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アート関係を必死に理解しようとしてレビューするマガジン

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広い意味でのアートをレビューします
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#展覧会

「デ・キリコ」展@東京都美術館

「デ・キリコ」展@東京都美術館

デ・キリコの「形而上絵画」というキーワードを聞くと、半ば条件反射的に埴谷雄高の「形而上文学」を連想する。埴谷雄高は「死霊」において「虚体」というキーワードを提示し、実体のない、存在だけの人間について書いた。
デ・キリコもまた絵画において実体のない本質的ななにかを探し求めたのだろう。

画面の色の話をすると、デ・キリコは郷愁を描いた。それは空の色合いによくあらわれていた。テレンス・マリックの映画でよ

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水木しげるの妖怪 百鬼夜行展 ~お化けたちはこうして生まれた

水木しげるの妖怪 百鬼夜行展 ~お化けたちはこうして生まれた

今回は鬼太郎ではなく、一般的な妖怪にフューチャーした展示になっていた。だから、砂かけ婆やぬりかべ、子泣きじじいといった鬼太郎ファミリーに加わっている妖怪もいたが、あくまでも妖怪カタログのひとりといった扱いだ。

大量に展示されている原画を眺めていると、妖怪によって目の描き方だとか、全体のタッチなどが全然違うことに気づく。デフォルメの強度を調整するのが自由自在だ。
それは妖怪だけでなく、人間の姿も同

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アーティゾン美術館「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」

アーティゾン美術館「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」

展覧会のタイトルにある「ジャム・セッション」とはなんだろうか、と考えていたのだが、おそらくは石橋財団のコレクションに対して、山口晃がアンサーを出すという行為をジャム・セッションと称しているのだと思う。
そして、それはアートに向かい合うとき、観客もアーティストに対して同じことをしているのだ。

「サンサンシオン」というのは、「感覚」を表すフランス語だそうだ。
ここで問われているのは、我々の感覚は、い

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特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」

特別展「日本美術をひも解く―皇室、美の玉手箱」

これはすばらしかった。

藝大美術館はひさしぶりにいった。
こぢんまりとした美術館で、質のいい展示をする印象がある。以前は狩野派の展覧会だったが、これもとてもよかった。

今回は、蒙古襲来絵詞や、春日権現記絵など、すばらしい作品がいくつもあった。
また、平安時代の書物などは、書の美しさだけでなく、紙や装丁も凝ったものが多く、当時は自分が思っていた以上に豊かで、発展していた時代だったのだと知った。

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ボストン美術館展  芸術×力

ボストン美術館展  芸術×力

なかなかよかった。

権力とアートの関係について、さまざまな切り口から紹介していた。
・権力者自身の姿を描いたアート
・所有することで権力を誇示するアート
・権力について描かれたアート
・神の姿を描くことで自らの権力を示すアート
・権力者が自ら所望して描かせたアート
・権力者自身が描いたアート
といったところ。
メディチ家あたりも出てきそうなトピックだけど、今回は出てこなかった。所有作品になかった

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ギイ・ブルダン展

ギイ・ブルダン展

楽しい、というのがしっくりくる。
正統派から、ちょっとずらしたユーモア。
ユルゲン・テラーも影響を受けてるんじゃないかな。
この人の写真をみていると、主役は誰なんだろうと不思議になる。画面に映る美しいモデルだろうか。だけど、そういう写真には、そんな彼女を茶化すような存在がいる。もしくは、靴の広告では、モデルは顔も出さずに壁の穴に上半身を突っ込んでいる。尻が主役かと思いきや、履いているハイヒールが主

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アート:石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか

アート:石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか

石岡瑛子は資生堂のデザイナーとしてキャリアをスタートさせた。アメリカにわたり、ハリウッド映画やオペラのコスチュームデザインなどを手掛けた。

ぼくは資生堂時代の石岡瑛子を知らない。「ドラキュラ」でアカデミー賞を取ったことは知っている。しかし、ひとりのコスチュームデザイナーであって、たとえばH.R.ギーガーなんかもそうだけど、「そういうすごい人がいるんだな」という感じだった。

石岡瑛子の展覧会にい

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アート:
河鍋暁斎の底力

アート: 河鍋暁斎の底力

東京ステーションギャラリーにて。

河鍋暁斎の下絵を展示していた。
河鍋暁斎というと絵日記がおもしろくて好きだ。
今回は下絵が中心だったので、絵日記にも通じるユーモラスな作品が多かった。

全体を通じて感じたのは、リアリティの追求。そして、バランスのとり方のうまさ。躍動感。
どの絵にも動きがある。静止しているポーズでも、人間の骨が、筋肉が、バランスをとっている。本当に絵がうまいのだ。

寺田克也の

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