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透明無題日常劇場

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これは日記。すなわち、透明無題の日常を綴る一個の人間の、魂の軌跡、生命の神秘、宇宙的エロスの三文芝居。
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#透明日記

透明日記「浴衣でアサラト」 2024/08/08

透明日記「浴衣でアサラト」 2024/08/08

快晴。朝、晴れわたる空にポツポツと、若々しい雲が浮かぶ。空が青くて淡い。紫陽花みたいな色で染まる。雲はさわさわと流れていた。流れながら、ゆるくほころび、薄いところが溶けていく。ぽかんと眺め、うらうらとする。うらうらぽかん。

アルコールが少し残っている。顔面のヒフの下の組織がところどころ、ゼラチン状になっているような気がする。朝起きたときはなんとなく、顔の腫れた怪人をイメージしていたが、鏡を見ると

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透明日記「タコ祭り」 2024/08/07

透明日記「タコ祭り」 2024/08/07

市民プールが少ししょっぱい。泳いでいると、底に点々とタコがいた。最近はそうなっているのかと思った。

プールを出ようとするおじいさんが、タコに引き留められていた。心配して見ていると、おじいさんはこちらに笑顔を向け、「いやあ、かわいいもんですわ。」と言った。そういうものかと、頷いた。

プールのあとは、チエミ先生のダンス教室に行く。ネットでヒップホップダンスが初回無料だというので習いに行くと、生徒の

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透明日記「妄想で夜を越える」 2024/08/06

透明日記「妄想で夜を越える」 2024/08/06

夜の一時半ごろ、暑くて、身体中がイライラとささくれ立って、目が覚めた。オカンがリビングで恋愛ドラマを観ていた。

リビングのクーラーで全室冷やすという感じで過ごしてきたため、クーラーの設定に合意が得られないと、オカンかぼくのどちらかが我慢をしないといけない。

暑いから、部屋を冷やそうと言って設定を変え、布団に戻る。すぐにまた、暑いと思って起きる。少ししてから、オカンが設定を戻したらしく、部屋が冷

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透明日記「音楽を聴きに行く」 2024/08/03

透明日記「音楽を聴きに行く」 2024/08/03

昨日の日記。気付いたら八月が四日まで進んでいる。昨日は寝不足だったけど、目が冴えていた。

首、背中、足。全身が痛いなあと思って目が覚めた。注意力は散漫になっていたので、何かをしようということもない。八月に会った人の顔や声が流れたり、見たもの聞いたものが思い出されたりする。

前日の夜から朝にかけ、音楽を聴きに行っていた。序盤はふわふわ揺れてみたりしたものの、あまり乗り切れない。揺れているのにも飽

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透明日記「こぼれた茶の幻覚」 2024/08/01

透明日記「こぼれた茶の幻覚」 2024/08/01

昼、茶を注ぐ。ペットボトルから注がれる茶は、ぼくの左手をすり抜け、コップに注がれていくように見えた。

渋い黄緑の茶が、口元で少しこぼれる。手で口を拭うと、手の平から渋い黄緑の目の玉が湧き出し、床に落ちいく。目の玉は床で、アイスクリームのように溶けはじめた。

溶けた目の玉は舐め取らないといけない。舐め取らないと大変なことになる。どろどろの目の玉を舐めていると、天井から大きな舌先がぶらぶらと揺れる

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透明日記「寝不足」 2024/07/31

透明日記「寝不足」 2024/07/31

昨日遅く寝た。朝はゴミを捨てに一度起き、また眠る。一眠りして起きる。あんまり頭が回らない。じりじりと毛穴から時間だけが抜けていく気がする。命令を待つロボットのように時間が過ぎる。

とりあえず、昨日の日記を読んだり書き足したりした。目の周りに怠いような火照りを感じる。昼ごろに近所のラーメンを食べに行きたくなってシャワーを浴びた。髪を乾かして寝転ぶと漫画を読み出し、ラーメン屋が閉まりそうな時間になる

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透明日記「メガネを外して、ぼんぼりの光を眺める」 2024/07/30

透明日記「メガネを外して、ぼんぼりの光を眺める」 2024/07/30

図書館に行った日の続き。夕方、雨後。

涼しそうなので、川へ散歩に出かける。タバコ、ライター、スマホ、エアポッズ、灰皿がわりの小瓶をポケットに入れると、ポケットが重く、カバンに詰め直して外に出る。

散歩用のごく小さい、肩掛けポーチを探そうかなと思う。散歩用のポーチ、さんぽーちを。

川辺。ぬるい風が吹く。雨の匂いが残っている。南の方に黒い雨雲が見える。夕日は明るめの低い雲に覆われて見えない。西の

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透明日記「図書館で夏休みを感じる」 2024/07/30

透明日記「図書館で夏休みを感じる」 2024/07/30

昨日の日記。長くなったので二つに分ける。

朝起きて、駕籠真太郎の「乱歩アムネシア」を読む。過剰な漫画だった。同じ現象を重ねたときのナンセンスが詰まっている。入れ子的なナンセンス。入れ子を重ねると意味のなさが無限に広がっていい。マトリョーシカの笑い。絵の細かさもあって、驚きと笑いが同時に来る。壮大なアホ。笑えるし、元気が出る。

朝ごはん。納豆に溶き卵をかけ、焼き海苔を千切る。やっぱり、焼き海苔は

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透明日記「日曜日を溝に捨てる」 2024/07/28

透明日記「日曜日を溝に捨てる」 2024/07/28

最近、これから何しよかなと思い、仕事を調べてみたりした。おもしろそうな職種を見つけたが、夏やしなということで、仕事はまだいいかということにした。

他にしたいことを考え、いろいろ考え出す。とりあえず書き出し、次の日に覚えていたことから始めようということにした。

朝起きて、布団に寝転ぶ頭の中で、野の花がどうのこうのと言葉が流れる。そうするうちに、あの春に咲く黄色い花の名前はなんだったかと思う。すん

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透明日記「腹の不調と軽い酩酊」 2024/07/26

透明日記「腹の不調と軽い酩酊」 2024/07/26

便意で目覚める。起きてトイレで排泄姿勢。すみやかな行動を取る。便意はあるが、便が出ない。諦めて寝る。目が覚め、便は出ず、寝る。それから、普通に起きた。

便秘らしい。痔に気を遣って強く力めない。合併症という言葉がよぎる。縁のないように思っていた言葉。急に近づいてきて、人を暗い気持ちにさせる。期限の近い、他人の仕事が回ってきたような気持ち。

朝、牛乳、水、さつまいもの小さな蒸しパン、朝、フルーツグ

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透明日記「鵜が座っていた」 2024/07/25

透明日記「鵜が座っていた」 2024/07/25

朝、25世紀の雲が飛んでいるのかと思った。現実味のないSF映画の雲だった。

小料理が残っているので、食べておきたく、少し米を炊く。小料理は作りすぎてはいけないことを学ぶ。

洗濯をする。とても日差しが強いので、乾いていくさまが見えるような気がする。夏服には、干さなくても乾いているような服もある。

米や洗濯を待つ間に何をしていたのか思い出せない。歌わず、踊らず、本も漫画も読まず、映画も観ていない

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透明日記「変な歌を歌う」 2024/07/24

透明日記「変な歌を歌う」 2024/07/24

生ゴミを捨て忘れた。ベランダでタバコを吸うと、おれを責めるメロディーがどこからか聞こえる。耳慣れた週二の朝の日常。もう二度と戻らないゴミ収集車。メロディーだけは近づいたり離れたり。実体のないゴミ収集車が町をうろつく。

朝起きて、トイレに入ったときには、ゴミ捨てやなと思っていた。トイレから出て顔を洗うと、ご飯を食べようと思い立ち、ゴミ捨てはどこかに消えていた。

ご飯を食べながら、皮膚科医の新・ア

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透明日記「肛門物語と小料理道楽」 2024/07/22

透明日記「肛門物語と小料理道楽」 2024/07/22

月曜の日記。恥ずかしいような尾籠な日記。ここに載せるのを迷っていたが、書いていたので、ここに載せる。

ベランダに来る雀が、いつも以上に口を尖らせて口を開けていた。暑くて苦しそうなその顔を見ると、外に出たくなくなる。タバコを吸うぼくを呼ぶその声は、イライラとして、トゲがあった。

最近よく来るようになった、尾羽の立った雀だ。個体として識別できる二羽目の雀。腹の黒ずんだ、もう一羽の方が、待つときは静

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透明日記「映画と漫画と小説と筆ペンと」 2024/07/21

透明日記「映画と漫画と小説と筆ペンと」 2024/07/21

昨日寝る前に『ミッドサマー』というホラー映画を少し観はじめ、朝に最後まで観た。

めちゃくちゃ独特なホラーだった。スウェーデンのコミューン、みんな家族とか言ってる閉鎖的な宗教集団の夏至祭が舞台。白夜でずっと明るい。自然豊かなオーガニックな暮らしの中で、部外者が生け贄に捧げられていく。麻薬による幻覚で画面が揺らぎ、声も音も村人の前衛的な身動きも、端々で揺らぎとうねりが見られる。視覚的にも聴覚的にも幻

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