マガジンのカバー画像

糸を手にしてから織物ができるまで。

41
日々の仕事風景をすこしづつ切り取って、つづっています。 下絵→図案→紋意匠図→紋図→糸を選ぶ配色→機場で製織→完成! これらの工程で込められている思いや祈りなどに触れてもらえる機… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

伝統的工芸品と、時代の間に思うこと

伝統的工芸品と、時代の間に思うこと

めずらしく、自分の中でもやもやと考え続けていることがある。
いわゆる、「持続可能性」ということばを反すうしているこの頃。

私は京都の地場産業のひとつでもある、西陣織に携わって数年経つ。
2016年から父の下でこの仕事をはじめたので、今年で8年目くらい経つのかしら。

西陣織ははっきり言って斜陽産業となりつつあって、その拠点である京都の西陣エリアでもその機音が少しづつ聞こえなくなっている。

産業

もっとみる
ポラリスに込めた思い、と御朱印帳。

ポラリスに込めた思い、と御朱印帳。

最近はつぶやきが多かったnoteの投稿ですが、もうすぐ春分を迎えようとしている今、少しづつスタートダッシュを切れそうな予感がしてきています。

以前から作ってはいたものの、きちんとご紹介していなかった”ポラリス”(北極星)柄についてやっと記せるまでに自分の内面が整ってきたようですw

京都のことをご存知の方でしたらご周知のことかと思いますが、京都市内は北、東、西側の三方は山に囲まれている盆地という

もっとみる
面白い、西陣織②

面白い、西陣織②

前回書いておりました、以下の記事。

https://note.com/a_butterfly_way/n/ne531aad6fe23

引き続きその「面白さ」をお伝えしていきたいと思います。

②「伝統」と言いながら続けたことで、生まれた工夫の数々がある

日本の伝統的工芸品の一つでもある西陣織ですが、西陣織として名乗るのには、西陣織工業組合に所属してそこで定められた規定を満たす必要があります。

もっとみる
面白い、西陣織。①

面白い、西陣織。①

ちょっとタイトルからして盛ってみました。

私が西陣織に携わるようになったのは、実家の家業が西陣織のデザイン製造卸業をやっているから、
地場産業でもあるので親戚筋に関係者がとても多いからなのですが、
ではなぜ、斜陽産業にもかかわらず、「続けている(続けようとしている)の?」と聞かれたら、それはもう、
「面白いから」
と言う返答が私的に的を得ている気がします。

では、どこが面白いのか、と言うことを

もっとみる
黄道12星座柄ご朱印帳

黄道12星座柄ご朱印帳

2022年夏に受注生産をさせていただきました、黄道12星座柄の御朱印帳。

おかげさまでご好評をいただいておりながら、
"ネットショップやるやる詐欺"状態でしたが、生産体制も調ってまいりましたので、在庫のある分に関しましてはオーダーいただきましたら、2.3日でご発送させていただけます。

なお、在庫がない分に関しましては大変申し訳ありませんが、1週間〜2ヶ月ほどのご猶予をいただけますと幸いです。(

もっとみる
藍生かし直しプロジェクト②

藍生かし直しプロジェクト②

藍生かし直しプロジェクト過程

👇こちらの記事からの続きです。

本藍染め作家・京都芸術大学で教鞭を取られている梅崎由起子先生と、京都芸術大学の学生さんらと私たち西陣織とのコラボ企画・藍生かし直しプロジェクトを進めてきた過程をこちらでは綴りたいと思います。

図案と組織(おり工夫)を考える

2021年11月ごろに学生さんの代表の方が私たちの工房(実家ですがw)にお越しくださいました。

あらか

もっとみる
藍生かし直しプロジェクト①

藍生かし直しプロジェクト①

① プロジェクト概要

②  プロジェクト過程

③ プロジェクト成果発表

① 〜③部構成 となります。3/5日現在、プロジェクト成果発表をされていますので、ご興味ある方は記事末のご案内をご覧ください。

藍生かし直しプロジェクト概要

”藍生かし直しプロジェクト”のお話をいただいたのが、去年の夏頃のことでした。

👇以前書いていた、こちらの記事で帯の制作をさせていたただいた、本藍染め作

もっとみる
工芸品セレクトショップ”&Hmuseum"京都にお越しの際にはぜひお立ち寄りください♪

工芸品セレクトショップ”&Hmuseum"京都にお越しの際にはぜひお立ち寄りください♪

工芸品セレクトショップ”&Hmuseum"オープン

私は京都市生まれ京都市育ちなのですが、京都にはものづくりを生業にしている各種の”職人さん”がとてもたくさんいます。

私自身も地場産業のひとつ、西陣織の仕事に携わっています。

身近な人にも、染色家や竹細工や銀細工や陶芸家や箔押し職人や漆芸家や悉皆屋やなど等。

親戚にも表具師、和裁、京繍、染めや、機屋などがおります。

ちょっと周辺の方のお知

もっとみる
工芸の新しい潮流をみた

工芸の新しい潮流をみた

先日、京都府乙訓郡の”大山崎”に行ってきました。

京都市内の地下には大きな水がめがあり、”おいしい水”もあるので、京都の南のほうには酒造メーカーが多数あります。

大山崎町にもいくつか酒造メーカーがあるのですが、先日行ってきたのは、

『アサヒビール大山崎山荘美術館』

という、JR大山崎駅から徒歩10分くらいの、天王山登り口から山手へとあるいたところに位置する、山の中の美術館です。

今回の目

もっとみる
月で読書

月で読書

今回ご紹介する図柄は、ウサギさんとかえるさんが二人仲良く肩を並べて三日月の上で読書をしているものです。

ウサギさんは月に暮らしているという噂を時々耳にします。

満月の日などに煌々と夜道を照らすまあるい月をみあげてみたら、たしかにウサギが餅つきをしているように見えることもありますね。

キモノや帯などの図案や図柄などにも、ウサギと月とはよく一緒に描かれてきているようにも思えます。

そんなことか

もっとみる
”おもいで織り”第2期分、織りあがりました。

”おもいで織り”第2期分、織りあがりました。

2020年秋から2021年春にかけて行われた、京都精華大学の”コラボレーション演習”という授業内で誕生した”おもいで織り”というサービス。

過去記事👇 よろしければご参照ください。

2021年の7月に京都精華大学と京都リサーチパークとの共催シンポジウムが行われたときに、

コラボレーション演習授業にお声をかけてくださった、国際文化学部の米原有二先生が登壇されていて、”おもいで織り”の出来上が

もっとみる
椿の柄

椿の柄

先日、墨濃淡の図案をパソコンでぽちぽちと描いているのが楽しいということを記事に書いていました。

週があけて本日もまた、新作予定の”椿の柄”の紋意匠図をぽちぽちと描くことにとりくんでいます。

私たちが携わっている西陣織の機は、2400本もの長い経糸のがたてに通っているところへ、約6~10種類ほどの杼(ひ)をつかいわけて、緯糸(よこいと)を通し、ひと櫛ひとくし、筬(おさ)で抑えながら、約34センチ

もっとみる
スミ濃淡を織物でつくる

スミ濃淡を織物でつくる

和紙に墨汁と筆とで描かれる濃淡には、独特の面白さがあるように感じています。

ちまたにはたくさんの画材がありますが、アクリルガッシュやポスターカラーや油絵具などのように、何度も上から色を塗り重ねられる画材とはその質感が全く違います。

”画材”として同じ目的のために存在しているにもかかわらず、その材質の違いが絵そのものの描き方も変えるし、同じような構図で同じような色味をえらんだとしても、全く異なる

もっとみる
表と裏の世界

表と裏の世界

最近は自分たちの”創作”に取れる時間がふえてきていて、少しづつだけれど、織物でやりたいことが形になってきています。

今回は、龍の柄について書いてみます。

私たちの作っている織物は、経糸(たていと)2400本くらいを使用しています。

その2400本をざっくりと4分割して、緯糸(よこいと)をその経糸にからませて表と裏との”2層”の奥行きがある一枚の布へと作り上げていくのです。

【 表の層 】

もっとみる