見出し画像

『大人の本音だだもれ。』12話 周りは迷惑だと思ってる【Web小説】

第12話 酔っぱらいって本当に困る

 歓迎会で汪花おうかさんを観察してると隣にいる町家まちやさんは自然と目に入っていた。これまでとお酒の飲み方が違っていたから少し気になった。

 町家さんは同じペースでお酒を飲み、自分の限界を知っている飲み方をしていた。ところが今日は宴会の途中から急にペースが速くなった。あれではすぐに酔うとわかっていたけど気づいていないふりをした。

 案の定、歓迎会が終わるころには町家さんは完全に酔っていた。トイレへ向かう足取りはふらついていたのに、みんな気にかけていない。

 酒宴が終わって店の外へ移動が始まっても、周りは話に盛り上がっていて町家さんの状態に気づいていない。彼女はふらつきながら店を出て行った。

 店の外へ出てみたら町家さんが離れたところで壁に手をついていた。こんなに酔った状態で一人で帰れるのか疑問だけど声はかけたくない。何もせず汪花さんの観察を続けていたら、彼女が町家さんに気づいたようだ。

 すごいな。酔っぱらいに声をかけに行ったよ。

 汪花さんのことは気になるけど巻き込まれたくない。雑談している輪の中にとどまり、会話を続けながら横目でようすをうかがう。

 町家さんって彼氏ほしいオーラがでていてヤバイんだよな。

 いろんな女性と付き合った経験から願望が強い人はすぐにわかる。大きな声で話したり、目立つ行動を取ったりして自己アピールする。本人は隠しているつもりだから痛々しい。

 オフィスで仕事をしてると、町家さんから切羽詰まった感が伝わってくることがよくある。

 町家さんは午後三時になるとたまにお菓子の差し入れをしてくる。お菓子を渡すだけでいいのに必ず話を振ってくる。接点をつくろうと必死な感じがして、ちょっとでも気を持たせると勘違いしそうで少し怖い。

 かまってほしくてあんな飲み方をしたんだろうな。
 でも酔ったオバサンの相手なんてしたくない。
 それに声をかけたことで恋愛対象にされると困る。

 関わるのは避けて、ほかの社員と話をしながら二人の観察を続ける。

 うわ、汪花さんやさしい。
 ていねいに対応してる。

 酔った人の介抱は面倒なだけだ。いきなり近くにいる人に絡んだり、酔いが回って歩けなくなると支えが必要になったりする。トラブルを起こしたら謝罪し、家へ送り届けるのも周囲の人で、酔ってる本人はご機嫌のままだ。

 嫌な思いをするだけなのに、わざわざ自分から相手するなんて。
 人が良いのか、それとも自分をよく見せるためのパフォーマンスなのか?

 初めて汪花さんと話してみたけど、短い会話では人柄はわからなかった。二次会に参加するなら彼女に話しかけて、もっと探ってみようと考えていたのに町家さんを送っていくようだ。

 ついていってようすを見たい。
 でも町家さんと関わりたくない。
 残念だけどこのままフェードアウトしよう。


 木庭こばは自分がモテるとわかっている。自分の長所を知っていて有効活用している。

 身長が高いから守られているという安心感を与えることができる。やや細身なところは、はかなさを演出して守ってあげたいという母性もくすぐれる。

 顔に派手さはないけど毎日ケアして肌を整えている。髪にも気を使っていてまめに整髪し、前髪をおろして若さをアピールしている。

 服装に気を配っていてスーツは色や形が異なるものを複数用意し、アイロンのきいたシャツを着ている。

 清潔感が最も重要なことも把握していて、口臭や体臭に注意を払い、女性からNGが出ないようにしている。

 日ごろから女性の目を意識しているので受けが良く、木庭は好意を持たれやすい。恋愛経験は豊富で駆け引きがうまい。

 性格を分析してから行動するタイプなので、相手が喜ぶことを知っている。そのため女性は木庭のことを好きになりやすいようだ。

 現在の木庭はフリーだが、繁忙期のヘルプで来た汪花に関心を持った。

 歓迎会で汪花は酔った町家に付き添っていた。その行動はいい人ぶっているのか、それとも心配してのことなのか。いつもならすぐに性格が読めるのに、いまいち判断ができなかった。木庭にとっては珍しいことだ。

 女性のことがこんなに読めないのは初めてで、汪花のことを知りたいという欲求がわいている。帰路につきながら休み明けの出社が待ち遠しいと思っていた。

 

▼ 第13話 へ ▼


※小説投稿サイト『カクヨム』で投稿していた小説を推敲してnoteに公開しています。


🏝️ 動画 準備中 🏝️
【動画の内容】※音あり(音声「🏝️」)


Web小説『大人の本音だだもれ。』

第1話

  • 【あらすじ】

  • 1話 会社の忘年会はなんのためにある?

第2話

会社に新しい人が来るときは期待してしまう

第3話

美人で仕事はできる。でもコミュ力がね

第4話

30代の枯れたオッサンをとりこにしたのは

第 4.5 話 小休憩(1)

物事に変化を与えるのはいつも「人」

第5話

朝礼で増員の発表があって職場の空気が変わる

第6話

自分より若いコが来て40代女性は焦りを感じてる

第7話

結婚願望はある。でも大っぴらには言っていない

第8話

仲が良くても酔っぱらいに向ける視線は厳しい

第9話

これまでの対応は社交辞令だったの?

第10話

本来の性格がわかるとき

第10.5話 小休憩(2)

モテる人っていますよね?

第11話

社内恋愛は避けてきたけど迷ってしまう

第12話

酔っぱらいの相手は大変

第13話

恋愛モードに完全に切り替わった

第14話

恋の作戦スタート!

第15話

勝利するには布石を打つ

第16話

俺の攻略マニュアルは完璧。恋の勝者は

第16.5話 小休憩(3)

会社の忘年会の裏側ではこんなことも

第17話

忘年会がスタートする前からモノゴトは始まっている

第18話

フラれても再挑戦! 諦めないこの男は策士だ

第19話

攻略するために選んだアイテムは「酒」

第20話

大人だから態度には出さない。でも脳内で叫んでいる

第21話

おじさんは若いコが心配だ!

第22話

強気で駒を進め今度こそあのヒトを落としてみせる

第23話

送り狼のピンチに騎士ナイトが参上!

第23.5話 小休憩(4)

オトナたちはどんな恋愛をしているのかな?

第24話

オトナの男の恋

第25話

嫉妬、羨望…。職場でもあること

第26話

「彼女」よりも「パートナー」を探したくなったきっかけ

第27話

人が強くなる瞬間

第28話 【最終話】

パートナーになったら絶対に彼女から引き出したい!



カクヨム
 神無月そぞろ @coinxcastle


この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?