いちごなつもも

「うさぴょん」という小説を書いています。 長編小説です。 ぜひ、覗いてみてください。

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「うさぴょん」という小説を書いています。 長編小説です。 ぜひ、覗いてみてください。

記事一覧

〔連載小説〕 うさぴょん ・その91~その157をnoteに投稿し終えて

                 御挨拶     ご無沙汰しております。   「うさぴょん」その91~その157までの投稿を完了することができました。 ここまででいったんの…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その157

その 1 へ  佐々野さんが隣にいる。  やはり佐々野さんは目立っている。たぶん山鉾と同じくらいに、といったら言い過ぎかもしれないけれど、周囲の視線を集めていること…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その156

その 1 へ  だいぶ日が陰ってきた。とはいえまだまだ暑いし、人がいっぱいいるから余計に蒸し蒸しするように感じる。四条通りをうろちょろしていた時にもらったうちわが…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その155

その 1 へ  画面にパトカーが映っている。昔のパトカーだ。サイレンを鳴らしながら高速道路を走っていく。電子式サイレンでなくモーターサイレンというサイレンなのだと…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その154

その 1 へ  今月10日、自身の所有する自動車へ放火したとして末田達吉容疑者(32)が京都府警に逮捕された。  キラキラネームが話題となる昨今において「達吉」なる…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その153

その 1 へ  先生に呼ばれて連れてこられたのは、学校本館の応接室だった。そこには知らない人がいて警察官と紹介されて驚いたし、どういうことなんだろう、どうして自分…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その152

その 1 へ  飯田君を追いかけてみんなで車に近づいていく。  バルサンとか冗談を言っていたつもりだったけれど、間近で見てみると明らかに車内が煙っていた。これはまさ…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その151

その 1 へ  最近、飯田君は警察の車を見なくなったと言っていた。本当にいなくなったのか、巧妙に隠れてしまったのか、どっちなのかよく分からなかったのだが、もしかす…

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その150

その 1 へ  晴れたり曇ったり、という天気だったので今日は思っていたより作業がはかどった。曇ったところで涼しくなるわけではないが、かんかん照りの中で作業するより…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その149

その 1 へ  とりあえず手計算でやる手順を一通り書き出してみた。これをそのままプログラムにできれば完成、ということだけれど、それがなかなか難しい。  若山先生は三…

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その148

その 1 へ  正門のところには、大野先輩が立っていた。僕は小野村さんがついてきているのをちらっとだけ確認してから大野先輩のところに小走りでいった。 「上手くいった…

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その147

その 1 へ 「あのう佐々野さん、引き伸ばしってどれくらい出来そうですか?」 「少しくらいならできそうですけど、あんまり長くなるとちょっと」 「まあそうですよねえ」 …

〔連載小説〕 うさぴょん ・その146

その 1 へ  柴崎君が事故に巻き込まれた、というのはその通りなのだが、正確には事故のために生じた渋滞に巻き込まれている、のだという。まあ、柴崎君が事故に遭ったと…

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その145

その 1 へ  キーボードの裏がなんだか汚れているというのか、ほこりっぽいというのか、とにかく掃除が必要な状態だと判断した。今までにここを拭いた人はいるのだろうか…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その144

その 1 へ  改札を出て佐々野さんと別れた。もわんとした空気の漂う自転車置き場から自転車を出していたらスマホが震えた。佐々野さんからだ。 “パトカーがとまってます…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その143

その 1 へ 「こんなにいい天気やったらちょっとは見えますかねえ?」 「うーん、この辺は難しいんじゃないですか」 「やっぱり山の方とか行かんとあかんかあ」  ピピっと…

〔連載小説〕 うさぴょん ・その91~その157をnoteに投稿し終えて

〔連載小説〕 うさぴょん ・その91~その157をnoteに投稿し終えて

 
               御挨拶
 
 
ご無沙汰しております。
 
「うさぴょん」その91~その157までの投稿を完了することができました。
ここまででいったんの区切りとします。
 
これまで読んでくださった皆様、スキやフォローをしてくださった皆様、
誠にありがとうございます。
 
あらためて読み返してみて、なんだかごちゃごちゃしているな、と自分でも思ったりするわけですが、それでもやっぱ

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その157

〔連載小説〕 うさぴょん ・その157

その 1 へ

 佐々野さんが隣にいる。
 やはり佐々野さんは目立っている。たぶん山鉾と同じくらいに、といったら言い過ぎかもしれないけれど、周囲の視線を集めていることには違いない。でもまあ、大丈夫そうだ。こんなに人がいれば。
 後祭は前祭に比べると規模が小さいということだけれど、それでも十分に大勢の人が見物に来ているし賑わっている。
「おいっ、うさぴょん。飯田はどこ行った? もうすぐ始まるぞ」
 

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その156

〔連載小説〕 うさぴょん ・その156

その 1 へ

 だいぶ日が陰ってきた。とはいえまだまだ暑いし、人がいっぱいいるから余計に蒸し蒸しするように感じる。四条通りをうろちょろしていた時にもらったうちわが大活躍だ。
「宇佐美君、パトカー、パトカー」
 飯田君の指さす先では警無車がサイレンは鳴らさず警光灯だけをつけて通っていく。いつもより明らかにパトカーが多く走っていて、あちこちでしょっちゅう見かける。やはりお祭りだ。
 大型輸送車をいっ

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その155

〔連載小説〕 うさぴょん ・その155

その 1 へ

 画面にパトカーが映っている。昔のパトカーだ。サイレンを鳴らしながら高速道路を走っていく。電子式サイレンでなくモーターサイレンというサイレンなのだという。
 飯田君が見つけてきた動画をスマホで見ている。最近のお気に入りはこれだ。パトカーはもちろんだが、嫌みったらしいナレーションもまたいい。
 軽快な音楽にのって動画は進んでいく。今度は空撮だ。パトカーがまっすぐな高速道路を走っていき

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その154

〔連載小説〕 うさぴょん ・その154

その 1 へ

 今月10日、自身の所有する自動車へ放火したとして末田達吉容疑者(32)が京都府警に逮捕された。
 キラキラネームが話題となる昨今において「達吉」なる古風な名前を持つこの男、実は、未成年者に対して常習的に盗撮を行っていたグループの中心的なメンバーとして警察にマークされており、のちに京都府迷惑行為等防止条例違反の容疑で再逮捕される。
 末田容疑者は京都市内の不動産会社に勤務する傍ら、

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その153

〔連載小説〕 うさぴょん ・その153

その 1 へ

 先生に呼ばれて連れてこられたのは、学校本館の応接室だった。そこには知らない人がいて警察官と紹介されて驚いたし、どういうことなんだろう、どうして自分が呼ばれるのだろうと不安になった。
 刑事さんの前に座らされ、私は女の刑事さんから色々と尋ねられた。そして学校の横の河川敷で「不審な人を見かけたりしたことはありませんか?」と聞かれたとき、そういうことか、とひとつ疑問が解けた。応接室に入

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その152

〔連載小説〕 うさぴょん ・その152

その 1 へ

 飯田君を追いかけてみんなで車に近づいていく。
 バルサンとか冗談を言っていたつもりだったけれど、間近で見てみると明らかに車内が煙っていた。これはまさか。
「ひゃっ」と声を上げた佐々野さんが背中にぶつかってきた。振り返ると同時に、ぴろぴろぴろぴろぴろっ、と大きな音が響く。
「うわっ、盗撮野郎」
 近くに立っていた盗撮野郎がぎょっとした顔でこっちを見てくる。ぱんっ、と破裂するような音

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その151

〔連載小説〕 うさぴょん ・その151

その 1 へ

 最近、飯田君は警察の車を見なくなったと言っていた。本当にいなくなったのか、巧妙に隠れてしまったのか、どっちなのかよく分からなかったのだが、もしかすると、巧妙に隠れていただけで事件自体は解決していなかったのかもしれない。
「あの、佐々野さん、もし危ないと思ったらひとりでも逃げてくださいね」
「はい」
 ふたりで正門を出たところで、今度は大野先輩から連絡が来た。“移動してるぞ。鉢合わ

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その150

〔連載小説〕 うさぴょん ・その150

その 1 へ

 晴れたり曇ったり、という天気だったので今日は思っていたより作業がはかどった。曇ったところで涼しくなるわけではないが、かんかん照りの中で作業するよりはいい。つる巻きはもちろん野菜の手入れもいっぱいできた。近々なすは収穫できそうだ。伏見とうがらしもいい感じになってきている。
 水やりの前に部室や花壇の周りを少し掃いた。最近は柿の実がそんなに落ちなくなっている。このまま全部落ちてしまう

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その149

〔連載小説〕 うさぴょん ・その149

その 1 へ

 とりあえず手計算でやる手順を一通り書き出してみた。これをそのままプログラムにできれば完成、ということだけれど、それがなかなか難しい。
 若山先生は三者面談の合間にちょこちょことコンピュータ室にやってきて課題を出していく。
 素因数分解のプログラムを作るように言われたのだが、for文を散々いじくりまわしたが上手くいかず、ついには嫌になってfor文をやめてwhile文を使ったらあっさ

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その148

〔連載小説〕 うさぴょん ・その148

その 1 へ

 正門のところには、大野先輩が立っていた。僕は小野村さんがついてきているのをちらっとだけ確認してから大野先輩のところに小走りでいった。
「上手くいったんか?」
「あんまり。ちょっとけんかみたいになってるような」
「へえー、でも来てはくれたんやな」
「まあ一応。山室君やらはどこに?」
「ああ、さっきまで拘置所の辺をうろうろしてたけど、なんか向こうの方に行ってしもた」
 小野村さんは怒

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その147

〔連載小説〕 うさぴょん ・その147

その 1 へ

「あのう佐々野さん、引き伸ばしってどれくらい出来そうですか?」
「少しくらいならできそうですけど、あんまり長くなるとちょっと」
「まあそうですよねえ」
 今ならまだ全部なかったことにして引き返すという手もあるのだが、佐々野さんにそのつもりはなさそうだ。山室君からはまだ連絡が来ない。走ってくるなんて、柴崎君の到着はいつになるのだろう。ともかく小野村さんには本当のことを話すしかなさそう

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その146

〔連載小説〕 うさぴょん ・その146

その 1 へ

 柴崎君が事故に巻き込まれた、というのはその通りなのだが、正確には事故のために生じた渋滞に巻き込まれている、のだという。まあ、柴崎君が事故に遭ったということでないならそれはそれで良かったのだが、乗っているバスが全く動かない、と山室君に知らせてきた。
「うわっ、うさぴょん、これ」
 大沢君と一緒にパソコンの画面を見ている大野先輩がせわしなく手招きしてくる。
 画面には、道路をふさぐよ

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その145

〔連載小説〕 うさぴょん ・その145

その 1 へ

 キーボードの裏がなんだか汚れているというのか、ほこりっぽいというのか、とにかく掃除が必要な状態だと判断した。今までにここを拭いた人はいるのだろうか。固く絞った雑巾で丁寧に拭いていく。
「おいっ、うさぴょん、なんか気が散るなあ」
「もおう、図書室かどっか他に行って下さいよ」
「受験生やのに冷たいな」
「受験生はもっと勉強するもんですよ」
「ビラ配りまでやったんやから結末まで付き合わ

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その144

〔連載小説〕 うさぴょん ・その144

その 1 へ

 改札を出て佐々野さんと別れた。もわんとした空気の漂う自転車置き場から自転車を出していたらスマホが震えた。佐々野さんからだ。
“パトカーがとまってます”
 とある。これは見に行かないといけない。僕は佐々野さんが使っている地下鉄の出入口の方に自転車を走らせた。
 佐々野さんが歩道に立っていて、その少し先にパトカーが止まっている。そのまた少し先では黄色と青の制服の人が何かしている。どう

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〔連載小説〕 うさぴょん ・その143

〔連載小説〕 うさぴょん ・その143

その 1 へ

「こんなにいい天気やったらちょっとは見えますかねえ?」
「うーん、この辺は難しいんじゃないですか」
「やっぱり山の方とか行かんとあかんかあ」
 ピピっと、佐々野さんのスマホが鳴った。もう15分が経ったみたいだ。
「ああ暑う」
「本当に」
 つるの誘引作業を中断し、本館の車止めの方に行こうとしたら花壇の側に置いてある銀色のじょうろに気づいた。さっきコンクリートの地面に水を撒いてみたの

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