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重たさ

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なんで生きてるんですか
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#掌編小説

破壊

破壊

 愛は劇物です。分量を間違えたら取り返しがつかなくなる。公園のひまわりはみんないじけたみたいに俯いて、暗く、悲しい陰のところで咲いております。
 二月にわたしは身籠りました。この子は彼の子。彼は、わたしを好きと云ってくれました。右の目の下の泣きぼくろも、肘のあざも、背中の傷も、彼は綺麗と云ってくれました。
 初めて遊んだ日、彼は真っ白なリネンのシャツを着てやって来た。待ち合わせ場所の黄色いカフェで

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泳ぐ

泳ぐ

実家では臆面もなく放屁できて、それでひと笑い起こせたり、近所の田んぼの中にある墓石がぽつんと建っている景色とか、その周辺の田んぼに波打つ泥の轍とか、雨風に晒されたせいで褪せた〈川で遊ぶと危ないよ〉の看板とか、七年前から変わらない風情に現在の自分の抱えたしがらみや鬱屈を二重写しにして眺めてみた。その映像は今でも変わらない風景の中に溶け込めず、圧迫するような形のない焦りがちくちくと内臓をつつき回す。

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不可解なこと

不可解なこと

 なんで自分ばかりつらかろうと思うと、〈つらいのは君だけでないんだよ〉と答が返されて、
 じゃあなぜ、みんなしてつらい思いして生きてるのと尋ねれば、〈世の中はつらいことばかりじゃないさ〉とかなんとか云って丸めこめにくる。
 結局わからぬままだ、生きる意味も、死んでしまう理由もわからない。
 少しは危険なお茶目もすれば、生きてる意味も尊いだろうかと思えど、とうとうそんな勇気もなく。
 わからずや。

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生活と平穏

生活と平穏

 同級生が捕まった。画面越し、唐突な再会だった。まっさきに浮き出た感情は懐かしさで、その感情に引かれるように、警察車両に乗せられる彼の茶色くなった頭を見ていた。帰宅途中の女子大生を誘拐したのち殺害したらしい。いまいちぴんとこなかった。彼が? まさか。

 彼は明るくて友達の多い、みんなから好かれてるような子だった。彼とは中学の頃からの同級で、担任とも仲がよく、いつも誰かと笑っていた。彼の高い笑い声

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同居

同居

「ねえ果子。今度駅前にカフェができるらしいんだ。一緒に行こうよ」
「嫌。どこにも行くたくない」
 ソファに沈む彼女の声は薄く、どこか浮ついた調子だった。ソファから垂れた彼女の腕は白く、二の腕から肘先ときて手指に至る線がなめらかだ。その中を静脈の青が枝を分けていて、彼女はもう人間とは別の、透き通った神聖な生き物のようにも見える。
 同居を始めてから彼女は部屋から出なくなった。外に出ようと誘っても、日

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化け物

化け物

 茸沢果子がしんだ。先週に起きた誘拐事件の被害者だった。
 彼女とは長い付き合いだった。物静かで髪の短い、一月の雪みたいに肌の白い子だった。好きなものは花と恐竜と靴で、嫌いなものは血の出る映画とトマト、そんな子だった。僕らは六年もの間付き合っていたけれど、結局は退屈な恋愛の果てに別れたのだ。十月のはじめ、切り出した別れ話に彼女は鼻をすすってうなずくだけで、言い終わりに顔を覗いたら、彼女は顔をそむけ

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亡霊

亡霊

 俳優の星野円が自殺した夜、わたしは元彼の部屋でセックスをしていた。外は雨の降るせいで冷えきっていたのに対し、暗く消した部屋の中には熱が篭っていた。
 ほくろの多さも、背中にできたぽちっとしたにきびも、太ももにできたみかんのように丸い火傷の痕も、臆面もなく見せることができた。互いにわらい、繋がり合うことができた。
 愛することは醜さを許すことだ。においも、癖も、性格も、全て受容することだ。ただその

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