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ひねくれ偏食家の、読書挑戦録

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「流行っているものは読まない」と意地をはってきた、ひねくれ者(偏食もち)が、本を読み、世界を広げて行く過程の記録もろもろ。 他にも、読書や本に関するエッセイ・コラムを集めています
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#買ってよかったもの

「過去型」と「未来型」~三宅香帆さん『バズる文章教室』を読みながら

「過去型」と「未来型」~三宅香帆さん『バズる文章教室』を読みながら

 少し大きめの書店に行くと、必ず足が向いてしまうのが、文章や小説の書き方についての本が集まるコーナーである。つい先日も、なにげなく足を向けたジュンク堂書店で、平置きされていたこの本を見つけてしまった。

 「バズる」…つまりは、ネットなどで爆発的に広まること、認知されること。私自身、文章書きの端くれとして、夢見ても見足りない現象である。

 即座に購入したのは言うまでもない。今日も出勤中の電車の中

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一日に一つ、短編小説を読もう

一日に一つ、短編小説を読もう

 連作短編を書きたい、と思うなら、やはり「短編小説」というものについて、今一度見直したい。

 そう思い立って、本棚を見渡したが、見事なまでに分厚い文庫本ばかりが並んでいる。上下からなる二巻本はざら。四巻からなる深緑の背表紙の本は、宮城谷昌光さんの『楽毅』と『妟子』。

 そして、最近話題になった本、ベストセラーというものが見当たらない。

 単行本は高いから、あまり買いたくない。みんなが買うから

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甘い毒~米沢穂信さん、『儚い羊たちの祝宴』読了(ネタバレなし)

甘い毒~米沢穂信さん、『儚い羊たちの祝宴』読了(ネタバレなし)

 果物を盛り付けた籠か。

 それとも、美しい石を連ねたネックレスかブレスレットか。

 米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』を、例えるならば後者の方が良いかもしれない。

 連作短編という形式を持つのが一つ。

 個々の話は独立して読むこともできるが、「バベルの会」という読書会が透明な糸(テグス)となって、緩やかに繋がっている。

 「バベルの会」とは、夢想家のお嬢様たちが集まる読書サークルだ。

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就活中に読みたかった本

就活中に読みたかった本

 就活中に、あるいは、就活をすると決めた時に、この本に出会えていたならなあ。

 そう思えるのは、それが既に過ぎ去った事だからだ。

 蛙の腹を切り開いて、内臓の位置を確かめるように、「過去」についてなら、心構えさえちゃんと整っていれば、冷静に向き合って、分析することは不可能ではない。

 社会に出て「働く」、ということの意味は何だろう。

 お金のためもあるかもしれない。

 生きていれば、楽し

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