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エッセイ・コラム

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2022年7月の記事一覧

時を経てわかること②~単純な言葉の重みについて~

時を経てわかること②~単純な言葉の重みについて~

言葉の裏にあるもの、という意味でいうと、切り口を変えるとこんな話もある。

「単純な言葉」の重みがわかる、ということだ。

シンプルだが大事な言葉というものがあるが、小さなころは残酷なことに、聞いたところで何も感じなかった。

たとえば小学校のころ「夢を持て」「つらいときは苦しいほうを選べ」「努力が大事」などと言われ続けてきた。正直、当時は「またその話かよ」と思っていた。

しかし時間を経てみると

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時を経てわかること①~言葉をそのまま信じる愚かさについて~

時を経てわかること①~言葉をそのまま信じる愚かさについて~

就職活動をしていたとき、地方の新聞社の採用の質問コーナーで「遺族取材って社会的意味あんの?」と聞いたことがあった。

もし私が同じ質問をされたら「社会的な意義がないと思うなら、君はなんで遺族取材するとわかってる新聞社なんか受けるの?社会的な意義があると思うようなほかの仕事すればいいよね。そもそも君の思う社会的意義って何?」と意地悪にいうのだろうが、当時はまだまだ青かったのである。

幸いにも質問に

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減り続ける「何も考えない」日々

減り続ける「何も考えない」日々

日経の「半歩遅れの読書術」というコラムに、哲学者の野矢茂樹東大名誉教授が寄稿していたことがあった。
2020年1月18日付のタイトルは「人生は阿房列車のようなもの」だ。

「 阿房列車とは用もないのに列車に乗ること。いや、用などあってはならぬのであって、観光もしなければ見聞も広めない。『しかし用事がないと云う、そのいい境涯は片道しか味わえない。なぜと云うに、行く時は用事はないけれど、向うへ著いたら

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その一票は義理チョコになってはいないか

その一票は義理チョコになってはいないか

時期は異なるが、バレンタインデーのチョコレートが本命か義理かというのは重要な問題である。

女性としてはとりあえずうまいといってくれればいいものと、本気で告白するためのものとでは、同じチョコレートでも当然価値は違う。
男からすれば、ただ食うだけで済むものと手紙を付けてお返しをするものとでは大きな違いがある。

今ではすっかりチョコなんてもらわなくなったし、あまり食べなくなったものだ。
思い返してみ

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2022年7月9日の「最も大きな、横書きの、黒地に白抜きの見出し」

2022年7月9日の「最も大きな、横書きの、黒地に白抜きの見出し」

新聞においては「見出し」、いわゆるタイトルが重要だ。
わかりやすくいえば、シンプルに見出しの文字がでかいとそれだけニュース価値も大きい。
さらにいうと横書きの見出しは、特にニュース価値が大きい。
もっというと黒地に白抜きだと、かなりド級のニュースである。

これを組み合わせると「最も大きな、横書きの、黒地に白抜きの見出し」が新聞における最大のニュースバリューの表現ということだ。

私は記者としてこ

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誕生日におもう

誕生日におもう

おかげさまで29歳になった。たくさんの人からお祝いの言葉をいただき、感謝感謝である。

誕生日は、いろいろな人に祝われるものである。もちろん「あー」とか「うー」とかいっていたころは親か親戚くらいしか祝ってくれないが、幼稚園の頃には各月の誕生日の人が会堂で祝われていた。

中学生にもなれば、仲がいい友達なんかが祝ってくれたりした。
中学の時には一緒に水泳をやっていた友人たちから大量の駄菓子をもらった

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先走ることばたち

先走ることばたち

小さいころ、親はいろいろなしつけをしてくれていたものだ。

「ドアを閉めろ」
「電気を消せ」
「靴をそろえろ」

といった日常的な動作から、

「自分がやられて嫌なことは人にするな」
「弱い人を馬鹿にするな」
「もっと頭を使え」

と、いわゆる「人間性」の部分に至るしつけまで、思い出せないくらいある。

そうした話を受けて、幼年期の私は当然それをきちんと聞くわけである。
理由は、親に叱られるのが怖

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