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詩の集まりみたいなもの

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詩、詩みたいなものをまとめてみました。
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#春

【詩】 穀雨

【詩】 穀雨

雨が降る

厳かに

気配を滲ませるように…

しとしとと降り続ける雨は

深く渓谷を描写する

新緑は静かにさざめき

ザワザワと色めき立つ

菜種梅雨の治癒

水墨画の世界

一滴の露が

草木の涙を誘い

乾いた大地を潤していく

古き因習を断ち切るかのような

自然のモダン・アートの中で

人々は遠くを見つめ

静々と歩いて行く

雨が降る

唯々厳かに…

【詩】 ため息 

【詩】 ため息 

目が覚める

澄んだ朝の微笑

深く深呼吸したその姿に

見慣れたはずの顔を思い出す。

その記憶は何処からくるものなのか

微睡み続ける頭では

分からない

到底行き着く事は不可能だ

その微笑のみが刻まれた

浅い花の香りがする

ツツジの花が慈悲深く

昨日の残光に包まれる

花達の色はキレイだ

そのように

昨日の欠片が記憶に訴えかける

何もないわけではない

有り過ぎた日常にとらわ

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【詩】 概念

【詩】 概念

春が過ぎていく
眩い太陽 
鮮やかな色彩 
ほのかな香り 
全てが流れていく

目に見える事・もの
全ては存在している
言い換えれば
思い出しているという事でもある

存在が不確かなゆえに
血の通った鼓動に耳を塞いでいた
あの雨音
あの音楽
あのリズム…
気付かないだけだった

春は忘れようとしている
何もなかった事を

全ては何もなかった
それすらも忘れようとしている

四季が移ろうように
ここ

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【詩】 空

【詩】 空

川にかかる橋を見た

川のそばで立ち尽くす木々を見た

人々が橋を渡る

空には何もない

空は冴えわたる青

際限のないその色は

遠慮もなしに

全てを深く包み込む

誰かの仕業なんだろう
ではないと説明がつかない

あの空色は

弱くもなく

強くもなく

主張せず

かといって明確な意思を示す

絶妙な春の配合

その配合は

川にも  橋にも

木々にも  人々にも

得意そうに語りかけ

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【詩】 進む

【詩】 進む

見上げる木には花が咲く

見つめられる事に慣れているのか

可憐に  堂々と

無言で全てを見回す

何を考えているのか
何を試しているのか

森羅万象に睨みをきかす

やがてフワッと花が遊ぶ

君は遊び疲れたのか

可憐に  華麗に

健気に見据える虚空

何を見守るのか

満ちる季節に何を充たすのか

地べたの素肌で見栄を切る

見上げた空に華屑が舞う

見つめた間合いが先なのか

嬉々と  

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【詩的なもの】 移ろい

【詩的なもの】 移ろい

眩しく遍くように
雪が舞いを惜しむ
いたわるように
消え入るように

すすむ時 戻る道
それぞれ違えど
駆けていく
ガランと空は調子良い

静かに
静かに
只々静かに……

抗うことなく
前を向く
あるがままに
なすがままに
時を刻む