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#読書感想文

読書感想文*白夜

読書感想文*白夜

夢想家の青年の妄想とか云々という、語りつくされた概要は省く。
私はドストエフスキーのオッサンがこの物語で主張したかったことを、私なりに文脈から読み取ってみた。
恐らく、こうだ。

ダチも作れねぇような奴が夜中の街で会って間もない美女と結婚するなんて、単に合法的にエッチしたいだけじゃねぇか。

えーと、気を取り直して書評も書いておこう。

この作品の最後の章『朝』後半で語られる部分が、全体を夢か幻想

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読書感想文*幸せなひとりぼっち

読書感想文*幸せなひとりぼっち

ものすごく頑固で実直、そして死ぬのが下手な爺が、隣に越してきた朗らかなイラン人の妊婦とその家族に巻き込まれることで徐々に心を開き、自殺を諦める話。

こう単純化して書いてしまうには少しもったいない。
この作品を個人的に気に入った最たるポイントは、リアリティ。
決して運命や偶然で感動を誘わないところが素晴らしい。

映画版の爺の方は笑ったり子どもをあやしたりといったシーンがあるけれど、小説版では、感

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読書感想文*オリーブ・キタリッジの生活

読書感想文*オリーブ・キタリッジの生活

オリーブ・キタリッジという名の女性が住む町の、一見普通に見えるが少しずつ毒のある人々を描いた短編集。

街の住人は他人の不幸な噂話に飢えており、誰かに秘密が漏れれば立ちどころに町中に広がる。

町の住民も悲喜交々だが、家族の関係性の話でもある。

私の母は、オリーブ・キタリッジのような人だ。
ネガティブ思考で皮肉屋。場の空気を悪くする達人。
そんな私もそうかもしれない。

作品全編を通してオリーブ

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読書感想文*旅立つ君へ贈りたい ― 若き詩人への手紙 ―

読書感想文*旅立つ君へ贈りたい ― 若き詩人への手紙 ―

春はお別れの季節。
新しい環境へ旅立ってゆく仲間たちに贈っても良いかもしれない内容だった。
何より、私が一番励まされた。

概要は以下のとおり。

・自分の承認欲求のために詩を書かないこと。
・格好つけずありのままの自分の心のありようを書くこと。
・『無難』に逃げず、オリジナリティを追求すること。
・孤独を恐れず自らを見つめ、書かずにいられない気持ちを大切にすること。
・心の中の未解決な問いに性急

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読書感想文*アンナ・カレーニナという名のメンヘラ不倫女

読書感想文*アンナ・カレーニナという名のメンヘラ不倫女

ロシアの文豪トルストイが書く小説は小難しいかと思いきや、リョービンという名の登場人物が笑えるキャラとして描かれており、主役のアンナよりも好きになってしまった。

これは読んでもらった方が面白さが伝わるのだが、リョービンの恋愛話に始まり、失恋、身近な生と死、政治的な係り、社交界での振る舞い、至る所で天然を発揮するのである。

表題のアンナという夫人による若いイケメン将校との不倫恋愛は、突き詰めれば自

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ウィリアム・トレバーという作家とアイルランド

ウィリアム・トレバーという作家とアイルランド

先日読了した小説『密会』 から派生して、アイルランドの歴史に興味を持ち、入手した歴史本に目をとおしてみたところ、思った以上に味わい深い作品だったのだと気づいた。

図説 ケルトの歴史: 文化・美術・神話をよむ という本で少しは予備知識を得ていたが、全体を捉えるには情報不足だった。

アイルランドは、イギリスのガキ大将に搾取されている歴史が垣間見え、政治的、宗教的な理由による生活のあらゆるパラドック

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読書感想文『密会』

読書感想文『密会』

初めて ウィリアム・トレバー の作品を読んだ。
この作家の作品はスルメみたいで、噛めば噛むほど味が出る。
全編2度読みして何かしら浮き出てくるものがあった。
特に、アイルランドとイギリスの時代的背景を知っていると、さらに奥行きが出てくるはず。

収録作品は12作品。
気に入った作品をピックアップして感想を書こうと思う。

01. 死者とともに
02. 伝統
03. ジャスティーナの神父
04. 夜

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読書感想文『肉体の悪魔』

読書感想文『肉体の悪魔』

肉体の悪魔(新潮文庫)

Amazonさんにお勧めされるがまま、タイトルにまんまと釣られて読んでみたのだが。

このnoteの仕様では、冒頭200文字までホーム画面に表示されてしまうので、結論を先に書くととてもつまらないことになってしまう。
noteさん、そこはもう少し改善しておくんなまし。

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読書感想文『1ミリの後悔もない、はずがない』

読書感想文『1ミリの後悔もない、はずがない』

この本は、パケ買いした。
表紙の彼の喉ぼとけにヤラレた。
加えて、小説の中に登場する男性の手の表現もまた、ツボだった。

それはさておき、パケ買いしたとはいえ、読み始めたら一気に最後まで読んでしまった。
そのくらいに読ませる力があった。
女のためのR-18文学賞読者賞受賞作というけれど、普通に泣けた。

ベースになっているのは中学生の少女の物語で、彼女に関わる登場人物たちのショートストーリーが少し

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ツルゲーネフ『はつ恋』深読み

ツルゲーネフ『はつ恋』深読み

ネタバレ注意。

あらすじをすっ飛ばして、深読みしたうえでの考察をしみた。
ネタバレになるので、まだ読んでいないという方は読んでからこの記事をご覧になることをお勧めしたい。

■この物語における老婆ザセーキン伯爵夫人の役割生活費のため娘に枕営業させていた説。

いろいろなレビューや感想を見たが、あまり触れられていないのは、ジナイーダとヴラジーミルの父は、いつ、どのようなきっかけで恋に落ちたのか、で

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