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これから話そう


 話し下手と思っていた、娘がよく話してくれるようになったのは、最近のこと。今は大学生で、一人暮らし中。

 小さいころの娘は、あまりわたしに話すことがなかった。小学校の様子を訪ねても、「話すことない」との一言だけ。

 だから、娘がどんなふうに過ごしているか、気にはなるが、よくわからなかった。

 娘の同級生のお母さんから、「娘ちゃん、昨日泣いてたみたいね」と様子を聞くことがあって、心配になってきいてみても、「泣いてなんかない」の一言だけ。

 それで、難聴持ちのわたし、きき返しが多いからかなと悩んだり、ちょっとさみしくもあったけれど、関わり過ぎないことはできたようだ。娘は幼いころから、自立しているように思う。この子はわたしの元から、早々と飛び出していくだろうなと思っていた。

 娘は、過去を振り返って言う。

 「もやもやと形のなかった感情も言葉にできるようになったみたい。今は、母と話すのが楽しい。」

 そうだったのか。「話さない」のではなく、「話せなかった」んだね。あのとき、わかっていたら…と思いかけ、これでよかったんだと思い直す。

 そういうこと、たくさんあるなぁ。振り返れば、たいしたことじゃなかった。指しゃぶりも自転車に乗れないのも…でも、つい悩むんだよね。自分のことじゃなく、子どものことだから。タイミングが来たのなら、しなくなったり、自然に身につけていくのに…

 娘の話を聞くのが、楽しい。
 離れているから、余計に楽しい。



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