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透明日記「鵜が座っていた」 2024/07/25

朝、25世紀の雲が飛んでいるのかと思った。現実味のないSF映画の雲だった。

小料理が残っているので、食べておきたく、少し米を炊く。小料理は作りすぎてはいけないことを学ぶ。

洗濯をする。とても日差しが強いので、乾いていくさまが見えるような気がする。夏服には、干さなくても乾いているような服もある。

米や洗濯を待つ間に何をしていたのか思い出せない。歌わず、踊らず、本も漫画も読まず、映画も観ていない。死んでいたのかもしれない。あ、お片付けをしていた。部屋が広く感じる。

落ち着くと、『マミー』を観た。カナダでADHDの子供と生活するシングルマザー。悲しい映画。正方形の小さめの画面がすごくいい。生を詰め込んだようなシーンがあって、儚くて泣ける。母、カッコいい。子、かわいい。胸、張り裂ける。

美容院を予約して、本を読み、美容院へ行く。

美容院は静かだった。店長不在で客もまばらで、気楽な一日っぽい。やたら丁寧な美容師。細かく作業する。バリカンの刃を何回も替えていた。みみっちく、ハサミをチョキチョキ、髪を粉に変えていく。眠くなった。

髪型チェックでメガネを掛ける。髪型よりも、額についた大量の毛クズが気になる。額が黒ずんでいた。非常に具合が悪そうな異星人。

洗髪。男の太い指は力強く、安定感がある。シャンプーとリンスの後、よく分からない頭皮マッサージが続く。こめかみを抑えられ、脳みそが揺れる。めまいに遊ぶ子供の気分。

洗髪のあと、微調整。薄っすら怪しいなと思っていたが、メガネを掛けると、変な髪型にセットされていた。知らない髪型で、おもろいので、そのまま美容院を出る。セットは大体ヘンになる。

カフェに行く。小説を読もうと思っていたが、現代文化論の本が入っていた。仕方ないので、読む。限界芸術という言葉に出会う。ふと、テーブルを眺める。

ガムシロップのゴミは、小さな便器。糖尿病のネズミの便器。ねっとりとした水滴が便器の縁についている。

頭の中で、二匹の蚊が仲良く飛ぶ。同じところをぐるぐるぐるぐる。三次元の難しい軌道の中で、雑談を楽しんでいる。

アイスコーヒーってやらしいね。そうだね、やらしいね。あんなに汗を流してさ。コーフンしてるんじゃないかな。氷の表面もてろてろしててさ。やらしいね。グラスの底が分厚くて、アイスコーヒーがもっこりしてるよ。やらしいね。そうだね、やらしいね。もっこりしてる先っちょにストローなんか差してさ、男や女がちゅうちゅう吸うんだよ。やらしいね。人間は品がないね。人間はアレが好きらしいよ。苦くていいって言うんだよ。ああやだやだ、やらしいね。血ぃ、吸っちゃおうよ。そうだね、血ぃ吸っちゃおう。人間がいいのは血ぃだけだね。そうだね、血ぃだけだね。あ、この人、血ぃ、まずいね。なんか、やらしいね。そうだね、やらしい味だね。

カフェを出て散歩。薄曇りで風があり、歩きやすい。中洲に鵜が三羽、暇を潰しているのがよかった。一羽の鵜は、お腹を地面につけて鴨の形で休んでいた。その姿が可愛すぎて、鼻息が漏れた。鵜は立っていることが多いので意外性もある。ちらっと見るだけで、ああ、と胸が撃たれる。凝視できない。可愛さの弾丸が飛んでくる。

帰りに、サンガリアのひやしあめを買う。帰宅して飲む。子供の頃の情景を思い出す。ノスタルジー飲料水。

映画の続きを観る。遅めの昼飯で、米を食う。筆ペンで遊び、晩御飯に麻婆豆腐を食う。たぶん、今日も寝る。

何色物語
夏の行き先
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