『共消』

「誰よ、あんた!強盗でしょ、そうでしょ!」

恐怖心と包丁を携えて、妻が僕を睨んでくる。

1年前に出現した認知症は、把握できない速さで

進んでいる。僕のことまで解らなくなったとは。

「私には大事な夫がいるんだから。出てって!」

「大丈夫。僕だよ。君の夫だよ」妻へ近づく。

「来ないで。刺すわよ。本気よ」妻が走り出す。
 
包丁が刺さる。痛みよりも、このまま独りになる

妻が不憫でならない。よし、一緒に行くか。

天国でも地獄でも。妻の首を思いっきり絞めた。

    
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