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読書の記録 5月

読書
2023年は月に二冊ずつ読もう。それで何かしら感想を書き残そう。

「二銭銅貨」江戸川乱歩

 著者の処女作。タネはやや難しい(読者に推察の余地が無いように思われる)けれども、落語のような登場人物がみな滑稽に感じられるほっこり話。人伝いに聞く、というタレコミ方式の推理は伝統的で、データよりも人を厚く信頼する他ない時代性が色濃く現れている。なるほど賢明な第一推理を笑って流すのは4月分に記載した同著者による「D坂」に共通。
一言:お金のない男子大学生が生活を豊かにする名案を力説しているどうしようもない感じ。

②「途上」谷崎潤一郎

 設定といい内容といい無駄のない探偵小説。嘘で固めた供述を真実で正していくことによって人間の愚かさが炙り出されていく、という探偵小説の醍醐味が最短距離で味わえる名作。
一言: 『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造のような、フラッと現れては幸せを奪うような不気味さが漂う。

③「湖畔亭事件」江戸川乱歩

 もう一度記憶を消して読みたい作品。山間の寂しさが全体を支配して厭に奇妙な感を漂わせつつ、全ての情景がかつて自分が実際に見たかのようにありありと想像できる筆致の妙。事件とその真相が暴かれる小説としては一切の無駄がなく、終始物語に釘付けであった。
一言:コナンの映画を一本見たような充実感。描写の細かさ。世界観に入り込める。

④「一枚の切符」江戸川乱歩

 序盤は凡そ読者が予想しうる平凡な展開だが、あまりの平凡さと「一枚の切符」というタイトルによってその後の展開に期待を抱きながら読み進める。明かされたトリックは衝撃的とは言えないが、物語の最終盤で探偵・左右田が語る「その探偵という言葉を、空想家と訂正して呉れ給え。」から始まるおよそ10行は、探偵小説というものの在り方を読者に考えさせる内容で、この物語を凡作に止めなかった要因もこの部分にあると言える。
一言:頭の切れる学生が、ええとこ取り。をしたように見せる話。

蘭に名前を聞かれてとっさに「江戸川コナン」と名乗り…

 コナンの最新映画の面白かったことを友人から伝え聞き、好奇心はなぜかまず、阿笠博士の本棚にあった・江戸川乱歩へと向かった。
 もう一つ江戸川乱歩を手に取った要因として、どこかで読んだ文章に人が論理的な物の考え方を身に付けるには、江戸川乱歩やコナンドイル、ポーの探偵小説にあるような、探偵が論理に則って疑わしい物を虱潰しに調査をしていく、というようなやり方を実践するのが近道だ、という旨の記述あり、そんなアホな、と思う一方で、己でもヤんなっちゃうような感情の論理に勝ることの多きを鎮めたいというそうした内在的興味が、今回のコナンの映画を媒介にしてむくむく顕在化したものと思われる。
果たしてコナンの映画は素晴らしくって。今まで観たコナン映画の中でこんなに感情を揺さぶられたものは無く、群を抜いて面白かった!

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