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散文・詩

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#この経験に学べ

【詩】誰も愛したくない

【詩】誰も愛したくない

私は幸せになってはいけない人間だった
うっかり忘れていた
忘れて幸せになろうとしていた

私には幸せになる権利がない
私は人を苦しめた
どうしようもなく愛していたから
私を同じくらい愛して欲しかった

それがあの人を追い詰めた
そして不幸にしてしまった
もう少しで死に追いやるところだった
私たちは別れるしかなくなった

私はまだ一人で生きている
もう誰かと愛し合うことはないと思っていた

でも時が

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【詩】里帰り

【詩】里帰り

オイルストーブのにおいと
大きな木のテーブル
温かい食事
笑い声
それが私の家族の幸せの象徴だった

いつしか私は都会で一人
寒くて暗い小さな部屋で
膝を抱えて
鳴らない着信音を待っているだけの生活

東京に行けば輝かしい未来が
手に入ると思っていた
何もかも違った

私の幸せはどこにあるのだろう
もう小さな子どもじゃないんだ
守られている年齢じゃないんだ
もう自分の足で立たなければ

一度帰った

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【詩】彼の親友

【詩】彼の親友

もうキミと私は
誰かを通した私たちではない
私たち、そのもの

彼と別れても
キミと会える日がくるなんて
思ってもみなかった

でも本当はずっと
私たちにしかない友情が育っていた

彼はいつも
友達も恋人も
周りに置いて楽しみたい人だった

だからキミとも自然に仲よくなった
いつも彼を介して会っていた
その場に偶然いただけの私たち

彼が去って
私たちが残った
キミは彼が残していってくれた
思いが

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【詩】母になった日

【詩】母になった日

横たわる私のもとに連れてこられた
我が子を初めて見た時
想像と違うと思った

友達の子みたいな
親戚の子みたいな
不思議な感覚

手放しでかわいいとか
新生児室に並ぶ赤ちゃんの中で
うちの子が一番かわいいとか
全く思わなかった

9か月一心同体で過ごしたのに
別々の個体になったら
突然ほかの人

外見はどこも似ていない
それでも間違いなく家族で
間違いなく私たちの子

どこか冷めた目で見ていた

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