相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話①
どこかで自分の人生はのほほんと終わるのだと、それすら気にしないまま過ぎていくのだと思っていた。
しかし、私の身にも起こったのだ。嘘みたいなほんとの話が。
父が亡くなった。母も先立ち、残った私だけでひっそり送るつもりが、葬儀屋さんと話しているうちに普通の葬儀になってしまった。それならばと父の友人とおぼしき人に知らせることにした。
幸いなことに父の携帯はロックがかかっていなかった。この1年の通話履歴に父と同郷で古い友人の「足立さん」があった。そのまま電話をかけるとすぐに出た。足立さんはすごく驚いて、それから長い昔話が始まった。自分の話ばかりで私は心の中で「足立さんの話が聞きたいんじゃないんだけどな・・・」と思った。それに父のことを「おとなしくてケンカも出来ない奴」と言ったので、少し腹がたった。手元のメモ用紙に意味もない線や丸をぐるぐる書きながら話が終わるのを待っていたその時だった。
「あいつも二度目だったからさ」
ん?何が?
足立さんが「あいつ二度目じゃない。あれ?知らなかった?」と無遠慮に言った。「あー、そうなんですか、知りませんでした」とだけ答えると、口が滑ったと思ったのかようやく電話を切ってくれた。
やれやれ、やっと終わった。それにしても再婚だったなんてね。そんな話は聞いたこともなかった。びっくりしたけど、今さらいいか・・・・
よくなかった。それが全然よくなかった。 ~続く~
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