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エッセイ・コラム

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2023年1月の記事一覧

「アイドルはトイレに行かない」は宗教的信仰である

「アイドルはトイレに行かない」は宗教的信仰である

「アイドルはトイレに行かない」

これは現代の日本において常識である。
もっとも、本当に排泄しないとアイドルはものの数週間で死ぬことになる。じゃあウソか、と言われると制したくなるのが人なのである。
宗教がそれほど強く生活に根差しているわけでもない日本においてもかなり広く共有されているという意味で、これは一つの宗教的教義のようなものであるともいえる。

幸田文の幼年期を描いたエッセイである「みそっか

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わかりたいと思って近づくとだいたいよくわからなくなる

わかりたいと思って近づくとだいたいよくわからなくなる

自分って一体なんだろうといわれると、実際のところその実態はよくわからないものである。

「いつも笑っている」「コツコツやるタイプ」「話を振れば喋る」「静かなほう」「あんまり人を寄せ付けない感じ」…私個人が私についてよく言われるのはこんな調子である。
他人がわたしを論評する時、その人から見えているわたしは人生のごくごく一部だ。ゆえ、一面的に「こういうところがある」と判断をしてくれてわたしにとって思い

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生きる時間は後悔しないための時間なのかも

生きる時間は後悔しないための時間なのかも

最近よく、YouTubeで子供が病気に苦しんで亡くなる、というドキュメンタリーに出会う。
私は幼年期に小さな病気で入院していたのもあって思わず感情移入してしまうのだが、数日であれ親に会えないというのは哀しいものだ。重篤な病気とあればその期間も長く、子供の味わう哀しみはいかばかりかーー到底想像もつかない。

また、年を重ねると親の立場から考えることもできるようになる。子供を看取ることになるというのは

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現代は「生きていながら死んでいる奴が多い世の中」だったりしないか

現代は「生きていながら死んでいる奴が多い世の中」だったりしないか

そういえば、石原裕次郎さんの葬式で勝新太郎さんが弔辞を読んだときに印象的だった言葉がある。

天才肌で知られた勝さんであるから、多分何の準備もなく話をしていたのではないかと思うのだが「生きていながら死んでいる奴が多い世の中」という言葉は鋭く現代にも響くものである。

そういえば、三島由紀夫も「命売ります」という作品のなかで、以下のような一文を書いていた。勝さんの言葉にも通ずるものがあろう。

時に

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スクープ至上主義ってどうなのか

スクープ至上主義ってどうなのか

記者の仕事をしているといわゆる「独自ネタ」というものを追うことになる。独自ネタというのは要は世の中に出ていない話のことを指すのだが、これをどうやって調達するのかというところで、色々な手段がある。

オーソドックスなのは、取材対象と仲良くなって「実はこんな話があって…」と教えてもらうケースである。
ほかにも、自分で勝手に調査をして新たな事実を見つけ出したりするケースもある。調査報道なんかはこれだ。

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名作「めぞん一刻」からSNSの功罪を思う

名作「めぞん一刻」からSNSの功罪を思う

友人との待ち合わせで到着が遅れそうだったらラインで「遅れそう」などと送るのは極めて日常的な光景の一つである。受け取った側も無用な心配もなく、安心して相手を待つことができる。

「めぞん一刻」という漫画がある。大作家である高橋留美子さんの屈指の名作だ。当時は固定電話しかないので、連絡をすぐとりあえない。
たとえば、夕方までには帰るといっていた主人公がなんだかんだで恋敵と酒を飲むことになったりして帰ら

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成人式の記憶

成人式の記憶

きょうは成人の日である。

成人の日で思い出すのが「はれのひ」問題だ。簡単に言うと、成人式の日に「はれのひ」という会社が急に営業を停止し(その後破綻)、金を払ったのに着物などのレンタルができなかった新成人たちが涙をのんだという話だ。
最近でも、新型コロナの影響で成人式が中止になったこともあった。これは業者のトラブルというよりは社会・政治的な判断によるものだが、成人式が通常のようにできないという意味

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はじめてってすごいぜ

はじめてってすごいぜ

人生においてはじめて何かをするときというのは決まって緊張するものだ。初めてのおつかい、はもちろんだが、初めての試験、初めての独り暮らし、初めてのデートなどなど、初めてというものは色々と緊張する。
でも、その初めてを超えて、ひとは少しずつ成長していくものである。

「開拓者」「先駆者」といった意味合いの言葉で「pioneer(パイオニア)」という単語がある。日本人メジャーリーガーのパイオニアともいわ

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