『大人の本音だだもれ。』13話　付き合うなら性格が気になる【Web小説】

神無月そぞろ

2024年4月20日 11:23

第13話　社内恋愛が始まるきっかけ

　休みが明けて会社へ向かっていると、先輩社員が歩いているのが見えた。すぐに追いかけて声をかけた。

「おはようございます」
「あ～……　木庭こばくん……。おはよう」

　広門ひろかど先輩は朝は不機嫌なのでふだんは接触を避けている。でも今日は聞きたいことがあるから別だ。

「歓迎会のあと、酔った町家まちやさんを送るのを見ていましたけど大丈夫でした？」
「あ――、そうだ……。金曜は大変だったわ」

　先輩は眉間にしわを寄せている。はっきりと物事を言う人で、もともときつい性格ではあるけど嫌悪感が露骨に出ている。

　嫌なことでもあったのか？

　金曜を思い出して再び怒りがわいてきたようで顔がどんどん怖くなっていく。愚痴を聞かされることを覚悟して質問した。

「何かあったんですか？」

　不機嫌な顔でゆっくりとこちらを向くと大きなため息をついた。そして語り始めた。

「町家さん飲みすぎていたでしょ。
　一人で歩くこともできなかったから結局、最寄り駅まで送ったわ。
　電車に乗ると、町家さんは眠たいようで体がふらついていたの――」

　先輩の話によると、歓迎会で酔った町家さんは足取りが危なくて、ずっと汪花おうかさんがついていた。電車の中では、眠たそうにしているのを見かねた乗客が席を譲ろうとしたという。

　酔ってる町家さんの代わりに汪花さんが対応し、電車に乗っている間、嫌な顔をしないでずっと町家さんを支えていたらしい。

「本当に迷惑な酔っぱらいって感じで恥ずかしかったわ」
「ずっと汪花さんがついていたんですか？」
「そうなの。彼女、とてもやさしいよ。
　私はさ、駅に着いたとき、解放されると喜んでいたの――」

　先輩は町家さんをホームに降ろしたので、これで終わりと思ったらしい。ところが汪花さんは改札の外までついて行こうとしている。

　そこで『いい大人なんだから、ほっとけば』と言うと、『困ったときはお互い様ですから。それに女性だから心配です』と言って改札の外までついて行った。

　改札を出て町家さんが帰り始めても、汪花さんは彼女の姿が見えなくなるまで見送っていたという。

「会ったばかりの人に対してあんなに親身に……。もう感動したわ」
「大変でしたね」
「これまで町家さんは酔いつぶれることはなかったから珍しいけど、いい大人でしょう？
　人に迷惑をかけるくらい飲まないでよねって思ったわ。まったく！」
「お疲れさまでした」
「あ、町家さんがいる。ちょっと文句言ってくるわ」

　町家さんを見つけた先輩は鼻息を荒くして離れていった。

　先輩の話を聞いている間、自分の中でテンションが上がっていくのがわかった。

　どうやら汪花さんはやさしい人みたいだな。
　というかお人好しに近い。

　美人だから引かれていたけど性格も良さそうでさらに興味がわいてくる。完全に恋愛モードになっててターゲットは定まった。

　ちょうど汪花さんに頼む予定の仕事があるからタイミングがいい。仕事の依頼をきっかけにして、行動に移すことにした。

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※小説投稿サイト『カクヨム』で投稿していた小説を推敲してnoteに公開しています。

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