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読書感想

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本の感想や書評を書いた記事です。主に小説について書いています。一部のノウハウや個人的な話は有料にさせていただいています
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#描写

梶井基次郎『檸檬』読書感想

梶井基次郎『檸檬』読書感想

この小説は、青年の傷みやすい心を鮮やかな色彩とともに描いた作品です。

この本について、ネタバレしつつ感想を書いてみたいと思います。

著者の梶井は、1900年代初期に作品を発表した、関西を中心に活動した作家です。現在この作品は高校の教科書などにも載っているらしく、読んだことがある人も多いかもしれません。

この話は、青年である主人公が、理由も不明な焦燥感に駆られ、立ち寄った本屋で積まれた本の上に

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太宰治『水仙』読書感想 

太宰治『水仙』読書感想 

この本は、芸術家志望の資産家の行く末を描いた短編小説です。

資産や資産家に対する、太宰治の考えが分かる作品だと思います。ネタバレ含みつつ考えてみたいと思います。

導入として、太宰が昔読んだ小説の内容が書かれます。ある剣術が得意な殿様が、家来たちと試合をして片っ端から打ち破っていました。

あるとき殿様が庭園を散歩していたところ、変なささやきが庭の暗闇の奥から聞こえたそうです。
「殿様もこのごろ

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江國香織さん『すいかの匂い』『東京タワー』読書感想

江國香織さん『すいかの匂い』『東京タワー』読書感想

江國香織の良さはいくつもありますが、漢字で書きそうな箇所をひらがなにする審美眼が独特なので、それについて書いてみます。江國さんは、絵本作家というキャリアもあるからか、ひらがなに対するこだわりというのか、独特の目線を持っています。

江國さんの小説である『すいかの匂い』の解説には、「江國さんは漢字とひらがなにも独特の選択眼を持っている。(中略) 文章の中での、言葉の力の入れ方を決めるために、江國さん

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遠野遥さん『破局』読書感想

遠野遥さん『破局』読書感想

この本は、どこかで読んだ書評の中の「肉食なのに、乾いている」という表現がしっくりくる内容の、不気味でありつつ、どこかからっとしている本です。この前、遠野さんの『改良』を読み、他の本も読んでみようと思い、『破局』を図書館で借りてきました。すごく整理されたきれいさなので、たぶん本名ではないのだと思いますが、遠野遥という名前もなんだか好みです。何がなのかは不明ですが、遠く遥かに、ってことでしょうか。わた

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