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不水溶性な日常

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少しのこと、たくさんのこと、いっぱい考えたこと…についてのエッセイ。 あんなことやこんなことを誰かと共有できたらいいなと思っています。
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#ふと思うこと

Negative capability

Negative capability

今朝、ポストに中之島の精霊流しのお知らせが入っていた。
ここ数年お知らせが来ていなかったが、今年はやるのだなと思いながら、
お知らせの表に描かれた洒落たイラストを見て、目と鼻の先だが行こうかどうしようかと迷う。
中之島を流れる堂島川の周辺は、今でこそお洒落なお店やレストランやホテル、美術館などが並び、そこで遊ぶ若い人たちはこの川で昔どんなことがあったのか知る由もないだろう。
私でさえ、年配者からの

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わたくし的、丁寧なくらし

わたくし的、丁寧なくらし

2021.12.20(月曜日) daily life

捨て駒を考える。

『わたくし的、丁寧なくらし』は、SNSや雑誌などで話題のいわゆるお金のかかる『丁寧な暮らし』とは対局にあるのではないかと思う。
流行りの丁寧な暮らしには良い素材の生活用品と良い素材の食材など、そして何より丁寧さをアピールする空間作りなど、お金のかかることばかりだ。
本来の丁寧な暮らしとは、『質素なものでも手をかけて丁寧に心

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リコ と リタ

リコ と リタ

リコとリタ...イタリア人の愛称か?はたまたディズニーの新しいキャラクターか?みたいなタイトルだが、『利己と利他』と漢字で書くとピンとくるだろう。漢字ってこういう時にすごく便利だ。字面を見ただけで「ははぁ〜ん」と納得する。

利己とは、利己主義という言葉でもわかるように自分のことしか考えていないことで、利他とはその正反対で自分を犠牲にしてでも他を助けることをいう。あなたはどちらだ?と問われてもなか

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「ネ」の行方と、「わ」の未来

「ネ」の行方と、「わ」の未来

以前にもたぶん書いている。このnoteだったか以前のブログだったかは忘れたが、確かに書いた記憶がある。「ネ」の行方については誰かの(誰だったかそれも忘れた)のエッセイを読んで、なるほど...と考え込んでそれ以降気をつけて「ネ」の行方を見守っている。

そもそも「ネ」とは何かというと、手紙や文章の語尾に「ネ」とカタカナで書くことを言っている。『頑張りましょうネ』『また会いましょうネ』『すっかり秋らし

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望むのは、未来永劫若いわたし

望むのは、未来永劫若いわたし

「私、もう80歳なんですよ」

その男性はエレベーターの中で私に突然話しかけてきた。その男性のことは顔だけは知っている。時々エレベーターで一緒になったりエントランスで一緒になったりする。その男性に対しては好きでも嫌いでもなくただ同じマンションに住む住人で時々見かける人というだけの感情しか私にはない。たぶん向こうもそうだろう。同じマンションに住むどこかの奥さんって感じなんだろうと思う。

「はぁ..

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だからさぁ、やっぱりワイン通は嫌われる

だからさぁ、やっぱりワイン通は嫌われる

『セレブ気取りですね』『気取ってる感じがします』『なんか上から目線』

インスタグラムのストーリーにその日に飲んだワインを投稿すると、好意的なコメントもあるが、少なからず上記のようなコメントをもらう。セレブ気取りでもなく、気取り屋さんでもなく、上から目線でもないと自分では思っているが、中にはそうは思ってくれない方もいるようだ。以前から思っていたことだが、例えばビールや酎ハイや日本酒などを投稿した時

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時として正義は滑稽さを増幅させる

時として正義は滑稽さを増幅させる

狭い道の十字路で、自転車と自転車が軽くぶつかった。ひとりは若い男子で、もうひとりはおじいさんと呼んでもいいくらいの年配の男性だ。私はちょうどぶつかるところに居合わせてすべてを見ていた。結論から言うと悪いのは年配男性だった。若者は十字路の角に差し掛かった時、一時停止して左右を確認してから再度漕ぎ出した。そこにちょっとスピードを出して突進してきた年配男性とぶつかったのだ。双方倒れるほどではなかったが、

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作家の書いたものは、結局、作家の器を超えない。

作家の書いたものは、結局、作家の器を超えない。

編集者の川治豊成さんによると、文章には体臭のような匂いがあって、読まなくてもその文章を絵を見るようにパラパラと見ただけで面白そうだなとかつまらなそうだなとかがわかるらしい。
でも匂いの好みは人それぞれ。だから絶対的に「これが良い」というものはないのだそうだ。爽やかな匂いが好きな人もいれば、ねっとりとした甘い匂いが好きな人もいる。中には人が嫌がる匂いが好きな変わり者もいるが、それもまたその人の好みだ

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貧乏とは、かくなるもの。

貧乏とは、かくなるもの。

朝起きてキッチンに入ると、ぽわ〜んと文旦のいい香りがする。先日、高知県の方から頂いた。食べる楽しみもあるが、この香りがなくなると思うとなかなか食べきれないでいる。根が貧乏性なのだろう。なくなれば自分で買ってくればいいではないかということになかなか行きつかない。その砲丸投げほどある丸いものを手に取って鼻にくっ付ける。恍惚感が一気に溢れ出す。

食べきれないものは他にもある。深谷のネギだ。ネギの香りも

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ジャンルミックス クライシス

ジャンルミックス クライシス

最近読んだ本の中に「ジャンルミックス」という言葉が出てきた。それは映画について書かれた内容だった。人種も時代も性別も超えて、この人がこんな役を...!!メイクも撮影技術もここまできたか...!!まさにジャンルミックスだと驚いている。というふうな内容だった。しかし著者は見抜く。これは嘘だったのではないかと。

ジャンルミックスというと思い出すのが「コラボ」という言葉。演歌とロックがコラボして新しい歌

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主役のいない日常

主役のいない日常

2021.2.21(日曜日) commonplace activity

曜日の感覚がなくなる。

確か昨日もそうだった。朝テレビをつけたらいつも見ているニュース番組がやってない。何でだ?と思いよく考えてみると今日は土曜日だと思った。そして今朝もそうだった。朝テレビをつけたら見知らぬ誰かが小難しいトークショーをやっていた。あんた誰?と思いよく考えてみると今日は日曜日だった。これも新型コロナのせいな

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うどん屋のゆくえ

うどん屋のゆくえ

少し長い散歩をした。
ここ数年におけるこの街の変化が著しくて、こんなところにこんな店が...とか、あれここにあった店はなくなったのか...とか、変化を感じながら歩く。ほとんどがお洒落な店に変わっていて古くからやっていた店などは数えるほどしか残っていない。今はこの街のグルメ本が出るくらいに発展し賑わっているけれど、長年住んでいる者からすると思い出をちょっとずつ削り取られていくようで寂しくもある。過去

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忘却の潮時

忘却の潮時

母の形見の時計の金具が壊れた。時はちゃんと刻むが腕にはめることはできない。時を刻まない時計も役立たずだが、腕にはめれない腕時計も役立たずだ。誰のせいでもない。時間が経ちすぎたのだ。

これは「もうそろそろ母親の柵から離れなさい」という誰かからのメッセージだと思い、修理には出さないことにする。この時計はクローゼットの中の思い出箱に入れておこう。いつか時を刻むのもやめて静かに眠り続けることだろう。

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酒飲み女のバラッド

酒飲み女のバラッド

大阪のど真ん中に位置する街のある一角に、通称「スペイン横丁」と呼ばれる通りがある。100メートルくらいあるその通りにはスペイン料理を出すバーや屋台がズラーっと並んでいる。そこが私の日々の酒場だ。そこにはだいたいひとりで行く。そしてよほど寒くない限りはの表の席に座り通りを眺めながら飲むのが好きだ。数人でワイワイと飲んでいる人たちもいるが、ひとりで飲んでる客も少なくない。ひとりを好む客のその理由は様々

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