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【短編小説】夏の終わりに

夏休み最後の日、僕らは動物園に行った。
その帰り道、僕はなんだか夏休みのはじめの頃より高くなった空を見上げた。

「あーあ。夏が終わっちゃったね」

僕がそう言うと、ダイキ君は
「秋はチーターだからね」と呟いた。

「チーター?」聞き返した僕の声が裏返った。

「ぼーとしてるとすぐに目の前を走り去っちゃうよ」

僕は今日動物園で見た、今にも走り出しそうな姿をしているチーターを思い出した。

「そしたら甘い蜜たっぷりの美味しい焼き芋も、見たこともないような紅い葉っぱも、まんまるお月様と歩く夜の散歩も、逃しちゃうぞっ」

ダイキ君はニカっと笑った。

「逃しちゃうぞー」

そう叫びながらダイキ君は走り出した。

「わー」

僕も叫びながら走った。全力で走った。
秋に追い抜かされないように。

かき氷を食べて、花火やお祭りに行き楽しかった夏。

そうだ。たくさんの思い出を、今度は秋に作ろう。

冬がやって来た時に、秋が恋しくなっちゃうくらい。


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