ひっ、引っ張らないでよね!私の足を!!|カッコいい倒置法入門(4)
テーマ発表!!
第1回、第2回、第3回に引き続き、「カッコいい倒置法」を探究します。
No.19
三葉 それではまいりましょう!
嘉村 はい。
三葉 まずは、「ツンデレキャラが言いそうなセリフの倒置法」です。
嘉村 ほぉ、ツンデレ!
三葉 逢坂大河、御坂美琴、涼宮ハルヒなどなど、お好きなキャラをイメージしていただいて……ハイ、ご覧ください!
三葉 クラスの係、委員会活動、部活動、あるいは修学旅行の班など何でもいいのですが……ツンデレ少女が、好きな男子と共に行動することなる。内心嬉しい。飛び上がって喜びたい。しかし……嗚呼、ツンデレとは面倒くさいものです。彼女は、喜びを素直に表現できない。
嘉村 ふむ。
三葉 かくして彼女は本心を隠し、むしろ刺々しい口調で言うわけですよ「ひっ、引っ張らないでよね!私の足を!!」と。
嘉村 なるほど。
三葉 普通なら「わっ、私の足を引っ張らないでよね!!」となるところですが……それでは面白くない。キツいばかりで、かわいげが感じられません。
嘉村 ふむふむ。
三葉 しかし語順を入れ替え、「ひっ、引っ張らないでよね!私の足を!!」にすると……いかがでしょう?グッとツンデレ感が増しましたよね!少女の恥じらい、どれだけ隠そうとしてもなおにじみ出る喜び……倒置法を利用することで、そういった機微を表現できるようになったと言えるでしょう。
No.20
三葉 次も、「ツンデレキャラが言いそうなセリフの倒置法」です。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールでも、柊かがみでも、戦場ヶ原ひたぎでも、お好きなキャラを思い浮かべていただいて……ハイ、こちら!
三葉 ツンデレキャラとは、素直になれぬものです。
嘉村 ええ。
三葉 ツンツンした態度を取りつつも、本当は好きな人に構ってほしい。気遣ってほしい。世話を焼いてほしい。「○○ちゃんのことばかり気にして……私にも気を配りなさいよね!!」。
嘉村 ふむ。
三葉 しかし、口が曲がってもそんなことは言えません。なぜなら……そう!彼女はツンデレだから!
嘉村 ふむふむ。
三葉 そんな彼女が勇気を振り絞って言うのが、このセリフですね。「私に……くっ、砕きなさいよね!心を!」。「心を砕く」という表現がそもそも聞き慣れぬものです。その上、倒置法!この二重のわかりづらさが、彼女のツンデレ具合を表現していると言えるでしょう。
No.21
三葉 もう1つ、「ツンデレキャラが言いそうなセリフの倒置法」です。高坂桐乃でも、島田美波でも、平沢唯に対する中野梓でも、お好きなキャラを思い浮かべていただいて……どうぞ、ご覧ください!
三葉 繰り返し申し上げますが……ツンデレキャラとは、素直になれぬものです。
嘉村 ええ。
三葉 ましてや好きな人を褒めるなぞ、とてもじゃないができません。そもそも「カッコいい!」「すごい!」「素敵!」なんてことが気軽に言えるようなら、それはツンデレキャラとは言えませんからね。
嘉村 確かに。
三葉 しかし、時には好きな人を褒めねばならぬこともある。そんなシチュエーションには……このセリフ!顔を真っ赤にして、そっぽを向き、そしてボソッと「おっ、捺せばいいんでしょ……太鼓判!!」。
嘉村 なるほど。
三葉 上述のNo.20同様、「太鼓判を捺す」という婉曲的な表現と、倒置法のコンボ……この「素直になれぬ感」こそ、ツンデレ少女らしいセリフだと言えるでしょう!
No.22
三葉 ここからは、少し趣向を変えてみましょう。
嘉村 承知しました。
三葉 すなわち、「スネ夫が言いそうなセリフの倒置法」です。
嘉村 スネ夫……?
三葉 ええ。「ドラえもん」のスネ夫ですね。
嘉村 ふーむ……随分ピンポイントですねぇ。
三葉 それではみなさん、頭にスネ夫を思い浮かべていただいて……ハイ!ご覧ください。
三葉 みなさんご存知の通り、スネ夫はいじめっ子です。
嘉村 ふむ。
三葉 また、これまたみなさんよくご存じだと思いますが……ジャイアンが肉体的な暴力を得意とするのに対して、スネ夫の特技は精神的な攻撃です。例えば、のび太を仲間外れにしたり、高価なものやレアなものを自慢したり。
嘉村 ふむふむ。
三葉 そして、特にマンガ「ドラえもん」の初期に顕著ですが……のび太が泣いたり、悔しがったりすると、彼、じつに嬉しそうな顔をするんですよね。なかなかどうして、サディスティックなキャラと言えるでしょう。
嘉村 あー。
三葉 そんな彼ですからね。言葉遣いにも嗜虐性が現れるはずです。
嘉村 なるほど。
三葉 普通なら「悪いな、のび太。これは3人用なんだ。きみは指をくわえて見てな!!」となるところですが……。
嘉村 ええ。
三葉 ここに倒置法を持ち込む。つまり、「悪いな、のび太。これは3人用なんだ。きみはくわえて……指をね!!」。どうです?サディスティックな笑みを浮かべたスネ夫の顔が目に浮かぶでしょ?「ニタァー」って感じの!
嘉村 確かに。
三葉 つまり……倒置法によって、セリフの嗜虐性が高まったというわけです。
No.23
三葉 次も、「スネ夫が言いそうなセリフの倒置法」です。それではスネ夫を思い浮かべて……ハイ、どうぞ!
三葉 「ドラえもん」に詳しい方には、「㊙スパイ大作戦」というエピソード(第1巻収録)を思い出していただきたいのですが……。
嘉村 ほぉ。
三葉 すなわち……教室を掃除していたのび太が、誤って花瓶を割ってしまう。のび太は顔面蒼白になります。大変だ!先生に叱られてしまう!どうしよう……。そこへ偶然やってきたのは……嗚呼、スネ夫だ!まったく悪い相手に見つかってしまったものです。スネ夫は、じつに嬉しそうに笑った「先生の花瓶だぞ!さぁ、大変だ!メチャクチャ叱られるぞ!」。のび太はショックを受ける。スネ夫はその顔を見て、嗜虐性全開の表情になる。そして言った「黙っていてやろうか?」「えっ!本当に!?」「ただし条件がある。今日から、きみは僕の奴隷だ!」。
嘉村 ははぁ。
三葉 こうしてのび太は、スネ夫にこき使われるようになるのですが……ここから先は実際にマンガを読んでいただくとして。
嘉村 ええ。
三葉 さて、上述の「のび太のミスを目撃したスネ夫が、じつに嬉しそうに『先生の花瓶だぞ!さぁ、大変だ!メチャクチャ叱られるぞ!』と言うシーン」。
嘉村 ふむ。
三葉 「食うぞぉ、大目玉を!!」は、こんな場面にピッタリのセリフだと思うんですよね。
嘉村 なるほど。
三葉 何しろ、倒置法によって嗜虐性が強化されていますからね。スネ夫のドSっぷりを表現するのにドンピシャなセリフと言えるでしょう。
No.24
三葉 それでは、本記事のラストです。「気の強い少女が言いそうなセリフの倒置法」をご覧いただきましょう。
嘉村 ほぉ。
三葉 ズバリ……こちら!
嘉村 「あんたバカァ?」と聞くと、「新世紀エヴァンゲリオン」の惣流・アスカ・ラングレーが思い浮かびますね。
三葉 そうそう、アスカのような鼻っ柱の強い女性のセリフですね。
嘉村 ふむ。
三葉 例えばこんなシーンです。……元恋人が不義理を詫びる「オレが悪かった!お前しかいないんだ。なぁ、頼むよ。やり直そうぜ」。そんな時に、ハイ、このセリフ!「あんたバカァ?盆に返らないのよ……覆水はね!!」。
嘉村 なるほど。
三葉 倒置法を利用することで、相手に対する「怒り」や「攻撃的態度」が表現できるようになったと言えるでしょう。
嘉村 「ツンデレ」から「嗜虐性」、そして「相手に対する怒り」まで、倒置法って万能ですね!
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最後までお読みいただきありがとうございました。みなさんの今後の創作・制作のお役に立てば幸いです。
(担当:三葉)
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