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【詩】 発火雨 (はっかう)

現在の私達は今にしかいない

未来にも過去にもいない

落ちたところは円の中心

気づかずとも波紋は広がりゆき

円周の端が時々別の端と触れ合う


雨だれがツツと重力に従う

硝子窓のあちら側で雨が上がりかければ

鳥の囀りが追走曲のように反響する


惜しみなく楽しみを謳う自由

生きるというその向こう側にある世界

描いてみたくなる誘惑

森に迷い込むようにそっと

集合的無意識に潜む憧れは

仄かな色を醸し出し

永遠に開花し続ける


どれだけ世界が違っても

心が通じ合えたら必然

使い古した色のない言葉では足りない

身幹から湧き上がる泡沫

音を孕めば

谺が山脈の曲線をなぞる

風光るひと日

蹴ってしまった小石

ちゃぽんと落ちた音の塊

握りしめたのは

鳶尾一輪

せめて瞬間

ゼロになれ

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