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ひねくれ偏食家の、読書挑戦録

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「流行っているものは読まない」と意地をはってきた、ひねくれ者(偏食もち)が、本を読み、世界を広げて行く過程の記録もろもろ。 他にも、読書や本に関するエッセイ・コラムを集めています
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#ミステリー

徒然読書日記~米澤穂信『本と鍵の季節』

徒然読書日記~米澤穂信『本と鍵の季節』

抱えていた原稿の今日の目標を達成。
朝に、課題をリストアップして、明確に「これを片付ける!」と宣言したのが効いたらしい。
あとは、画像やキャプションを入れて、送るだけだ。

数日前から読んでいた米澤穂信さんの『本と鍵の季節』を読了。
この人の短編は、やはり上手い。一作一作に「暗号ミステリー」や「アリバイ証明」など、異なる趣向が凝らしてある。
だが、『儚い羊たちの祝宴』や『満願』のような薄暗く、ひや

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読書日記~有栖川有栖『双頭の悪魔』

有栖川有栖『双頭の悪魔』を読了。
最初に読んだのはかなり昔だが、犯人と真相の一部は覚えていた。そのため、さりげなく文中に張られた「伏線」を探しながら、読んでいった、と言って良い気がする。
最近、ミステリーを読むときや、ドラマを見るとき、さりげなく書き込まれた「伏線」を探すようにしながら進んでいく、「分析」目的で読むことが多くなっている気がする。
また、解説を読んでいて面白いと思ったのが、今回の登場

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内田康夫『薔薇の殺人』読後録

内田康夫『薔薇の殺人』を読了。
宝塚がからむ話、というあらすじだけは読んで記憶していたが、実際に読んだのは今回が初めて。
犯人の動機は何となく予測していたが、最後の最後になって、真相が少しずれたところにあったとわかる。(この「ずらし」が上手い)
犯人の結末も含め、ほろ苦い読後感が残る。(被害者自身には何の落ち度もないから尚更)
私はやはりガチガチのロジックや、トリックの妙よりも、ドラマ性のある話が

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内田康夫『華の下にて』~降り積もった花弁の下にあるもの

内田康夫『華の下にて』~降り積もった花弁の下にあるもの

ミステリーを意識的に読もう、と思い立って二冊目は再び内田康夫。
華道がテーマと聞いて、なんとなく心惹かれて手に取ったこの『華の下にて』は、氏にとっては百冊目になる作品だそうな。

京都を舞台に、華道の家元の家系にからむある「秘密」をめぐっておきる殺人事件がテーマ。
伝統と革新、男と女、老人と若者。様々な対立がここにからむ。

読み通して見た時の印象は、たとえるなら幾重にも分厚く降り積もった花弁の山

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型の話~内田康夫『終幕のない殺人』を読みながら

サスペンスのシナリオを書くため、ミステリー小説に意識的に触れるようにしたいな、と思っていたので、ここ数日ベッドの中で内田康夫の『終幕のない殺人』の文庫本を読んでいた。
赤川次郎といい、作家さんの初期は「本格」を意識した固めの作品が多い気がする。
この『終幕のない殺人』は、「本格」の中でも古典的作品『そして誰もいなくなった』を下敷きにしているのがよくわかる。

本格ミステリーは、トリックやストーリー

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読書日記~湊かなえ『落日』

湊かなえ『落日』を読了。昨日今日の二日で読んでしまった。
湊かなえといえば、イヤミス。後味が悪い話はどちらかと言うと苦手なのだが、中毒性と言うのだろうか、時々手を伸ばしてしまう。
最後に読んだ彼女の本は、『ブロードキャスト』だったか。こちらは、「イヤミスの女王」という名前から想起されるにしては珍しい、青春小説だった。(一気読みした)

さてこの『落日』は、過去の事件を軸に据えた、新進の映画監督と売

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奥泉光『死神の棋譜』

こんなにも私は物語を求めていた。
自覚したのは、奥泉光の『死神の棋譜』の60ページを過ぎたあたりである。
本を手に取ったのは、『このミス』の最新版がきっかけだった。
美術書の出版に向け、画家とその作品についての原稿を書くことが、ここ2ヶ月の優先事項で、図書館では、700番台の美術書のコーナーをうろついては、一行でも使える箇所がないか、と本を漁っていた。
おかげで、何かの別のものを、と思った時、これ

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甘い毒~米沢穂信さん、『儚い羊たちの祝宴』読了(ネタバレなし)

甘い毒~米沢穂信さん、『儚い羊たちの祝宴』読了(ネタバレなし)

 果物を盛り付けた籠か。

 それとも、美しい石を連ねたネックレスかブレスレットか。

 米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』を、例えるならば後者の方が良いかもしれない。

 連作短編という形式を持つのが一つ。

 個々の話は独立して読むこともできるが、「バベルの会」という読書会が透明な糸(テグス)となって、緩やかに繋がっている。

 「バベルの会」とは、夢想家のお嬢様たちが集まる読書サークルだ。

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