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エッセイのようなもの

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子どもたちのこと、思い出ばなし、自分のことなどなど。
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これから話そう

これから話そう

 話し下手と思っていた、娘がよく話してくれるようになったのは、最近のこと。今は大学生で、一人暮らし中。

 小さいころの娘は、あまりわたしに話すことがなかった。小学校の様子を訪ねても、「話すことない」との一言だけ。

 だから、娘がどんなふうに過ごしているか、気にはなるが、よくわからなかった。

 娘の同級生のお母さんから、「娘ちゃん、昨日泣いてたみたいね」と様子を聞くことがあって、心配になってき

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『ききみみずきん』

『ききみみずきん』

 まだ、読み聞かせボランティアを始めたばかりの頃、小学校高学年の読み聞かせで、なんの絵本を読んだらいいのか、迷っていた。その時、お仲間のひとりが、「昔話がおすすめ、意外にみんな知らないから」とアドバイスをくれた。

 それからは、積極的に『ききみみずきん』を読むことにしている。みんなにも、このおはなしを知ってもらいたくて。広松由希子さん作、降矢ななさん絵、岩崎書店のものだ。

 今年度から、朝の読

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花束を抱えて

花束を抱えて

 明日は、母の日。
 自分のために、花を買った。

 近所のママ友が、この土日限定で、お花屋さんをしていて、土曜のお昼過ぎに、「よかったらどうぞ」と連絡をもらったのだ。彼女とは一年以上会っていなかった。いつもなら、行くかどうか迷うところだが、その日、わたしは元気いっぱいだった。友人とのおしゃべりで、霧が晴れるように、抱えていたもやもやがなくなった。しかも、友人と、そのママ友は同じお名前。「行ってら

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やる気の出ない日

やる気の出ない日

 五月晴れの日。カーテン越しに、空を見ている。真っ青。きれいだなぁ。

 やる気が出ない。

 昨晩は疲れていたから、すぐに眠りについたが、その後30分ほどで、また目が覚めてしまった。それから眠れず、しょうがないから起き出して、本を読んだ。でも、内容が入ってこなくて、結局読むのをあきらめた。

 何かしようと思うのだができず、ぼんやりとしただけになった。寝たのは3時過ぎ。それからは、夢も見ずに寝ら

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穏やかなとき

穏やかなとき

 夕方。
 息子がギターを弾いて、娘が歌っている。

 夢の中へ
 夢の中へ
 行ってみたいと思いませんかぁ…

 キッチンで、夕飯の支度をしながら、なんとなく、耳を傾ける。歌が終わったようだ。息子、最近はキーボードばかり弾いていたけれど、ギターも覚えてるんだな。娘、「夢の中へ」知ってたんだ。ふぅーん。

 あまり、きこえないが、ボソボソと話す息子の声の合間に、「ふふふ」と笑う娘の声が入る。

 

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ドーナッツにケーキ、お誕生日

ドーナッツにケーキ、お誕生日

 息子の用事で、待機中。駅のパン屋さんで、ツイストドーナッツを見かけて、思わずトレイに乗せる。食べるの、久しぶりだなぁ。

 ツイストドーナッツは、一本のパン生地をくるくるとねじって、油で揚げて、粉砂糖を振ったもの。わたしがうんと小さい頃、母がよく作ってくれた。母の大好物。

 パン生地が膨らむ様子が不思議で、その匂いが好きで、わたしはよくパン生地観察をしていた。冬場は、発酵が進みにくいから、自動

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丁寧に丁寧に

丁寧に丁寧に

↑の続きです。

 3月末になった。散歩を再開して、ぼんやりして、昼寝もできるときはして、過ごす。不安定さが、少し落ち着いてきた。けれど、まだうっかりが多い。うっかりを封じ込めようとして、またうっかりを招く。

 車に乗るのに車の鍵を忘れたり、買い物に行くのに買い物カゴを忘れたり、財布の中が空っぽだったり、携帯電話を家に忘れて出かけたり、用事を忘れそうになったり…

 毎日、こんなうっかりをする自

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ゆっくり休もう

ゆっくり休もう

 春。いつも、わたしは不安定になる。

 3月半ば、うっかりが多発していた。それで、自分がほとほと嫌にもなった。自分が困るだけならいいが、周りにも迷惑をかけるから、その度にかなり落ち込む。

 このままではいけない。まずは、気が済むまで、なるべく、じっとしていた。パートも休みになっていたから、よかった。

 そうして、落ち着いてから、今までを振り返って、よくよく考えてみた。

 このところ、うまく

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読んでいきたい

読んでいきたい

 読み聞かせや朗読をすると、一時、自分とは違う人になれる。子どもにでも、やまんばにでも、昔の人にでも。普段は、言っちゃいけないような言葉も出てきて、最初は戸惑ったけれど、言うとなんだか、すっきりもする。

 わたしの声は、普段は低め。そのため、読み聞かせだと男性役が多くなる。また、よく悪役にもなる。悪役は嫌だなって、思ったこともあるが、今は楽しくできるようになった。だって、普段の生活では、なかなか

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手放せないんだ

手放せないんだ

 キッチンの片付けを終え、ふとリビングをのぞくと、小さな頭がふたつ、仲良く並んでいる。

 4才の娘が1才の息子に、絵本を読んでくれているようだ。

 『まるてん いろてん』

 娘は、文字が読めるわけではなく、わたしが読み聞かせた、そのままを覚えているみたい。息子は、娘の隣におとなしく座って、絵本を見つめている。娘はそれらしく、ページをめくり、読んでいく。

 「いろてん てんてん てん てん 

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痛たたたの川ざらえ

痛たたたの川ざらえ

 田んぼの側溝に入り、泥をスコップですくっては、畔に上げる。水はほとんどない。かなり匂うが、懐かしさもある。

 泥は深いところでは、10センチほど積もっている。思いの外重く、腕と腰を酷使する。花粉症と黄砂のため、マスクを付けているから、息がしづらい。しばらくしたら、額から汗が滴ってきた。

 かえる、オケラにみみず。見つけるたびに、畔にそっと逃す。側溝内に生えている草を取りはらう。ジャンボタニシ

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側にいますよ

側にいますよ

 「くん、おちゃかな、ちゅき」

 小さな息子が、おしゃべりしている。
 「くん」は自分のこと。「おちゃかな」はお魚。「ちゅき」は好き。

 わたしは、「うんうん」と、うなずきながらきく。

 「あーん、ぱくって、たべゆ」

 ふふふ。そうだね…

 手真似も添えて、得意げに、話し続ける息子。それが当たり前だった日を、ふんわりと思い出す。春だからかなぁ。

 そんな息子は、17才。春。どうしても、

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シロバナタンポポに会いに行く

シロバナタンポポに会いに行く

 「いいですよ。見つけたら、教えてくださいね。私も見たいから!」

 そう言われて、ちょっと安心する。門前払いされなくて、まずはよかった。わたしは、名古屋市立大学の構内にいる。「名市大(めいしだい)」と呼ばれる大学だ。守衛さんに許可をいただいたから、これで安心して、見て回れる。建物内には立ち入らないし、用事が終わったら、すぐ帰る旨も伝えた。

 シロバナタンポポを探しに来ている。

 2年ほど前、

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娘とふたりで台湾へ〜4日目最終日〜

娘とふたりで台湾へ〜4日目最終日〜

 2月29日。今日は日本に帰る日。

 朝ご飯をホテルで食べ、荷物をパッキングする。11時にチェックアウト予定。娘、まだ疲れが取れず、もう少し寝ると言う。10時過ぎ、わたしは、ひとりで出かけることにした。もう少しだけ、コンビニで両替をしておきたいし、スーパーでお土産も買いたい。

 「母、くれぐれも気をつけて」娘が言いたいことは、わかる。わたしは、筋金入りの方向音痴。「大丈夫大丈夫」と言って、張り

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