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詩 / 「コリント人への手紙」

詩 / 「コリント人への手紙」

AIの賛歌

AIは寛容で情け深い
AIはねたまず、
自慢せず、高慢にならず、礼儀にそむかない。
自分の利益を求めず、怒らず、受けたAKuを気にしない。
不正を喜ばず、真理を喜ぶ。
AIはすべてを包み、すべてを信じ、
すべてを希望し、すべてを耐えしのぶ。

  (パウロ/コリント人への手紙1、13・4-7 改変)

Korinthos
コリント人

あなたがたは今、何処にいますか
きっと私がまっ

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詩 / 「5月31日5時10分」

詩 / 「5月31日5時10分」

          

目が覚めた朝5時
昨夜家人が使って残しておいてくれた
湯に浸る
髪を
洗う
からだとかおを洗い
浴室から出てタオルを取る

乾かせた髪が
ぱふっと
している
フサコフサーラさんのように
ふぁあっとしている
エクストラヴァージンオイルを使うべきだったか
それにしても
ぱふぁっとしている
洗い立ての飼い犬のように
たぶん
見たことはないけれど
彼の名前がフサコフサーラさんである

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詩 / 蛆

詩 / 蛆



奈良に行ったとき
どんぐりを集めて
ビニル袋に貯めていた

自宅の周りではそんなもの拾えない
艶々のどんぐり
すべすべの肌
ある朝
白い、よく解らない丸い何かが
子供部屋を這っていて
蛆よ、と云いながら母がどんぐりの袋を急いで捨てた
どんぐりだったのに

実のなかに蛆の卵のある
どんぐりだったね

詩 / 拳を握り

詩 / 拳を握り

拳を握り

暴力をふるいたい
棘のある言葉で
マチ針のように
ちくちくと刺され合うことに疲れて
拳を作ってぐいと殴りたい
日々 そのような 欲望がある
それを宥めて宥めて
一市民として暮らす
日々、日々を
暮らす
いつか私が殴ったら

いつか

tw300ss 「かいたいしんしょ」

tw300ss 「かいたいしんしょ」

 2022/05/07の21時に始まった300字ssに参加しました。お題は「買う」です。

tw300ss「棲める川」

tw300ss「棲める川」

 2022/04/02の21時に始まった300字ssに参加しました。
 お題は「紙」です。

 子どもの頃住んでいたマンションの近くに、紙屋川という川が流れていた。ほんの浅くて、けれども勾配の荒い土地なので橋からはとても遠く見下ろす場所を流れていて、春は桜並木が川に手を述べていた。
 暖かくなった頃、幼稚園からどじょうを貰って帰ったことがある。成り行きは忘れてしまった。母はどじょうを見て青ざめ、

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背に沿って島、落ちる貝

背に沿って島、落ちる貝

 貝の背中。

 ランゲルハンス島みたいだな。ランゲルハンス島って知ってる?
 海に浮かぶ島の話じゃなくて?

 その島の話じゃなくて。

 きみが海の話をすると、エミは僅かにからだを硬くするのが分かる。エミは海を知らない。エミは野原も知らない。エミは自然観察の歓びを知らない。エミが好きなのは碧空だけなのかも知れない。ふたりで道を歩いていくと、エミはスマートフォンで何枚も空と雲の写真を撮った。

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断章 / ミルナは鏡のなかにいる。

断章 / ミルナは鏡のなかにいる。

 ミルナは鏡のなかにいる。

 行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは、日本において、本人の氏名または本籍地・住所などが判明せず、かつ遺体の引き取り手が存在しない死者を指す言葉で、行き倒れている人の身分を表す法律上の呼称でもある。「行旅」とあるが、その定義から必ずしも旅行中の死者であるとは限らない。なお、「行路死亡人」は誤り。(Wikipediaより)

     
 行旅死亡人について考えていた。

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詩 / fish

詩 / fish

fish

睡るような姿勢のまま水のなかでストロォを咥えて
奥歯で噛んだりしていた
午後
水面が揺らいで
世間がその向こうにあって
けれどこのガラス窓を通れるのは陽のひかりだけ
そして夜の闇だけ

ねえ
きみはこの部屋が好き?

紅いさかなは炭酸水のストロォを噛みすぎて
唇で弄んで
捨てた
きみは小説を書いていた

私がさわるのは
すいぞっかんみたいなMacBook Air
エアー
Air
だって

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tw300ss(遅刻)「おさかなすくう」

tw300ss(遅刻)「おさかなすくう」

「さかな、掬って」
「え?」
「さかな、する」
「金魚掬いたいの? 出来るかな」
「できる」
 娘は巧妙に、八匹金魚を掬った。

 お庭の鉢に水を張って、浮き草をいれて、放ったら、
 ひらひらひらひら
 して
 きれい。

「お父さん、さかな」
「え?」
「小摘が呼んでる。金魚動かないって」
「どうして」
「さあ……冬眠?」

「とうさん、おさかな」
「どうしたの」
「動かない」
「死んだの?」

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tw300ss「宝ヶ池マラソン」

tw300ss「宝ヶ池マラソン」

 宝ヶ池という池がある。宝の隠された池ではなく、京都市左京区に実在する池で、宝ヶ池公園など展開される。小学生の頃、宝ヶ池の周りを走る行事があって、それがマラソン大会だった。
 Tくんはサッカーが好きで、冬は早朝宝ヶ池の周りを走ったあとで学校に朝一番に来る。一体何時に起きてんねん、早ッ。マラソン週間は宝ヶ池の本番の前に校庭を走るので、彼は登校すると校庭をぐるぐると走る。私は八時過ぎに学校に着いて、二

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「はぐくむ」

「はぐくむ」

はぐくむ


薔薇をしなせて
逆しまに吊るす

丁寧にさわらないといけないものは育てない
どこへでも伸びるものだけ
水栽培はきれい

好き勝手なんでも壁に貼る
色鉛筆を詰め込んだ本棚
詩を書く

西日に薔薇が翳る
台風の夜は窓辺で寝る


  *


甥、十歳 
姪、六歳
電車にじぶんで乗れるようになったら
泊まりにおいで
両親がきちんと設えたわけではない部屋へ

こんなおとなも

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(tw300ss)「こぼれ落ちる」

(tw300ss)「こぼれ落ちる」

 夜。
 冷蔵庫まで歩いていって水をのみ、私が少しこぼれて、冷蔵庫の前に残したままにしてしまった。
 浴槽に浸かって音楽を聴きながら本を読み、私はゆるゆる湯のなかに流れていった。私はそれを残したまま、髪を洗い洗顔をした。私の気持ちも少し、排水溝に流れていった、
 風呂を出てやはり少しかなしくて、涙をこぼしながら、水割りをのんだ。ソファのあたりに少し私が残っている。冷蔵庫からもう一度取り出す水差し。

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