい。

 同じ職場で働いてるなら「仕事」が話題になる。さりげなく「営業先の△△さんと〇〇〇工場へ行きました。そのときに△△さんが『趣味で□□□を始めた』と話していました」と、互いに知っている人物を出せば、コミュニケーションを取るだけでなく、営業先について情報交換するオマケも付いてくる。

 いい大人が騒いでるように見えるけど、実は裏で何やら動いている。それが会社の忘年会だ。

 ああ、そうそう、「宴会中に上司にべったりの人」を不思議に思う人もいるのでは?
 このタイプはお酌をしながら話を聞くことで上司の気分を良くしている。行動の裏には昇給や人事異動の際に、上司が推してくれないかなって思惑があるようだ。

 上司を味方につけておくと、困ったときに助けてもらえるかもしれないから、なかなか有効な手段といえる。このコネづくりも立派なコミュニケーションのひとつだ。

 たまに酒の席で悩み相談をする人もいる。気がゆるんで相談したい気持ちはわかるけど、愚痴ぐちと勘違いされたり、場をしらけさせることがあるので、別に機会を設けて静かに話せる場所で相談したほうがいいだろう。

 忘年会は会社のイベントなので「仕事」ととらえている人が多い。でも100%仕事だとつまらないので、どこかで楽しむのがオトナの対処法と割り切っている人が多いようだ。

 ここまでの流れからいけば忘年会は仕事の一部、「じゃあ、二次会はどうなんだ?」となったのでは?

 二次会は一次会より仕事色は減る。面倒だと思ったら参加義務はないので不参加OKで、楽しみたい人が参加する仕組みだ。

 この会社ではほとんどの人が二次会へ行く運びとなり、数名がお店を探し始めている。その近くには参加しない人たちもいる。

 おや? 二次会不参加のメンバーに何やら険悪な感じが……。
 男性二人がにらみ合っている。

 ああ、どうやら忘年会の裏ミッション「コミュニケーションを取る」以外にも、ミッションが動いていたようだ。

 ピンときた方は勘が鋭い! わからない方には次のヒントを。

  •  イベント

  •  お酒

  •  男女

 三つの項目だけ見ると、合コンの要素と似てると思ったのでは?
 忘年会は会社の行事だけど、宴会を通して仕事以外の面を知る機会をつくっている。

 お酒が入るとリラックスしてプライベートな面がチラリと見えることがある。ふだんは見ない姿を知って、そこから色恋が始まって……とちょっと合コンに似たところもあるのだ。

 ここまで話を流してきて「オトナの色恋キター!」と続きが気になったのならゴメンナサイ。
 忘年会までの経緯を知っておかないと「なんでこうなる?」とついていけないはず。なので忘年会へ至るまでの職場もようから紹介していこう。


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※小説投稿サイト『カクヨム』で投稿していた小説を推敲してnoteに公開しています。


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【動画の内容】※音あり(音声「🏝️」)


Web小説『大人の本音だだもれ。』

第1話

  • 【あらすじ】

  • 1話 会社の忘年会はなんのためにある?

第2話

会社に新しい人が来るときは期待してしまう

第3話

美人で仕事はできる。でもコミュ力がね

第4話

30代の枯れたオッサンをとりこにしたのは

第 4.5 話 小休憩(1)

物事に変化を与えるのはいつも「人」

第5話

朝礼で増員の発表があって職場の空気が変わる

第6話

自分より若いコが来て40代女性は焦りを感じてる

第7話

結婚願望はある。でも大っぴらには言っていない

第8話

仲が良くても酔っぱらいに向ける視線は厳しい

第9話

これまでの対応は社交辞令だったの?

第10話

本来の性格がわかるとき

第10.5話 小休憩(2)

モテる人っていますよね?

第11話

社内恋愛は避けてきたけど迷ってしまう

第12話

酔っぱらいの相手は大変

第13話

恋愛モードに完全に切り替わった

第14話

恋の作戦スタート!

第15話

勝利するには布石を打つ

第16話

俺の攻略マニュアルは完璧。恋の勝者は

第16.5話 小休憩(3)

会社の忘年会の裏側ではこんなことも

第17話

忘年会がスタートする前からモノゴトは始まっている

第18話

フラれても再挑戦! 諦めないこの男は策士だ

第19話

攻略するために選んだアイテムは「酒」

第20話

大人だから態度には出さない。でも脳内で叫んでいる

第21話

おじさんは若いコが心配だ!

第22話

強気で駒を進め今度こそあのヒトを落としてみせる

第23話

送り狼のピンチに騎士ナイトが参上!

第23.5話 小休憩(4)

オトナたちはどんな恋愛をしているのかな?

第24話

オトナの男の恋

第25話

嫉妬、羨望…。職場でもあること

第26話

「彼女」よりも「パートナー」を探したくなったきっかけ

第27話

人が強くなる瞬間

第28話 【最終話】

パートナーになったら絶対に彼女から引き出したい!



カクヨム
 神無月そぞろ @coinxcastle


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