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『大人の本音だだもれ。』14話 モテる男の㊙攻略マニュアル【Web小説】

第14話 きれいなあの女性ヒトを射止めてやる!

汪花おうかさん、今の仕事が終わったら次にお願いしてもいいですか?」

 汪花さんの席へ行き、申し訳なさそうな顔をつくって遠慮がちに話しかけた。作業する手が止まると彼女が顔を上げた。

「わかりました。この作業が終わりましたら声をかけに行きます」
「よろしくお願いします」

 最初のコンタクトはこれだけで十分。あとはいつもどおり仕事をして、声をかけてくるのを待っていた。


 三日ほどして、汪花さんが上司に資料を渡しているのが見えた。順番で次は自分のところへ仕事をもらいにくるはずだ。

 しばらくして上司との話が終わったようで汪花さんが移動を始めた。ここに来るとわかっているけど、気づいていないふりをして待つ。

 まるで何も知らずに蜘蛛くもの巣に近づくちょうみたいだ。
 うまくからめとってやる。

木庭こばさん、作業中にすみません。
 手が空きましたのでお仕事をもらえますか?」
「ちょっと待ってください」

 口調は冷静にして動作をきびきびすると印象がよくなる。仕事ができる男と思わせるよう意識しながら行動する。

「お願いしたいのはこちらの書類作成です」

 書類を渡すときは椅子から立ち上がって両手で差し出した。汪花さんが資料を受け取ろうと手を伸ばしてきたので、渡しながらさりげなく手にふれてみた。

 あれ? 反応がないな。
 もっとドギマギするかと思っていたのに。

 今のご時世、セクハラや痴漢に敏感で、すれ違いざまに少しかすっただけでも訴えられかねない怖さがある。だから男はかなり用心している。

 例えば電車に乗ってる間は、両手でつり革をつかんでボディタッチできないことをアピールして身を守る。初めから女性のそばへ立たないようにしている人も多い。職場でも同じことで、男は言動に注意を払っている。

 また女性もセクハラには敏感になっている。ふれられると何かしらの反応を示すものだけど……。

 もしかして気づいていないのか?

 予想していた反応が返ってこなくて拍子抜けした。体にふれることで自分に意識を向かせるつもりだったのに、汪花さんは偶然ふれた程度だと気にとめていないのかもしれない。

 得意の「手にふれてドキドキさせる」作戦は空振りだったけど、あまりショックを感じない。むしろやる気が出てきた。

 書類を渡したあと、わざと汪花さんの横へ移動した。並ぶように立って、横から書類を指さしながら作業の説明を始めた。

 説明は的確かつ簡潔に、それから声のトーンを穏やかにすることを意識して安心させることが大事だ。

「資料に赤字で指示を書きました。
 そしてUSBメモリーの中に、必要なデータをコピーしています――」

 見やすいように書類を汪花さんの前に持っていき、ていねいに説明してるふりをして少しずつ体を寄せていく。横並びだとかなり近い距離になる。

 さあ、汪花さんはどう反応するかな?

 仕事ができることをアピールしつつ、近い距離に立って意識させる「至近距離でウキウキ」作戦も女性には効果がある。

 こんなに近いとドキドキするだろう?

 今度こそ反応があると思っていたのに、説明が終わると「わかりました。お預かりします」と言って、何事もなかったかのように汪花さんは席へ戻っていった。

 動揺すると思っていたのに意外な反応だ。
 パーソナルスペースが狭いのか?

 これまでの経験だと、たいていの女性はこの二つの作戦で自分に関心を持ち始めた。ところが彼女はさりげない方法だと有効にならないようだ。

 久々に鉄壁の出現だ。
 もっとわかりやすい手段がいる。

 なびかない相手だとますます落としたくなる。男心に火がついたけど一日に何度もアタックすると不審がられてしまう。少し間をおいて挑戦することにした。


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※小説投稿サイト『カクヨム』で投稿していた小説を推敲してnoteに公開しています。


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Web小説『大人の本音だだもれ。』

第1話

  • 【あらすじ】

  • 1話 会社の忘年会はなんのためにある?

第2話

会社に新しい人が来るときは期待してしまう

第3話

美人で仕事はできる。でもコミュ力がね

第4話

30代の枯れたオッサンをとりこにしたのは

第 4.5 話 小休憩(1)

物事に変化を与えるのはいつも「人」

第5話

朝礼で増員の発表があって職場の空気が変わる

第6話

自分より若いコが来て40代女性は焦りを感じてる

第7話

結婚願望はある。でも大っぴらには言っていない

第8話

仲が良くても酔っぱらいに向ける視線は厳しい

第9話

これまでの対応は社交辞令だったの?

第10話

本来の性格がわかるとき

第10.5話 小休憩(2)

モテる人っていますよね?

第11話

社内恋愛は避けてきたけど迷ってしまう

第12話

酔っぱらいの相手は大変

第13話

恋愛モードに完全に切り替わった

第14話

恋の作戦スタート!

第15話

勝利するには布石を打つ

第16話

俺の攻略マニュアルは完璧。恋の勝者は

第16.5話 小休憩(3)

会社の忘年会の裏側ではこんなことも

第17話

忘年会がスタートする前からモノゴトは始まっている

第18話

フラれても再挑戦! 諦めないこの男は策士だ

第19話

攻略するために選んだアイテムは「酒」

第20話

大人だから態度には出さない。でも脳内で叫んでいる

第21話

おじさんは若いコが心配だ!

第22話

強気で駒を進め今度こそあのヒトを落としてみせる

第23話

送り狼のピンチに騎士ナイトが参上!

第23.5話 小休憩(4)

オトナたちはどんな恋愛をしているのかな?

第24話

オトナの男の恋

第25話

嫉妬、羨望…。職場でもあること

第26話

「彼女」よりも「パートナー」を探したくなったきっかけ

第27話

人が強くなる瞬間

第28話 【最終話】

パートナーになったら絶対に彼女から引き出したい!



カクヨム
 神無月そぞろ @coinxcastle


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