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2023年読書の旅

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記事一覧

読書の記録 12月

読書の記録 12月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

①六人の嘘つきな大学生 浅倉秋成

あらすじ:成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。そ

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読書の記録 11月

読書の記録 11月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

①死者の奢り 大江健三郎

あらすじ:「僕」は大学医学部の事務室に行き、アルコール水槽に保存されている解剖用死体を新しい水槽に移しかえるアルバイトに応募する。アルバイトには、「僕」だけでなく「女子学生」も参加していた。「女子学生」は妊娠しており、子どもを堕ろすための手術料を稼いでいた。しかし「女子学生」は、水槽の中の死体を見

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読書の記録 10月

読書の記録 10月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

①犬のかたちをしているもの 高瀬隼子

彼氏がよそで作った子どもを、その母親である女性から「もらってくれませんか?」と言われるところから展開していく物語。途中から主人公の女性(=薫)に対して「ちゃんと美味しいもの食べてるかなあ」という気持ちが溢れて止まらなかった。日常のいたるところにかなしさとか、緊張感とか、血とか、気持ちが

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読書の記録 9月

読書の記録 9月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

9月

①沼地 芥川龍之介

あらすじ:ある展覧会で気になる作品を見つけた主人公。無名の作家で、とくに人目を集めるような作品ではないが、主人公は妙にこの作品に惹きつけられる。

芸術の本質を端的に描くことが主題であるように感じた。作家が無名か知名かということではなく、見た者・聞いた者が感じたものこそが本質なのだ、と言いたげで

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読書の記録 8月

読書の記録 8月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

8月

①空港にて 村上龍

あらすじ:夫と離婚し、子どもを育てながら風俗で働く「わたし」は、客として来た会社員の「サイトウ」と関係を深めていく。ある願望を抱えた「わたし」は、「サイトウ」にそのことを打ち明け、共に熊本へ行くことになる。

感想:「この物語には希望がある。」
熊本へ向かう空港で「サイトウ」を待つ「わたし」の中

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読書の記録 7月 村田沙耶香2作品を読んで

読書の記録 7月 村田沙耶香2作品を読んで

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

7月

①おろか 村田沙耶香

新潮2023/4月号に掲載された本作。正月、実家に帰省した際に受け取ったある年賀状を発端に女子高生だった頃の苦い思い出が蘇る。こんなありがちなあらすじで始まるのに、これから先は何を書いてもネタバレになってしまいそうなほど、濃密で新鮮な作品。あの衝撃は読んで体験して欲しいので是非図書館ででも雑誌

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読書の記録 6月

読書の記録 6月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

6月

①鮨 岡本かの子

かの子が母親であったこと、かの子の実家が没落して以降かの子が宗教に傾倒していった事実などを踏まえて本作を読むと、湊の語った母親とのエピソードや湊の裕福だった家が潰れるという顛末にはかの子自身の姿が投影されているように感じた。ともよの両親の夫婦関係と湊の両親の夫婦関係が共に芳しくない様子で描かれてい

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読書の記録 5月

読書の記録 5月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

①「二銭銅貨」江戸川乱歩 著者の処女作。タネはやや難しい(読者に推察の余地が無いように思われる)けれども、落語のような登場人物がみな滑稽に感じられるほっこり話。人伝いに聞く、というタレコミ方式の推理は伝統的で、データよりも人を厚く信頼する他ない時代性が色濃く現れている。なるほど賢明な第一推理を笑って流すのは4月分に記載した同

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読書の記録 4月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

4月
①「畜犬談」太宰治
②「D坂の殺人事件」江戸川乱歩

① 太宰治「畜犬談」
短文・長文の絶妙な使い分けと、文中の読点の多用によって生み出される疾走感のあるリズムは読み心地良く、声に出して読めば落語のような小気味の良いものになるのではないかと思った。
 物語については主人公のキャラクターを一文目で読者に分からせる明晰な出

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読書の記録 2月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

2月
①思考の整理学 外山滋比古
②爪と目 藤野可織

①高校入学時にも読んだように記憶するこの本が図書館でふと目に留まり再読することにした。この本は表題通り、思考やアイデアをいかにして整理、時には醸造、貯蓄、応用するかについて書かれた本。人間の思考という抽象的な話題に対して持ち出してくる具体例やアナロジーが秀逸で読んでいて

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読書の記録 3月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

3月
①芥川龍之介「杜子春」
②村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」3部

①伊坂幸太郎が「小説ドリームチーム」と呼ぶ大好きな小説を集めた本「小説の惑星ノーザンブルーベリー篇」の中で、未読だった芥川龍之介の『杜子春』に強く胸を打たれた。
洗礼された文章はそのリズムが究極の領域で、声に出して読むだけで満足感を得られる心地よさ。

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読書の記録 1月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

1月
①村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」1部
②村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」2部

① 2023年1冊目は「ねじまき鳥クロニクル」第1部。久々の読書と多忙で読むのにはいささか時間を食った。昨夏以来に読んだ村上春樹作品は文庫本の中に閉じ込められて出てこられなくなる感覚を思い出させてくれた。本を開けばそこには僕が生きている

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