『ホラーが書けない』43話 異能があるだけで苦労している(最終)【Web小説】
第43話 背中を押してくれる大事なやつ コーヒーのいい香りが染み込んだ店は、年季の入ったテーブルや椅子があって雰囲気がいい。せわしい東京の街とは対照的で、ゆっくりと時間が流れているような静かな店内は、ずっといたくなる心地良さだ。
ほかの客はすでにいなくなっていて2階は貸し切り状態だ。俺――紫桃――が思い悩んでいると、向かい席で眠っているコオロギ――神路祇――の体がぴくりと動いた。
2時間ほど仮眠をとったコオロギは目を覚ました。座ったまま両腕を上げて大きな伸びをする。熟