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日々のモヤモヤをはきだしたい。ただそれだけ。

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記事一覧

相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話⑦

相続に関する手続きを進める一方で、50年近く借りていた実家の片付けもした。最初に契約を解除する日を決めた。とにかくこの頃は「やらなければ終わらない」と淡々と進め…

anemone
6か月前

相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話⑥

手紙を投函してから連絡が来るのを怖いような気持ちで毎日過ごしていた。もう手紙は着いただろうか、いきなりあんな手紙が届いて不審に思ってないだろうか、そもそも読んで…

anemone
7か月前
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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話⑤

父が亡くなったのは4月下旬。5月に入ってすぐに他に相続人がいることがわかり、司法書士さんにその方の戸籍と附表を取り寄せてもらった。 私はこういうことに疎いので、相…

anemone
10か月前
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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話④

家に着いてから自分の家族には正直に話した。みっともないが報告しないわけにはいかない。家族は相当驚いてくれて、話し甲斐があった。 もらえるものが半分になるのは残念…

anemone
10か月前
5

相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話③

役所が閉まる前に着いた。親切な窓口の人に教えてもらいながら父の戸籍謄本を申請する。番号札を握りしめ「子供はいませんように」とだけ思いながらベンチで待った。 しば…

anemone
11か月前
3

相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話②

父が再婚だったらしいと知った翌日。 1週間の忌引休暇の間にやれることはやってしまおう。まずは銀行だ。窓口の人が丁寧に説明してくれ、戸籍謄本は生まれた時までさかの…

anemone
11か月前
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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話①

どこかで自分の人生はのほほんと終わるのだと、それすら気にしないまま過ぎていくのだと思っていた。 しかし、私の身にも起こったのだ。嘘みたいなほんとの話が。 父が亡…

anemone
1年前
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スペイン語

外国語は何も話せないし、聞き取れない。 英語だって単語をつなぎ合わせるレベルで、もっと言えば日本語も怪しい。オットが中国駐在になった時も帯同するか聞かれて、当時…

anemone
1年前
6

聯想

消毒液のせいで今年は格別に手が荒れる。新しいハンドクリームの蓋をあけて、チューブからにゅっと手の甲に出した時に思わず「あっ」と声が出た。隣の席の高田さんが「どう…

anemone
3年前
3

gentenのバッグ

バッグがパンパンに膨らんでみっともない。そうだ。もう一回り大きいバッグを買おう。せっかくならちゃんとした良い物を。 店員さんに勧められて肩から下げるとおさまりが…

anemone
3年前
3

占い

「白日」を聞くと胸がちくんとする。 ずいぶん昔の話。雑誌やテレビの占いは見ないのに、友達に勧められてみてもらった。折しも聞いてみたいことがあった。 「墓場までも…

anemone
3年前

なぜ泣けないのか

母が亡くなった。 倒れてからしばらく入院していたが意識は戻らずそのまま逝った。 倒れた時も、病院でベッドの傍らにいても、夜中に呼ばれて臨終に立ち会った時も、通夜…

anemone
5年前
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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話⑦

相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話⑦

相続に関する手続きを進める一方で、50年近く借りていた実家の片付けもした。最初に契約を解除する日を決めた。とにかくこの頃は「やらなければ終わらない」と淡々と進めていて、我ながらうまくいっていると思っていた。

まずネットで不用品回収業者を探し、大型家具の処分の見積もりに来てもらう。金髪のお兄さんの底抜けに明るい感じがよくて即決し、作業の日は4人ほどであっという間に運び出してくれた。

大きな家具が

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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話⑥

相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話⑥

手紙を投函してから連絡が来るのを怖いような気持ちで毎日過ごしていた。もう手紙は着いただろうか、いきなりあんな手紙が届いて不審に思ってないだろうか、そもそも読んでくれただろうか。

ところが1週間たっても何の連絡もない。自分ならすぐに連絡するけどな・・・。そう思うと今度は私のことを調べているのではないかという考えが頭をもたげる。エゴサーチをしてみたが、私と同姓同名の方は出てきても、私につながる情報は

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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話⑤

相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話⑤

父が亡くなったのは4月下旬。5月に入ってすぐに他に相続人がいることがわかり、司法書士さんにその方の戸籍と附表を取り寄せてもらった。

私はこういうことに疎いので、相当の理由があれば他人の戸籍を取り寄せることができるのを初めて知った。世の中にはまだまだ知らないことが多い。そして知らなくてよかったこともたくさんあるのだと思った。

相続人の住所と名前から検索をすると、ご自分でご商売をされているらしく、

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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話④

相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話④

家に着いてから自分の家族には正直に話した。みっともないが報告しないわけにはいかない。家族は相当驚いてくれて、話し甲斐があった。
もらえるものが半分になるのは残念だけど、それよりあのおじいちゃんが?!という驚き。「ファミリーヒストリー」を地でいっている。

その夜は相続の手続きについてネットで調べまくり、だいたいのことはわかった。起きがちなトラブルや費用感も掴んだ。気になるのは私の兄という人はどんな

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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話③

役所が閉まる前に着いた。親切な窓口の人に教えてもらいながら父の戸籍謄本を申請する。番号札を握りしめ「子供はいませんように」とだけ思いながらベンチで待った。
しばらくすると番号が呼ばれた。そして私の目の前に出された書類には、先に取った父の戸籍謄本で私の名前があったのと同じ場所に人の名前が載っていた。ビンゴ。

無駄な質問だと思いながら、窓口の人に聞く。
「これって子供ってことですよね?」
「そうです

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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話②

相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話②

父が再婚だったらしいと知った翌日。

1週間の忌引休暇の間にやれることはやってしまおう。まずは銀行だ。窓口の人が丁寧に説明してくれ、戸籍謄本は生まれた時までさかのぼれと言う。すでに年金停止用に取った戸籍謄本を見せると「〇〇市より転籍」とあり、これではだめだと言う。その町は行かれない距離ではないけど面倒だな、と思ったその時だ。

「ごくまれになんですけどね。本当にめったにはないんですけど、ご家族も知

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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話①

相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話①

どこかで自分の人生はのほほんと終わるのだと、それすら気にしないまま過ぎていくのだと思っていた。
しかし、私の身にも起こったのだ。嘘みたいなほんとの話が。

父が亡くなった。母も先立ち、残った私だけでひっそり送るつもりが、葬儀屋さんと話しているうちに普通の葬儀になってしまった。それならばと父の友人とおぼしき人に知らせることにした。

幸いなことに父の携帯はロックがかかっていなかった。この1年の通話履

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スペイン語

外国語は何も話せないし、聞き取れない。
英語だって単語をつなぎ合わせるレベルで、もっと言えば日本語も怪しい。オットが中国駐在になった時も帯同するか聞かれて、当時は現地に日本語学校がないのでご両親の英語力がないと難しいと言われ早々にあきらめた。
それから一念発起して中国語も始めたが、四声をアーアー言ってるうちにオットが帰任してきた。

そんな私がスペイン語に挑戦している。

まず今月からNHKラジオ

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聯想

聯想

消毒液のせいで今年は格別に手が荒れる。新しいハンドクリームの蓋をあけて、チューブからにゅっと手の甲に出した時に思わず「あっ」と声が出た。隣の席の高田さんが「どうしたの?」と聞いてきた。「いや、さっき総務に出した書類、ハンコおすの忘れて出しちゃったと思って」

嘘をついた。この匂い、何度も嗅いだことがある。あの人といつも行くラブホの匂いだ。高田さんは「あとで行くから取ってきてあげるよ」と言ってくれた

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gentenのバッグ

gentenのバッグ

バッグがパンパンに膨らんでみっともない。そうだ。もう一回り大きいバッグを買おう。せっかくならちゃんとした良い物を。

店員さんに勧められて肩から下げるとおさまりがよくてポケットも理想的。このバッグと私、なんだかすごく相性がいい気がする。でも普段使いにはちょっと大きい。もう少し女性らしいほうがいいかな。チャームとかスカーフとか下げるのも邪魔だな。無駄な女心がちょいちょい決断を鈍らせる。

いやいやい

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占い

「白日」を聞くと胸がちくんとする。

ずいぶん昔の話。雑誌やテレビの占いは見ないのに、友達に勧められてみてもらった。折しも聞いてみたいことがあった。

「墓場までもっていかないといけない秘密があって、それが元でトラブルは起きないか?」

先生ははっきり「それはない」と答えてくれた。そして「嘘はばれたら嘘になる。秘密はポケットにしまっておいたらよろしい。右にも左にもポケットはあるでしょう?大事にしま

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なぜ泣けないのか

母が亡くなった。

倒れてからしばらく入院していたが意識は戻らずそのまま逝った。

倒れた時も、病院でベッドの傍らにいても、夜中に呼ばれて臨終に立ち会った時も、通夜も、告別式も、泣かなかった。いまだに涙一粒もこぼれない。

ずっと考えている。

なぜ泣けないのか。

母は教室をやっていて生徒さんやお弟子さんが葬儀にはたくさん来てくださった。しゃくりあげて泣いている人もいた。親戚も泣いていた。父は悲

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