かたつむり

春から社会人1年生。 本やアニメ、ドラマで現実逃避行しながらカメラ片手にサウナで整いた…

かたつむり

春から社会人1年生。 本やアニメ、ドラマで現実逃避行しながらカメラ片手にサウナで整いたい人生。

記事一覧

【小説】金蘭の友

「私たち、金蘭の友ね。」 隣に座る可憐な彼女がそう言った。金蘭の意味が分からなくても、その「友」という響きが私の胸を絶えず抉っている。 私はこの春、あの高い丘に…

0〜
割引あり
かたつむり
9か月前
1

【詩】バーバ

リードで引かれたキャンキャンと鳴くいる犬がいる。 バーバは「猫がいるね」と私に言う。 違うよ、犬だよ、と返せば、私の中にたまった水は放たれてすっきりするだろう。 …

かたつむり
11か月前
7

【詩】しあわせの条件

日が当たった私のお腹は暖かい。けれど陰になった私の背中は寒々しい。 しあわせ、てそういうもの。 雨に濡れたくないなら、傘を差せば私は濡れない。けれど、濡れない私…

かたつむり
11か月前
7

【感想と考察】「君たちはどう生きるか」

鑑賞後に残ったのは、寂しさでした。 どうしてそう思ったのか、エンドロールが終わり、辺りが明るくなった時はわかりませんでしたが、確かに寂しいな、と感傷に耽ったので…

かたつむり
11か月前
4

【エッセイ】万灯の光

東京は38度。沖縄よりも暑いらしい。 この猛暑の中、4年ぶりに開催されたお盆祭りへ赴いた。 熱気に項垂れながらも、祭りが行われるお寺へ歩みを進める。 徐々に同じ所…

かたつむり
11か月前
5

【詩】 シール交換

嫌いなのに、気になる ほっといてほしいのに、寂しい いつだって何かと何かの駆引きに揺れる。 私と私がシール交換しているようで。

1

【詩】 言葉の無力

口から出た言葉は 争いを止めることも 命を救うことも 幸せにすることもできない。 それでも 出すことを止めない私はなぜだろう。 銃よりも薬よりもずっと良いもの だか…

4

【詩】 こころのぞうき

いつ止まるかわからない心臓を持っている  止まらないだろうって、死と生を裏と表に感じている頃は、生きることが複雑だった 生は死で、死は生で、止まっていない心臓を…

3

【詩】 命のお洗濯

時々、命のお洗濯をしている 長いこと命を持っていると、汚れやひびが溜まってくるらしい こうなってはうんともすんとも言わない塊と化す 時々爆発したり、水漏れを起こ…

2

【詩】 じゅん

もっと純粋に もっと単純に もう逡巡せずに もう心と体が矛盾せずに そうしたらもっと順調なのに

【小説】 私のエサ

“いっそ消えてしまえばよかったのに” スマートフォンに映し出されたその言葉を、私は飲み込まないように手前で吐き出しながら流し見してゆく。 たかが炎上。 人の顔を…

3

【詩】 愛の餌

愛がたくさんある人には いつも受け取れないほどの愛がやってくる 愛がない人には いつまでたっても愛はやってこない 愛は愛を餌にするから 愛がない人は今日も愛を欲し…

2

写真俳句 #7

まだ食べぬ 惚れたそばから ただ溶ける

4

【詩】 苦虫をつくる

エスカレーターの真ん中に立ってみたり 湯呑みで牛乳を飲むような 頭カチカチのみんなに向けた ちっぽけな私の苦虫

3

【詩】型どるわたし

あなたに染まっていくんじゃない あなたで型どられていくの まだ誰も知らない私を あなたが見つけただけ 私が知っただけ 勘違いしないで はじめから私は私に染まって…

2

【詩】 言葉の幸せ

話したいことを 話したい言語で 話したいときに 話したいひとへ 話せる これを言葉の幸せと呼びます

5
【小説】金蘭の友

【小説】金蘭の友

「私たち、金蘭の友ね。」
隣に座る可憐な彼女がそう言った。金蘭の意味が分からなくても、その「友」という響きが私の胸を絶えず抉っている。

私はこの春、あの高い丘に立つ憧れの高校の制服に袖を通した。
飛ぶたびにふわり、と膨らむ紺色のスカート。白地に空の青さより透き通った水色の大きなリボンが目立つ。何より、はらりと、風なびく大きな襟のセーラー服。
初めてその服を目にしたときは、中学生だった。今までに見

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【詩】バーバ

【詩】バーバ

リードで引かれたキャンキャンと鳴くいる犬がいる。
バーバは「猫がいるね」と私に言う。

違うよ、犬だよ、と返せば、私の中にたまった水は放たれてすっきりするだろう。

そうだね、猫だね、と返せば、私の中に、ひびが入って水が流れ込んでしまうだろう。

だけど、私は「そうだね、猫だね」と返した。

【詩】しあわせの条件

【詩】しあわせの条件

日が当たった私のお腹は暖かい。けれど陰になった私の背中は寒々しい。

しあわせ、てそういうもの。

雨に濡れたくないなら、傘を差せば私は濡れない。けれど、濡れない私の分、傘は濡れる。

しあわせ、てそういうもの。

シーソーに乗ったら私は空に近くなる。けれど君は地面に近くなる。

しあわせ、てそういうもの。

幸せ、て考えものだね。

【感想と考察】「君たちはどう生きるか」

【感想と考察】「君たちはどう生きるか」

鑑賞後に残ったのは、寂しさでした。

どうしてそう思ったのか、エンドロールが終わり、辺りが明るくなった時はわかりませんでしたが、確かに寂しいな、と感傷に耽ったのです。

帰りのバスに揺られながら、SNSでいろんな人の考察やら感想やらを流し読みするうちに、その正体が少し形になったような気がします。

本作は、これまでのジブリ作品との決別である、と思います。

これは、ジブリファンの私としては大変物悲

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【エッセイ】万灯の光

【エッセイ】万灯の光

東京は38度。沖縄よりも暑いらしい。

この猛暑の中、4年ぶりに開催されたお盆祭りへ赴いた。

熱気に項垂れながらも、祭りが行われるお寺へ歩みを進める。

徐々に同じ所を目指す人々が目につき、次第に大きな波となって、お寺へと吸い込まれてゆく。

そんな大きな波の泡の一つが私だと思うと、その流れに身を任せることが、定めのように感じる。だが、私はその流れに乗り切れない。浴衣姿のカップルも、お面を頭に乗

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【詩】 シール交換

【詩】 シール交換

嫌いなのに、気になる

ほっといてほしいのに、寂しい

いつだって何かと何かの駆引きに揺れる。

私と私がシール交換しているようで。

【詩】 言葉の無力

【詩】 言葉の無力

口から出た言葉は

争いを止めることも
命を救うことも
幸せにすることもできない。

それでも
出すことを止めない私はなぜだろう。

銃よりも薬よりもずっと良いもの
だからなのかも。

【詩】 こころのぞうき

【詩】 こころのぞうき

いつ止まるかわからない心臓を持っている 

止まらないだろうって、死と生を裏と表に感じている頃は、生きることが複雑だった

生は死で、死は生で、止まっていない心臓を感じる時は、思ってみないほど素直になったり、まっすぐに生きることができそう

【詩】 命のお洗濯

【詩】 命のお洗濯

時々、命のお洗濯をしている

長いこと命を持っていると、汚れやひびが溜まってくるらしい

こうなってはうんともすんとも言わない塊と化す

時々爆発したり、水漏れを起こすこともあるとかないとか

だから重い腰を上げてお洗濯

やり方はその人次第らしい

お天道様の下に置いてみたり、美味しいご飯をあげたり、一人にしてみたり

あなたはあなたなりに

命のお洗濯

【詩】  じゅん

【詩】 じゅん

もっと純粋に

もっと単純に

もう逡巡せずに

もう心と体が矛盾せずに

そうしたらもっと順調なのに

【小説】 私のエサ

【小説】 私のエサ

“いっそ消えてしまえばよかったのに”

スマートフォンに映し出されたその言葉を、私は飲み込まないように手前で吐き出しながら流し見してゆく。

たかが炎上。

人の顔を見て、話すらできないようなクズがネットをエサ場として人の失態を貪り食っているだけ。

そんなものとは距離を置いて、ちゃんと寝て、ちゃんと食べることが何よりの処方箋。

その通り。まさしくその通り。

だが、それが言えるのは、きちんと人

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【詩】 愛の餌

【詩】 愛の餌

愛がたくさんある人には
いつも受け取れないほどの愛がやってくる

愛がない人には
いつまでたっても愛はやってこない

愛は愛を餌にするから

愛がない人は今日も愛を欲している

【詩】 苦虫をつくる

【詩】 苦虫をつくる

エスカレーターの真ん中に立ってみたり

湯呑みで牛乳を飲むような

頭カチカチのみんなに向けた

ちっぽけな私の苦虫

【詩】型どるわたし

【詩】型どるわたし

あなたに染まっていくんじゃない

あなたで型どられていくの

まだ誰も知らない私を

あなたが見つけただけ

私が知っただけ

勘違いしないで

はじめから私は私に染まっているの

【詩】 言葉の幸せ

【詩】 言葉の幸せ

話したいことを
話したい言語で
話したいときに
話したいひとへ

話せる

これを言葉の幸せと呼びます