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エッセイのようなもの

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子どもたちのこと、思い出ばなし、自分のことなどなど。
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2023年4月の記事一覧

自分のものさし作成中

自分のものさし作成中

 最近わかった。

 わたしは、「自分」から嫌われたくない。

 なんだか、自分の中にそういう信念みたいなものがあるらしい。はっきりとは、わからないけれど、「これは嫌!」は、なんとなく、わかってきた。

 時々、何かをして、後で、ものすごく気持ち悪くなったり、体調を崩すときがある。どうやら、「自分」らしくなかったから、こうなってしまうらしい。

 ぼやぼやっとした「自分」は、「書く」ことで、ちょっ

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お茶しに行こかっ!

お茶しに行こかっ!

 95才の祖母の手を握る。
 温かく、すべすべで、柔らかい。
 小さな手だなぁ。

 施設の玄関先のベンチで、20分だけ、祖母と面会。母も一緒だ。熱を測り、手を消毒、マスク着用。面会人はふたりまで。

 「ムウちゃん、来たか。」

 「うん」と言いながら、わたしは祖母の手に、小さなおまんじゅうを一個、乗せた。祖母は、おまんじゅうを細かくちぎって、口に運ぶ。

 3年ぶりに会えた祖母は、子どものよう

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ぐんぐんと

ぐんぐんと

 「順調過ぎるなぁ。いや、今までが順調じゃ、なさ過ぎたのかも。」

 息子が笑顔で言う。

 通信制高校に、この春から通い始めた。高校生活が始まって、そろそろ1ヶ月になる。週2日で通うペースが、今の息子にはちょうどいいようだ。

 学校に行く日は、うちを8時前に出発、帰りは14時を過ぎる。自転車、電車を乗り継ぎ、歩きも含めて、1時間ほどの通学時間。授業は3限。帰ってくると、さすがにぐったりとしてい

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草取り日和

草取り日和

 草取りをしている。
 薄曇り。風はそよそよ。草取り日和。

 2、3日前は、日差しが強く、初夏の陽気だった。春がひとっ飛びで、行ってしまいそうで、少し心配していた。このところの夏の暑さ、尋常じゃないと思う。春には、ゆっくりしていてほしい。

 丁寧に、ひとつひとつの草を鎌で刈り、根をなるべく取る。土の中から、虫が出てくる。穴からは、カエルが飛び出してきた。小ぶりなアゲハ蝶が、ひらひらと菜の花の周

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耳雨 (じう)

耳雨 (じう)

 『音のことのは WORDS of SOUNDS』という本を、図書館で借りて、読んでいる。

 音、言葉の響きを世界のあちこちの風景と共に、楽しむことができる。その中で、ふと、目に止まった言葉があった。

 「耳雨」と書いて、「じう」と読む。

 耳の中の雨。経験された方もみえるだろう。耳鳴りのことだ。

 耳鳴りと言うよりも、素敵に感じる。耳鳴りに困った人が、昔にもいて、こんな言葉を生み出したの

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うれしくうれしくうれしい

うれしくうれしくうれしい

 息子の通信制高校、入学式の日。

 息子とともに入学する子は、200人以上。学校には、入りきらないため、別施設のホールで、入学式が執り行われた。保護者の参加は1名のみ。

 これが、わたしが出る、最後の入学式だろう。そう思うと、ふつふつと胸の奥から、湧いてくるものがある。もし、息子がこの先、進学するとしても、わたしは参加しないつもりだ。もう、本人に全てを任せたい。

 校長先生や、来賓の方、保護

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生きとる証拠

生きとる証拠

 バッターン!
 転んだ。豪快に。
 手のひらはかろうじてついた。
 膝に肘も負傷。

 バスケットボールを新調し、調子に乗って、息子と、ワンオブワンをしていたら…

 なんのことはない。動きのイメージと、体の動きがチグハグなのだ。イメージは昔のままだが、それに体がついていけず、転倒。つまり、運動不足ということ。

 座り込んで、両手を眺める。手のひらの擦り傷から血が滲んできた。じんじんとする。わ

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