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文学作品

34
高校生の頃に作ったものを手直ししています。あとは最近の作品です。
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2023年3月の記事一覧

春の風に酔う

春の風に酔う

春の陽気に 誘われて
彼女と出かけた 帰り道
波打ち際は 眩しくて
光の粒が 僕ら包んだ

潮風が髪、なびかせた
波が目元を、明るく照らす
照れた僕見て、笑ってた
そんなひととき、安らぎの時

遠くの雲に 嵐の気配
僕ら手をとり 歩くんだ
砂浜、裸足で 温もり感じた
笑顔に、肩に 愛しさ募る

僕らが誓った 永遠の愛
君は秘かに 不安を抱いた
僕は無邪気に 夢を見ていた
波の間で 恋が揺れてた

完璧な僕の哀歌

完璧な僕の哀歌

僕は完璧な人間だ。世間に気を使うなら、僕は完璧を目指す人間だ。

そんな完璧な僕にも、唯一といっていい弱点がある。意外とお腹が弱い。少々のストレスには平然と対応する。平然といられない時でも、表情は変えない。そんな時に僕のお腹は悲鳴を上げる。社会人2年目の今でも、時々発作のようにそれは僕を襲った。

今日は待ち望んだ部署内のプレゼン発表会だ。準備は大変だったが完璧だ。何度かお腹が辛そうにしていたが乗

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岬にて

岬にて

ここは神奈川県の御崎にある、有名な断崖絶壁の景勝地だ。
ただし有名なのはその景色よりも自殺の名所として、だ。

駐車場近くの公園を過ぎて崖に向かうと、その途中には近隣住民が建てたと思われるプラカードが乱立していた。自殺騒ぎのたびに自宅の価値が下がるのが許せないらしい。
「死ぬなら他所で、やれってか」
苛立ちを覚えた僕は目を背けて足早に崖へと急いだ。

僕は別に死にたくて来た訳じゃない。自殺する奴ら

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海辺にて

海辺にて

「失恋の傷なんて波にでも流してこいよ。」
友人のさり気ない一言を真に受けた僕は、ひとり秋口の海岸に立っていた。
目の前に広がる海は青く澄んで、泳ぐにはもう肌寒く人影もまばらだった。

昨日のやけ酒が残って、胃が苦しい。こういう時、康介は何かと僕に飲ませようとする。酒でココロの傷が癒えるとでも思っているのだろうか。僕はぼろぼろな感情を焚きつけられ、深夜の居酒屋で前日に振られた彼女の名前を連呼した挙げ

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線香花火

線香花火

戯れにただ それだけで
手ぶらで行くのも 気まずくて

その瞳から 悲しみ漏れた
共に暮らした 楽しき日々は

ただ穏やかに 過ぎていた
熱情襲う ボクが壊した

非難、断罪 言って欲しくて
その悲しみを 癒やすなら

何も言わずに 黙って泣いた
弱い背中に 情が残った

失くしてしまった 反省と
取り戻さない 熱情が

弱き心を 締め付けるから
黙って肩を 抱きしめたんだ

ごめんなさいって 言

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真宵の森

真宵の森

久々会った 驚いた
装い髪まで 違ってた
慣れた仕草に 心が和む
夕の宴も そこそこに

迷いの森に 立ち入れば
芥子の匂いが 立ち込めた
湿った風が 首筋を這う
更なる奥を ひた目指す

二人きりだよ 大丈夫
怯えた君の 髪撫でた
宵が更けたね 闇が静まる
耳に残るは 吐息だけ

月が揺れたら 抱きしめようか
貴方が何処へも 行かないように
見失わぬように 失くさぬようにと
寝顔見つめて 夜明け

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夢日記

夢日記

最近、よく夢を見る。
その日の午後には何も覚えていなくて、夢を見ていた、それだけ。何かしら楽しかったような…それ以上の記憶がない。モヤモヤするって、こういうヤツだ。

気になって、ある時恋人に相談した。夢日記を付けるといいって教えてくれた。目覚めたらすぐに夢の記録をつけるのだ…うー、面倒だが仕方ない。
正体の見えない誰かさんと一戦交えるような気分だ。思い出せない数々の夢に悶々とした僕は、夜が楽しみ

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