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相続しようとしたら知らないままでは終わらなかった話④

家に着いてから自分の家族には正直に話した。みっともないが報告しないわけにはいかない。家族は相当驚いてくれて、話し甲斐があった。
もらえるものが半分になるのは残念だけど、それよりあのおじいちゃんが?!という驚き。「ファミリーヒストリー」を地でいっている。

その夜は相続の手続きについてネットで調べまくり、だいたいのことはわかった。起きがちなトラブルや費用感も掴んだ。気になるのは私の兄という人はどんな人なのかということ。戸籍謄本で見た名前は特に変わった名前でもないので、検索しても絞り込めず諦めた。まだ生きてるのかな。変な輩だったらどうしよう。テロテロのシャツに金のネックレスとかじゃなきゃいいな。

トラブルだけは嫌なのと、次々出てくる専門用語に苦手意識が芽生え始め、早々に自力解決は諦め、プロに頼むことにする。知り合いの税理士にとにかく相続に強い司法書士を紹介してくれと頼みこむと、出てきたのはごく普通のおじさんだった。親身でもなく共感もしてくれるわけでもなく、ただ淡々とこなしていく感じだったが、熱くなっている私にはちょうどいい平常感。この先生にお願いしよう。先方の戸籍謄本は任せて、私は両親の謄本と金融機関の残高証明を取り寄せることにする。

まだ見ぬ兄はどんな人なのか。生きているのか、死んでいるのか。どこでどんな暮らしをしているのか。まんじりともせず連絡を待つ。とにかくどんな人かわからないうちは会いたくない。1週間ほどで戸籍の附表が手元に届き、現住所と名前、そして存命であることしかわからなかった。

この頃には粛々と手続きを進めるしかないと腹をくくっていた。父への思いがふつふつと沸いてきたのはもっと後になってからだった。

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