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Design with Nature

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記事一覧

SPUN:地下世界のフロンティア、菌根菌ネットワークをリサーチする

SPUN:地下世界のフロンティア、菌根菌ネットワークをリサーチする

Ryuichi Nambu

はじめに

気候変動や生物多様性の問題にとって植物が重要なアクターであることは周知の事実だが、その土の下に、「菌根菌」という微生物の活躍があることは、まだあまり注目されていない。彼らは植物にとって必要不可欠な養分を土から吸収し、植物と交換している。ほとんどの植物は、菌根菌と共生関係を持っていて、彼らなしではうまく育つことができない。

とある菌根菌は、非常に多くの炭素

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Lo-TEK Design:土着の知恵とデザインが交差する共生の技法に向けて

Lo-TEK Design:土着の知恵とデザインが交差する共生の技法に向けて

Ryuichi Nambu

ACTANT FORESTの活動に多くのインスピレーションを与えてくれている「Lo-TEK(ローテク) Design」という考え方がある。「Lo-TEK」とは、粗野な技術を意味するローテクではなく、土着の人々が昔から継承してきた文化的知恵や実践を意味する。気候変動のリスクに対して、新しいイノベーションが必要だということは誰もが認めるところだが、環境維持に対して優れたア

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「森の縁側」をつくろう:人と森が再生するための拠点

「森の縁側」をつくろう:人と森が再生するための拠点

Architecture by Kakuro Odagi
Text by Rina Horisawa 

家族で団欒したり、腰掛けて月を眺めたり。家族や来客者とのちょっとした休憩スペースとして役立つ縁側。ACTANT FOREST の中にもそんな場所があったらいいな。ないならつくろう、自然とともに。

ということで、人が集い、森の再生を手助けするための拠点、「森の縁側」をつくってみました。縄文時代

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「女性の視点」で森を考える:フェミニスト・フォレスト

「女性の視点」で森を考える:フェミニスト・フォレスト

Rina Horisawa

森を「女性視点」で捉え直すと、森や自然と私たちとの関係はどのように変わるだろうか。ブラジルのアマゾンで森林伐採と戦う女性たちの事例をヒントに、森と人との関わり方をリデザインする視点を探る。

Feminist Forest?黒鳥社のnoteシリーズ〈blkswn NGG Research〉に掲載された「フェミニスト・シティ」に関する記事を読んだ。「女性視点」で都市を見

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人間中心のデザインでいいんでしたっけ?02:クリティカルゾーン展@ZKM 前編

人間中心のデザインでいいんでしたっけ?02:クリティカルゾーン展@ZKM 前編

Ryuichi Nambu

このnoteは「人間中心のデザインでいいんでしたっけ?01:アクタント マッピング キャンバス」という記事の続編です。

今回はドイツで開催されている企画展「クリティカルゾーン:地球的ポリティクスのための観測所」をとりあげる。前回参照したアクター・ネットワーク・セオリーをデザインにつなげる検討を一歩先に進めてみたい。デザインが頼りにしてきた人間中心のアプローチをアップ

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フードフォレスト:森の多様性で食べ物を育てる

フードフォレスト:森の多様性で食べ物を育てる

Takeshi Okahashi

「奇跡のリンゴ」で有名な木村秋則さんの著書で印象的なのが、何年もかけて完全無農薬のリンゴづくりに挑戦したもののうまくいかず、もうこれは命を持ってして償うしかないと思い詰め、山の中に入っていき死に場所を探していたその時に、ロープをかけようとした栗の木の根本の土壌の豊かさに気づくシーンだ。木村さんは、森の土が何をされるわけでもなく豊穣な土壌をつくっていることにインス

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人間中心のデザインでいいんでしたっけ?01:アクタント マッピング キャンバス

人間中心のデザインでいいんでしたっけ?01:アクタント マッピング キャンバス

Ryuichi Nambu

「Design with Nature - デザインと自然をつなぐ」というテーマで進めているACTANT FORESTプロジェクト。これまで「Rewilding」や「Tiny forest」、「ドーナツエコノミー」といったキーワードで、都市生活にとっての自然の役割を再検討してきた。

今回はデザインメソッドやツールの紹介を通して、デザイナー側の試行錯誤に目を向けてみた

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ミヤワキメソッド:だれでも簡単に森をデザインできる?

ミヤワキメソッド:だれでも簡単に森をデザインできる?

Rina Horisawa

気候変動問題に焦点を当てたカルチャー雑誌『Atmos』のニュースレターを読んでいると「Miyawaki Method(ミヤワキメソッド)」 という日本人の名を冠した方式に出会った。調べてみると50年ほど前に日本の生態学者、宮脇昭教授が編み出した森を育てる方法がヨーロッパでカタカナになり、ミヤワキメソッドとして広まっているようだ。ヨーロッパだけでなくインドなどでも、世界

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タイニーフォレスト:みんなでつくる小さな森ムーブメント

タイニーフォレスト:みんなでつくる小さな森ムーブメント

Mai Hashiba

身近なみどりの価値はじめて新型コロナの危機を迎えた今年の春、自宅近くの大型公園はいつも以上に混雑していた。遊具には立ち入り禁止のテープが貼られ、三密を避けるアナウンスが流れ続けていたけれど、外出自粛をきっかけに、多くの人が、自然の心地よさや清々しさを五感で感じられる場所が自分の「身近にあること」の重要性を実感したのだろう。

では、そうした緑地はいま東京のなかにどのくらい

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ウッド・ワイド・ウェブ: 森のコミュニティに参加する

ウッド・ワイド・ウェブ: 森のコミュニティに参加する

Ryuichi Nambu

WWW(ウッド・ワイド・ウェブ)というものをご存知だろうか。木々たちが土の下に隠された通信網をもっていて、実は互いにコミュニケーションをとっているという話だ。

ヒトが頭で考えてつくった社会のしくみだけでは、これからいろいろな不具合が出てくるだろうと感じて、ACTANT FORESTの活動をはじめたものの、自然と向きあうことや、森や植物を扱うということは、理系の専門領

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