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2020年3月の記事一覧
どうしてこんなに、19歳の私のことばかり思い出してしまうんだろう。
19歳の頃。
駅前の坂道を地面を見つめながら登った。時には父と。時には知人と。そして、ほとんどの場合はひとりで。
滑り止めのためのドーナツ型のへこみがついたコンクリートは、駅の光景より、街の光景より、何より覚えてる。下を向いて歩く私は、自分の人生になにが必要でなにが必要ないのかいつも考えていた。
お金もなくて、目的もなくて、社会に居場所もなくて、楽しく話す相手もいなかった。ただ、今生きている
なんにもない部屋。床に置かれた3つの荷物だけを明日は片付ければいい。
バイト帰りの午前2:30。今夜は土砂降りだった。降水確率90%。
傘をもってこなかった私は、たった1回のために新たに傘を買う気にはなれず、この雨の中をレンタル自転車で走った。
なんてことない信号のあかりが、こんな日は地面を染めて綺麗。青信号の写真を撮りたかったけど、どれだけ雨が強くなるか分からない今は、少しでも早く自宅までの距離を縮めたい。
顔に打ちつけて滝のように落ちる雨水。マスクと口の間
もしあの時あの場所を選んだなら、どんな私になっていたのだろう
視界を埋め尽すビルが、イルミネーションのように輝く街。グレーのダウンコートのファスナーを胸元まで上げた19歳の私は、窓に無数に宿るオレンジの光をぼんやりと見つめながら、ゆっくりと歩いていた。
歩道の両脇に並ぶ街灯やコンビニの灯りに、煌々と照らされ白んだ空。それを背景にそびえる1棟のビルが目に留まった。
18歳の冬。私は母と不動産屋さんと一緒に、そのビルの一室にいた。ベッドを置いたら、半分が埋め