せめて報いるぜ……一矢をよぉぉぉぉぉ!!|カッコいい倒置法入門(3)
テーマ発表!!
第1回、第2回に引き続き、「カッコいい倒置法」を探究します。
No.12
三葉 それではまいりましょう!
嘉村 はい。
三葉 まずは、「華々しく散っていく『主人公の相棒キャラ』が言いそうなセリフの倒置法」です。
嘉村 「華々しく散っていく『主人公の相棒キャラ』」……?
三葉 ええ。主人公の相棒役で、読者・視聴者から主人公以上の人気を得つつも……物語後半に強敵とぶつかり、主人公に想いを託して死んでいく。そんなキャラですね。
嘉村 なるほど。
三葉 例えば、「ジョジョの奇妙な冒険」(第2部「戦闘潮流」)のシーザー。同じく「ジョジョの奇妙な冒険」(第3部「スターダストクルセイダース」)の花京院典明。そして、「北斗の拳」のレイ。
三葉 このあたりが代表格でしょうか。
嘉村 ふむふむ。
三葉 ということで、そんな熱い相棒キャラを頭に思い浮かべてご覧ください。……こちら!
三葉 相棒キャラが敵と対峙する。しかし、相手はただの敵ではありません。例えばワムウ、あるいはDIO、そしてラオウ……つまりは、ラスボスです。
嘉村 ふむ。
三葉 相手は強い。無茶苦茶に強い。さすがの彼も怖気づく。逃げ出してしまいたい気分です。しかし……しかし、引くわけにはいかねぇ!世界を守るためには、愛する人を救うためには、戦うしかねぇんだ!
嘉村 ふむふむ。
三葉 相棒キャラは果敢に戦いを挑みます。だが、現実は残酷なり!彼我の力の差は歴然としている。相棒キャラは、あっという間に追い詰められる。彼に勝ち目はない。最早、死は目前です。チクショウ……チクショウ!そして叫んだ「せめて報いるぜ……一矢をよぉぉぉぉぉ!!」。かくして彼は、最期の力を振り絞る!
嘉村 なるほど。
三葉 まさに涙腺崩壊は必至!感動間違いなしのシーンですが……。
嘉村 ええ。
三葉 そんな大事なシーンにこそ、倒置法ですよね。つまり、相棒キャラのセリフが「せめて一矢を報いるぜぇぇぇぇぇ!!」では、あまりにも凡庸すぎる。読者・視聴者の心に響かないと思うんですよ。
嘉村 確かに。
三葉 それに対して「せめて報いるぜ……一矢をよぉぉぉぉぉ!!」。相棒キャラの不屈の魂、その魂の叫びが聞こえてくるようですよね!
No.13
三葉 次も、「華々しく散っていく『主人公の相棒キャラ』が言いそうなセリフの倒置法」です。どうぞ!
三葉 ラスボスのもとにたどり着くには、誰かが危険を冒さねばならない……そんなシーンをご想像ください。
嘉村 ふむ。
三葉 おそらくは、生きては戻れぬであろう任務。
嘉村 ふむふむ。
三葉 誰にとっても、死は恐ろしいものです。無論、相棒キャラだって怖い。内心ドキドキです。しかし……すべては世界のため。あるいは、愛する人のため。そうだ。ラスボスを倒すのは、オレでなくてもいいんだ。オレたちの中の誰か1人でもラスボスのもとにたどり着けばいい。オレはここで死ぬかもしれねぇが……構わねぇ!オレは希望を次に繋ぐぜ!かくして、彼は言った「オレが拾うぜ!火中の栗をよぉぉぉ!!」。
嘉村 なるほど。
三葉 普通に考えれば、「オレが火中の栗を拾うぜぇぇぇ!!」というセリフになりますが……。
嘉村 ええ。
三葉 それでは、感動が薄れてしまうでしょう。主人公の悲壮な決意、そして彼の尊い犠牲心を表現するには、やはり「オレが拾うぜ!火中の栗をよぉぉぉ!!」でなければ!
嘉村 確かに、グッとドラマティックなセリフになりますね。
No.14
三葉 では、ここからは新しいテーマに移りましょう。
嘉村 はい。
三葉 すなわち……「王道主人公が言いそうなセリフの倒置法」です。
嘉村 王道主人公!
三葉 ええ。当代随一のヒーロー、「ONE PIECE」のルフィ―をご想像ください。
三葉 そもそも「ONE PIECE」には、倒置法を使った有名なセリフがありますよね。……そう、「海賊王におれはなる」です。
三葉 普通なら「おれは海賊王になる」でしょうが、これではインパクトが弱い。
嘉村 ふむ。
三葉 しかし語順を変えると……「海賊王におれはなる」。シンプルながら、印象深いセリフに大変身です。まさに倒置法を活用することで、「シンプル」と「印象深い」を両立させた名セリフと言えるでしょう!
嘉村 なるほど。
三葉 それでは、ルフィ―のような王道主人公を頭に浮かべて……ハイ、ご覧ください!
三葉 いかがです?いかにもルフィ―が言いそうですよね!
嘉村 確かに。
三葉 これもやはり、「胸を張れ」ではダメなんですよ。ちっとも面白くない。しかし倒置法を持ち込むと……「張れ、胸を!」。一挙に感動の名セリフに変身を遂げました。
No.15
三葉 次も、「王道主人公が言いそうなセリフの倒置法」です。ご覧ください……こちら!
三葉 これは、仲間にかける言葉ですね。
嘉村 ふむ。
三葉 仲間が気に病んでいたトラブルを解決したり、あるいは仲間を苦しめていた敵をボコボコにしたりした後で、ポツリとつぶやく「少しは下りたかよ?……肩の荷」。
嘉村 なるほど。
三葉 王道主人公らしい「仲間への愛」が伝わってくるセリフと言えるでしょう。
No.16
三葉 「王道主人公が言いそうなセリフの倒置法」をもう1つご覧いただきましょう。……どうぞ!
三葉 「罪を憎んで人を憎まず」……いかにも王道主人公が言いそうでしょ?
嘉村 確かに。
三葉 しかし、「罪を憎んで人を憎まず」というセリフはいただけません。あまりにも陳腐です。面白味がない。そんな時には……そう、倒置法!
嘉村 ふむ。
三葉 「憎め、罪を!憎むな、人を!!」と語順を変えたことで、グッとインパクトが増し、読者・視聴者の琴線に触れるセリフになり得たと言えるでしょう。
No.17
三葉 ここからは、またテーマを変えてみましょう。
嘉村 はい。
三葉 それではこちら……ご覧ください!
三葉 いかがです?語呂がいいでしょ!
嘉村 ふむ。
三葉 それに字面もいい。「禍」とか「為せ」とか、なかなかに中二病っぽい。
嘉村 確かに。
三葉 つまりコレ、詠唱に使えると思うんですよね!
三葉 陰陽師風のキャラが「転じよ、禍を!為せ、福と!!」と唱えると……ドーン!必殺技が放たれる、なんて具合です。
嘉村 あー、なるほど。
No.18
三葉 最後にあと1つ。こちらです!
三葉 これ、「『ギャグ要素の強いスポーツマンガ』の指導者のセリフ」にピッタリだと思うんですよ。
嘉村 ほぉ……。
三葉 例えば、「テニスの王子様」。
三葉 同作品をご存知の方は、氷帝テニス部の監督・榊太郎を思い出していただければと思います。
三葉 榊太郎のようなクールでオシャレでイケメンの監督が、選手を集めて言うわけですよ「見よ、人のふり!直せよ、我がふり!!」。
嘉村 ふむ。
三葉 「見よ」でポーズ、「人のふり!」でまた別のポーズ……という風に、一言言うごとにオーバーリアクションを取る。さらに、そのたびに「ズバッ!」「ズババッ!」「ドンッ!」なんて激しい効果音が入ったりすると……いかがでしょう?面白いシーンになると思うんですよね!
嘉村 なるほど。
続きはこちら!!
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(担当:三葉)
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