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『ホラーが書けない』(番外)不思議な写真の大半は光のイタズラだけど…【Web小説】

p.01 心霊写真じゃないオーブの正体


 カーテンを開けなくても朝がきたのがわかる。じりじりと室内の気温が上がっていく状況から今日も酷暑だろう。

 もう汗がにじんできたのでベッドにいるのはしんどい。仕方がないから起きることにした。

 昨夜は寝苦しくて何度も目が覚めたし、体は汗でべたべただ。すっきりするために冷たいシャワーを浴びたんだけど水の蛇口をひねって出たのはぬるま湯だった……。

「日本の夏って、こんなに暑かったっけ?」

 つい文句がでるけど状況は変わらない。それなら心理的に寒くなろうと、ホラー小説ネタをまとめているノートに手を伸ばした。

 ぱらぱらとノートをめくっていたら挟まっていた物が落ちた。拾い上げると、それは友人からもらった写真をプリントしたものだった。


Web小説『ホラーが書けない』紫桃ノート A「二条城」


「キャ―――! いきなり心霊写真を見せないでっ!」

――と驚かせたのなら申し訳ない。でもこれは心霊写真のたぐいではないから、安心してこのまま読み進めてくれよな?

 まず写真について話そう。これは城の入り口を撮ったものだが、オレンジ色の奇妙な物体が写っている。このオレンジは写真を撮ったときは存在していなかったものだ。

 この写真のように存在してなかったはずの球体が写りこんでいるという心霊写真を見かけたことがある人はけっこういるんじゃないかな?

 でもな、大半の写真は霊とか妖怪などのアヤカシが写ったのではなく、光の反射などでたまたま撮れた珍しい写真という場合が多いんだ。

 写真Aも光の反射などのせいで偶然、オレンジの球体が現れたものだ。心霊写真ではないという証拠として似たような写真をほかでも撮っている。


Web小説『ホラーが書けない』紫桃ノート B「ガジュマル」


 心霊写真ではない参考を見せたけど、球体が写りこむ原理がわからないと怖いよな?

 写真を見せておいて読者みんなを置き去りにするのは申し訳ないから、このまま心霊写真じゃない球体が写ってしまうパターンの解説をしていくよ。

 注意点だが、これから話すことは俺が経験した範囲の個人的な意見だ。だから参考程度に聞いてくれよな?


 俺はカメラが趣味でこれまでたくさんの写真を撮っている。撮り慣れているから気づいたことだけど、カメラの角度と光の具合で偶然、不思議な写真が撮れることがあるんだ。

 わかりやすい写真を使ってどういうことなのか解説していくぞ。


Web小説『ホラーが書けない』紫桃ノート C「海の近く」


 写真Cは上部分に白い球体オーブがあり、下部分にオレンジの球体がある。くどいようだが写真を撮ったときには存在していなかったものだ。ではなぜ写りこんでいるのか……?

 不思議なモノが写る理由―― それは逆光のせいなんだ。

 写真の右上から光が入ってきている。カメラと太陽の位置関係は逆光になっており、この状態で写真を撮ると、レンズを通して入ってきた光がカメラ内部で屈折や反射などして球体ができてしまうことがあるんだ。

 それから光のほかにもう一つ、考えられる原因がある。不思議なモノが写ってしまうのは、カメラのレンズにキズがあったりほこりがついていたりする可能性がある。

 レンズにキズがついていると、キズ部分で光が反射したり屈折したりして、思わぬ結果モノをつくる。レンズのキズが肉眼で確認できないサイズだと気づけないから、奇妙な写真が撮れたと勘違いしてしまうんだ。

 写真A・B・Cは同じカメラを使っている。どの写真も逆光で撮っており、逆光が入ってきている方向と水平にオレンジの球体が現れるという共通点がある。規則性があるから、この場合はカメラ自体に原因があると推測できる。

 同じカメラと長く付き合っていくと、カメラのクセがわかってくるので球体が写る原因もつかめてくる。でも原理を知らない人からすると、奇妙な物体が写りこんだ心霊写真に見えてしまうのは無理もないと思うよ。

 さて、ここまでオレンジの球体のことを話してきたが、よく見聞する白い球体のオーブのことも説明していくぞ。

 写真を使うけど、こっちも心霊写真じゃないから安心して読み続けてくれ。


Web小説『ホラーが書けない』紫桃ノート D「古墳」


 白くて半透明な球体が2個写っているよな。

 すぐにわかるのは2個だけど、写真を拡大していくと、あちこちに白い球体があるんだ。


Web小説『ホラーが書けない』紫桃ノート D「古墳」


 オーブが飛んでいる心霊写真に見えるよな? でもオーブじゃないんだ。

 この写真の撮影場所は屋外だ。洞窟の入り口で、土を固めたような地面だったから歩いたときに土埃が舞ったところを、たまたまとらえた写真なんだ。

 白い球体が写っている心霊写真の大半は、人の目には見えない小さな埃が舞っているものといわれている。俺も撮ったことがあるから、このタイプの写真を撮影したことがある人は多いんじゃないかな?

 説明はこれで終了だ。そうそう、有名だからココでは出さなかったけど、シミュラクラ現象によって心霊写真のように見えてしまうパターンもある。

 シミュラクラ現象は簡単にいうと、丸が逆三角形――つまり、∵ の形で配置されていると、人の顔に見えてしまう本能のようなもののことだ。

 丸が並んでいるだけで顔と判断してしまう思考の傾向があることから、俺はたいていの心霊写真は勘違いだと思っている。でも完全に否定はしない。ってゆーか、否定できないんだ。

 俺はこれまでいろんな場所でたくさん写真を撮ってきた。変わった写真も撮れたけど、経験から原因がわかるものばかりだった。だから俗にいう心霊写真は、不思議なモノに見えてしまうだけで、心霊写真ホンモノは存在しないと言ってきた。しかし友人が撮った写真を見てからは考えが変わった。

 俺の友人はちょっと変わっていて、幽霊や妖怪などのアヤカシと遭遇したり、奇妙なモノを視たりする異能の持ち主だ。異能があるからなのか、友人はたまに奇妙な写真を撮ることがある。その写真に写っているモノはどうにも説明できないのだ。

 友人が撮った奇妙な写真を見てしまうと、ゼロ感の俺にはわからないだけで、なにか不思議な存在モノが身近にいるかもしれないと思ってしまうんだ。

 奇妙な写真のデータももらっているけど、心霊写真系はニガテという読者もいると思うからココで披露するのは控えておくよ。……でも本音を言うと、公開して読者みんなに考察してもらいたいんだよな。

 俺だけだと視野は広がらないが大勢の人が考察してくれたら、「これはこういう理由で撮れたんだよ」と答えがでてスッキリするかもしれない。「本当に変な写真だ」と共感してもらえたら不思議なモノゴトがある(かもしれない)という資料になり、俺の小説ネタの裏付けになるからありがたいことだ!

 どっちに転んでも俺にはイイコトなので、なんらかの方法で実現したいなぁ。




【紫桃ノート】p.01


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 神無月そぞろ @coinxcastle


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