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おとしもの【#2000字のホラー応募作品②】
「今日はお会いできて本当に嬉しいです。桜木さんのプロフィールを拝見してぜひにと思ったけど、競争率が高そうで半ば諦めてたので……」
桜木美緒は信じられない思いで目の前の男性、榊優一を見つめた。
三十六歳だというが、実際には三十過ぎぐらいにしか見えない。仕立てのいいスーツをきちんと着こなし、落ち着いた物腰と穏やかな笑顔はなかなかの好印象だ。
お決まりのホテルの喫茶店で、榊は手際よく自己紹介をした。
棘 【#2000字のホラー応募作品】
老婦人は飾り棚の上にぽつりと置かれたサボテンの鉢に、深く皺の刻まれた手を伸ばすと、そっと語りかけた。
「もう生きていても仕方がない。おまえを置いていくのを許しておくれ」
――事の起こりは昨今、巷に蔓延る高齢者を狙った詐欺だった。
老婦人は決して不注意な人間ではなかったが、その生来の人の好さが災いしてか、まんまと詐欺グループの企みに引っ掛かり、多くはないが自身の生活を支えるにはまずまずの蓄えを根
7月23日(土)#かとうひろみ真似まつり
この記事は「かとうひろみ真似まつり」の参加日記です。
・きのうの夢。今は働いてないのに、見る夢はだいたい仕事の夢だ。すごく損した気分。
・夢に出てくるのは、なぜか昔苦手だった人たちばかりだ。ついてくんな。
・朝はいつもトースト半分と味噌汁(卵入り)。朝食の珈琲は夫しか飲まない。私はあとから小菓子と一緒にゆっくり飲む。
・朝のストレッチ&筋トレは結構過酷。でも数年前に体を壊してしまった私には必須の
今昔コロツケー奇譚 〈3998字〉第18回坊っちゃん文学賞撃沈作品③
表通りから離れた狭い路地の奥に、その小さな店はあった。
外の看板にはひとまずバーと謳ってあるが、入ってみれば壁中所狭しと品書きが貼ってある店内は、むしろ寿司屋のカウンターに近い。
ポテト・かぼちゃ・クリーム・さつまいも・カレーポテト・餅・チキンライス……
「ねえマスター。俺さ、この店通うようになってから、何だか元気になったみたいだ」
「ほう、そうですか」
客は若い男が一人いるだけだった。中年の
令和青春恋絵巻 〈3997字〉第18回坊っちゃん文学賞撃沈作品①
「はあ……マジで無理……」
紫苑は、ため息まじりに部屋の天井を仰いだ。頭の中に放課後の光景がまざまざと甦る。
「一之瀬さん、隣の席だからって中里君にベタベタしないで。目障りなのよ」
誰もいない教室で、まるで般若のような形相の清原香澄に睨みつけられた紫苑は、才色兼備で名高い香澄の豹変ぶりに言葉を失った。
確かに中里哲哉とは時折会話を交わすこともなくはない。だが顔立ちが良く性格も爽やかな上に、
牙はなくとも 〈12518字〉~某児童文学賞応募作品
「ごめーん、ちょっとまわり見張っててくれる?もうめっちゃノド渇いちゃってさぁ」
突然足元から上ってきたカン高い声に驚いたキリンは、慌てて長い首を下に向けた。
キリンの足の半分の高さにも及ばない小さなインパラが、返事も待たずにさっさとキリンを追い越して目の前の川に向かっていく。キリンは仕方なく足を止めた。次から次へと続く彼女の仲間たちを踏んでしまいそうだったからだ。インパラの群れはそれぞれ川にたど
文字盤のない時計店 〈8090字〉 ~眠気を誘う小説
曲がりくねった路地裏の奥に、その不思議な時計店はありました。
くすんだガラスのはまった古い木の扉をぎいっと押し開けると、チリリンとドアベルが音をたてました。店の中は薄暗く、どことなく埃っぽい匂いが漂っています。表の看板には時計店と謳ってあるものの、とても時計には見えないものばかりが大小様々店中いたるところに置いてあり、天井のランプの灯りがぼんやりとその影を浮かび上がらせていました。
「いらっ