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言葉は身体は心は世界 つまみ食い

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「言葉は身体は心は世界」掲載の各エッセイや対談のつまみ食い、出版から派生した各種企画のお知らせを更新していきます。
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#エッセイ

「言葉は身体は心は世界」の照り返し(3)

「言葉は身体は心は世界」の照り返し(3)

「言葉は身体は心は世界」増訂版発行に際して、これまでこの本に触れてきた方々からの「照り返し」をいただいてご紹介していくシリーズ。
3回目は「数年後こんな風とともに生きていたいな」と思う少しセンパイのすてきな女性二人より。

DJ Emeraldことマキノエリさんは、「聴くセンス」に寄せてプレイリストを作成してくれました。扉絵の裏に記載されているQRコードから聴けるようになっています。
いつも透きと

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「言葉は身体は心は世界」2版増刷のお知らせ / あとがき

「言葉は身体は心は世界」2版増刷のお知らせ / あとがき

2022年5月に発行した「言葉は身体は心は世界」が、ありがたいことに今夏増刷することになりました。
この度発行する第2版(限定200部)は初版掲載内容に加え、西山萌(編集者)と石崎詩織(Chai Apothecary/Scythe)と実施した観覧者参加型の出版記念対談と、著者によるあとがきも収録。今後も増版を重ねるごとに育まれ変化していく本として、より多くの方にお届けする予定です。

発行および実

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バグってる

バグってる

*このエッセイは2022年5月刊行予定の書籍「言葉は身体は心は世界」に収録されています。

ふとした拍子に私は「バグる」。書くことや話すことが本調子でない状態に伴って、多かれ少なかれ身体の状態や物事の受け取り方が迷走する。身体の調子が言語機能に紐づいて、言語機能単体で調子が悪いと見せかけられる時もあれば、言語/情報過多から身体の食あたりを起こしてしまう時もある。まだバグの前後にある要因や、バグって

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聴くセンス

聴くセンス

*このエッセイは2022年5月刊行予定の書籍「言葉は身体は心は世界」に収録されています。

「きみはきっと耳がいいんだろうね。Mって作家知ってる?」

「あの人のすぱっと潔い物言いが好きです」

「あはは。あいつ友達なんだけど、全然本読まないのに文章書けるんだよね。なんでかって人の話を聞いてそれを文筆のネタにしてるから。耳と記憶力がいい。きみと話してるとそれを思い出すんだよなあ」

二十代後半の頃

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色で世界を見る

色で世界を見る

*このエッセイは2022年5月刊行予定の書籍「言葉は身体は心は世界」に収録されています。

画像クレジット:内田涼《interchange #2

美大受験予備校に通っていた高校時代、赤白ギンガムの布の上に置かれた大きなガラスびん、中にはセロリ、周りには木製、白黒の発泡スチロール、というモチーフを描く鉛筆デッサンの課題があった。工業製品と有機物、質感や色を描き分ける狙いがあるこの課題の講評の場で

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何かになろうとする / ほんとうを見る目

何かになろうとする / ほんとうを見る目

*このエッセイは2022年5月刊行予定の書籍「言葉は身体は心は世界」に収録されています。

「あなたはあなたのままでいいから、無理に誰かに何かになろうとしなくていいんだよ」

どこかに所属しきれない不安、何者かにならなければ評価されないと信じた結果の焦燥感、そういう弾けた途端手に粘つきが残る泡みたいなものに盲目に踊らされていた時期、友達がそう声をかけてくれた。自分がすでに持ってるものもろくに見つめ

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帰国子女だから

帰国子女だから

*このエッセイは2022年5月刊行予定の書籍「言葉は身体は心は世界」に収録されています。

「帰国子女だから言うことはっきりしてるんだね」「帰国子女だからもっと強く言えばいいのに」「日本語が訛ってるのは帰国子女だからか」「かっこいい」「すごい」「いいな」

私は2歳半から6歳までニューヨーク州北部、10歳までテキサス州ヒューストン、計7年5ヶ月をアメリカで過ごした。日本に引っ越す(物心がついた時に

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精神的クィアネス

精神的クィアネス

*このエッセイは2022年5月刊行予定の書籍「言葉は身体は心は世界」に収録されています。

同世代のバイセクシャル男性と音楽の話をしていた時、ケイト・ブッシュはあらゆるジャンルや時代、情緒が一緒くたにつまって、歌詞の解釈もその時々によって変化していくから人生折々で触れたくなる大好きな存在だ、と話したことがあった。しばらく考えてから、彼は私のことを「クィアだ」と言った。確かに、いつの間にか私の人生の

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本当の顔がわからない

本当の顔がわからない

*このエッセイは2022年5月末刊行予定の本「言葉は身体は心は世界」に収録予定です。

「きみ、しょっちゅう顔が変わるよね。どれが本当の顔なのか分からないよ」

会社に勤めて二年ほど経った時、何かと気にかけてくださっていた取締役のおじさんに宴席で言われた。当時は化粧の具合の微々たる変化のことだろうと特に気に留めなかったが、最近この言葉をふと思い出し、スマートフォンの写真に記録された自分の顔を八年分

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言葉は身体は心は世界 はじめに

言葉は身体は心は世界 はじめに

この連載は、私が他者からもらった<わたし>に関する言葉を手掛かりに、自分の言葉・身体・心の回路構造[システム]を確認しながら、別の他者へ向けて渡す試みです。

その前に、この本を通して私のことを初めて知る方がほとんどかと思うので、自己紹介をしたいと思います。と言いつつ「自己紹介」ってどこからどこまでを言えばいいのだろう、といつも迷ってしまいます。最低限抑えるポイントといえば名前、肩書き、好きなもの

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