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2023年12月の記事一覧
イヴの涙 (短編小説 2)
どれくらい時間が経ったのか、我に返り辺りを見回す。
いったいどこから溢れてくるのか、イルミネーションを見物する人々で、相変わらず通りは混み合っている。
しばらく地べたに座り込んでいたことに、美里は羞恥心を覚えた。まだ、痺れが残る腰をさすりながら
ゆっくりと立ち上がる。
そして、イルミネーションとカップルから目を逸らし、駅の方角へと歩き出した。
アパートに帰宅すると、すぐさまヒーターの前に座り込み
イヴの涙 (短編小説 1)
今、けやき並木が一斉に光を放った
ハッとして、立ち止まる。
イルミネーションの点灯の瞬間は、さながら魔法のようだ。
すっかり落葉したけやきが黄金色の発光体と化し、美里は一時目を奪われた。
イルミネーションを見上げている周囲の人々の顔が、黄金色に染まっている。
皆、一様に幸せそうな表情に見えた。
だけど、美里は憂鬱だった。
勤務先が、けやき並木のある通りの近くだから
帰宅する時は、どうしてもここを